経済教室NO.2 農家の戸別所得補償
                                 
Q
 米価が随分下がりました。

A 2010年産米は9月の出回りから大幅に下落し、農家の所得減少が懸念されています。昨年12月の相対取引価格(出荷団体・業者が卸売業者に売る際の値段)は、全銘柄平均で60キロ当たり1万2711円と、対前年比2043円も安い状況です。
 原因はコメの消費量減少や、09年産米の持ち越し在庫が大量にあったこと、昨夏の猛暑による品質低下などが挙げられますが、何よりも戸別所得補償の導入が大きく影響しています。

Q 具体的にどういうことですか。

A 戸別所得補償の加入に生産調整(減反)参加の条件を付け、生産数量目標を813万トンに設定しました。しかし、見通しが外れて約4万ヘクタールの過剰作付が発生。生産量が824万トンとなり、目標を11万トン上回る生産過剰に陥りました。民主党政権が生産調整によって「需給が締まる(=生産過剰にならない)」と強弁したのは、大間違いでした。昨秋には公明党などが過剰米買い入れを要請したのですが、民主党政権はかたくなに拒否。需給調整を放置した結果、米価下落に歯止めがかからなくなりました。

Q
 最近ようやく米価は底を打ったと言われていますが。

A 昨年末に政府は備蓄米の確保を名目に、こっそり過剰米対策を決めました。また、11年産米の生産数量目標を前年比8万トン減の795万トンに決定したことで、ようやく米価が持ち直しました。しかし、ここに至るまでの政府の対応は、あまりにも無責任です。

Q 生産現場では“買いたたきに遭った”という声もあります。

A この制度には全国一律で10アール当たり1万5000円を支給する「定額部分」と、著しい米価下落の際に補てんする「変動部分」があります。予算総額をコメ60キロ当たりで換算すると、それぞれ約1700円と、約1200円。それを口実に流通業者から値引き圧力がかかったのも事実です。

Q 民主党政権は農地集積など「構造改革のインセンティブ(動機付け)が働く」とも主張していましたが。

A
 全くの見当違いです。小規模農家や兼業農家を含む全ての販売農家を制度の対象にしたため、小さな農家が交付金をもらうために別の農家に貸していた水田を取り戻す“貸しはがし”が発生、むしろ、集落営農や認定農業者といった担い手に農地を集約し、経営の効率化を図る構造改革に逆行することになりました。

Q 11年度から畑作物にも対象を広げて本格実施されますが。

A
 民主党政権は、この制度が10年産米の米価下落にどう作用したのか、十分に検証されていません。それにもかかわらず、8003億円もの血税を投じ、戸別所得補償を本格実施するのは拙速です。農業農村基盤整備など、他の必要な事業の予算を減らしてまで財源を賄い、実施する価値があるのか、疑問だらけです。

Q 本格実施の裏付けとなる法案も提出していませんね。

A
 民主党は野党時代、廃案になったものの、法案も提出していました。しかも、政権交代後の3人の農林水産相はそれぞれ、今国会までに法案を提出すると国会質疑で答弁しました。
 約束をほごにされたことに対し、4日の衆院予算委員会で石田祝稔・党農水部会長が「国会軽視だ」と追及。鹿野道彦農水相は「誠に申し訳ない」と陳謝しつつも、「(ねじれ国会で法案が成立しにくい)国会状況も踏まえ、予算措置でやると判断した」と、党利党略の身勝手な言い訳に終始しました。これでは法律のない不安定な制度で交付金を受け取る農家も、巨額な税金を負担する国民も納得できません。

Q TPP(環太平洋連携協定)参加検討との関連は。

A 民主党の政策をさかのぼると、当初から戸別所得補償を農産物の貿易自由化と一体で推進する考えが根底にあります。
 それが09年の衆院戦マニフェストで、日米両国の関税撤廃を原則とする「日米FTA(自由貿易協定)」の「交渉促進」に表れ、今度はTPP議論で表面化しているのです。

Q 貿易自由化で国内農産物価格が暴落すれば戸別所得補償の財源が枯渇するのでは。

A その通りです。関税撤廃の状況下で国内農産物の生産費と販売価格を戸別所得補償で補てんすると、3.4兆円かかるという試算もあります。11年度の農林水産省予算案が2.3兆円しかないのに、到底無理な話です。今回、競争力強化のための「規模拡大加算」(100億円)などを戸別所得補償関連予算案に新規計上していますが、その程度の小手先の対応で済む問題ではありません。農家も国民も納得できる農業の将来ビジョンを示すことが先決です。


公明新聞記事(H23. 2. 21)より転載