経済教室NO.1 国民無視の消費税増税
                                 

Q 消費増税法案の中身は。

A
現在5%の消費税の税率を2014年4月に8%、15年10月に10%に引き上げることが柱です。
 目的は年金、医療、介護などの社会保障費の財源を賄うためです。
 総務省が4月17日に発表した推計人口では、65歳以上の高齢者の人口に占める割合が23.3%と日本は世界でも突出して高齢化が進んでいます。
 政府は社会保障と税の一体改革として、消費増税法案を3月末に国会に提出しましたが、民主党内からの反対論はいまだに根強く、成立の見通しは立っていません。


                               
Q
そもそも消費税とは、どんな税金ですか。

A
消費税は1989年4月に初めて導入され、当時の税率は3%。97年4月に5%に引き上げられました。
 商品やサービスを購入した際に代金と一緒に支払う税金です。法律上の納税義務者は事業者ですが、実際には消費者に転嫁されます。消費税のうち、実際に国が使えるのは現在の5%のうち2.82%。残り2.18%は地方自治体の自由な財源です。
 所得税や法人税は好・不況の影響を受けやすいですが、消費税は、すべての人が「広く薄く」納めるため、景気動向に左右されにくいのが特徴です。社会保障の安定財源として消費税が注目されているのは、このためです。


Q
消費税の問題点は。

A
最も大きいのが「逆進性」の問題です。逆進性とは、所得の低い人ほど消費税の負担感が重くなることを指します。消費税は所得に関係なく同じ税率がかかるため、所得が低いほど収入に占める消費税額の割合が高くなります。
 第一生命経済研究所は、消費税率を10%に引き上げた場合に、標準世帯(夫婦と子ども2人)が受ける影響を試算しています。
 それによると、年間の消費税額が年収に占める割合は、年収1500万円以上で4.2%であるのに対し、250万円以下では8.1%と低所得世帯の負担が大きいことが分かります。
 また、消費税には中小企業の事務負担を減らすために設けられた簡易課税制度の「みなし仕入れ率」が実態よりも高く、益税が生じるという課題もあります。一方、零細事業者からは「益税どころか、増税分を販売価格に転嫁できない」との声も上がっています。


Q
税収や財政に占める比重は。

A
2011年度の国と地方を合わせた税収77兆1394億円で見ると、消費税の税収は約12兆8000億円となり、税収全体の16.5%を占めています。
 所得税や法人税と並ぶ重要な基幹税であることが分かります。


Q
諸外国の状況は。

A
海外では消費税という名称ではなく、一般的に「付加価値税」と呼ばれています。米国では州ごとに税率が異なる「小売売上税」があります。
 税率は各国で相当ばらつきがあります。北欧のスウェーデンやデンマークは税率が25%という高率です。オーストラリアや韓国は10%です。一方、カナダは日本と同様の5%です。


Q
日本は税率をもっと引き上げる余地があるとの意見もありますが。

A
それは税制全体の複雑な背景を無視した乱暴な意見です。
 そもそも税制や税率は、その国の歴史や文化に深く関わっています。
 例えばスウェーデンの年金や児童手当、傷病手当などの現金給付は手厚いのですが、その分は高い付加価値税で負担されています。いわゆる「高負担・高福祉」の典型です。
 一方、米国が国家として、消費税を導入していないのは、強い逆進性の問題に加えて、各州が憲法を持ち、租税体系も州ごとで独自に定めるなど地方分権が徹底されているからです。


Q
消費増税が経済に及ぼす影響は。

A
消費税率が3%から5%になった97年4月を境に、個人消費は一気に冷え込み、経済は本格的なデフレ(物価の下落が続く状態)に突入、現在に至っています。
 前年度比の実質経済成長率は、96年度の2.7%から98年度にはマイナス1.5%にまで落ち込みました。これは消費税率引き上げを前にした駆け込み需要が発生し、その反動が現れた結果です。特に、増税後の反動で住宅需要は大きく落ち込んだまま推移するようになり、11年の着工数は約83万戸で、増税前の95年水準の57%にとどまっています。
 消費税率の引き上げは、増税した後でも景気回復を維持できる見通しが確立していることが不可欠です。

Q
消費税率引き上げについて、公明党の見解は。

A
2009年衆院選と10年参院選のマニフェストに明示してあります。消費税率を引き上げる際には(1)社会保障の全体像を示す(2)景気回復(3)行政改革(4)使途を社会保障に限定(5)税制全体の一体的な改革――の5条件が満たされていなければなりません。

Q
政府は社会保障と税の一体改革と言っていますが、年金、医療の改革は進みますか。

A
消費税率の引き上げ幅と時期がはっきり打ち出されていますが、社会保障分野の具体的な改革は不明瞭です。民主党は8年以上も前から年金の抜本改革を主張。その法案を来年、国会に提出するとしていますが、実現不可能なことは明らかであり撤回すべきです。その一方で現行年金制度も維持・強化するとしていますが、方向性が定まっていません。

Q
民主党は後期高齢者医療の廃止も主張していましたが。

A
この制度に対して民主党は、「うば捨て山」などと批判し「廃止」を公約に掲げていましたが、「実際には以前の老人保健制度と比べ、かなり改善が図られた制度」(8日付読売「社説」)です。このため廃止には全国知事会などの理解が得られず、法案提出もめどが立っていません。社会保障改革で重要な個別法案が、総崩れの様相を呈しています。

Q
消費税の制度設計について。

A
増税する場合には逆進性への配慮、低所得者対策が絶対必要条件です。野田政権は減税と給付を組み合わせた「給付つき税額控除」を導入するまでの間、現金を支給する「簡素な給付措置」を実施するとしていますが、支給額や対象者など肝心なことが決まっていません。たばこ税や酒税などとの「二重課税」をどうするのかも不明確です。

Q
景気への影響も心配ですが。

A
消費増税法案では景気への配慮として名目で3%、実質2%の経済成長をめざすとしていますが、政権獲得時から民主党政権は、経済成長戦略が不明瞭だと指摘され続けてきました。消費増税を見据えて、野田政権は、デフレ脱却対策を検討する閣僚会議の初会合を13日に開催しましたが、付け焼き刃の感は否めません。これまでデフレ脱却に真剣に取り組んでこなかったことを如実に示しています。


公明新聞記事(H24. 4. 23)より転載