経済教室NO.9 日銀の金融緩和
                                    
Q
 そもそも金融緩和とは。

A 世の中に出回るお金の量を増やすことです。このために行うのが中央銀行による政策金利引き下げです。
 政策金利とは、日本の場合、無担保コールレート翌日物(金融機関同士が無担保でお金を借り、翌日に返す短期の取引)の金利を指します。日銀は物価を安定させるため、金融機関との間で国債などを売買することで金融機関の持つお金の量を増減し、金利を調整しています。

Q デフレとの関係は。

A 一般的に、デフレの場合は日銀が金融機関の持つ国債などを買い、金融機関に大量のお金を供給します。金融機関に十分なお金があれば、他の金融機関からお金を借りる必要性が薄れ、短期金利が低下します。これに伴い、企業融資やローンの金利も低下し、お金の借り手が増えて設備投資や個人消費が活発化し、物価が上昇しやすくなります。

Q
 物価が下がるのは良いことではないのですか。

A デフレは商品価格を引き下げて企業収益を悪化させ、そのしわ寄せは雇用や賃金に及びます。デフレを招いているのは大幅な需要不足です。
 2010年度「経済白書」では「1990年代以降、慢性的な需要不足が約20年間続くのは先進国では日本だけ」として、日本でデフレが長期化している状況を指摘しています。総務省が今月上旬に発表した8月の全国消費者物価指数が値動きの大きい生鮮食品を除く総合指数で前年同月比1.0%下落し、18カ月連続のマイナスとなりました。

Q 金融政策をめぐる先進国の動きは。

A 景気悪化を防ぐため、欧米諸国は相次ぎ金融緩和に踏み切り、“利下げ競争”の様相を呈しています。
 特に、積極的なのが米国で、米連邦準備制度理事会(FRB)は一昨年のリーマン・ショック以降、利下げを繰り返し、事実上の「ゼロ金利」にカジを切っています。
 米国金利が下がれば、円とドルの金利差が縮小し、円高が一段と進みかねません。金利差が縮めば、安全資産とされる円の魅力が高まり、円高ドル安が加速。米国は輸出を拡大しやすくなります。

Q 日銀の対応は。

A
 日銀は、今月5日、金融政策決定会合で政策金利を年「0.1%」から「0〜0.1%」に引き下げ、事実上のゼロ金利とすることを決めました。
 日本でのゼロ金利は2006年7月以来4年3か月ぶりのことです。
 日銀は物価上昇率が1%程度を見通せるまでゼロ金利を続ける方針を示しています。

Q 十分な効果が期待できますか。

A
 もともと日本の政策金利は低く、政策金利の引き下げだけでは、金融緩和の効果が限られます。
 そこで、日銀は金融機関にの持つ5兆円規模の資産を買い取ることも決めました。国債や社債に加え、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J-REIT)などリスクの高い資産も初めて買い取り対象としています。
 資産買い取りに向け、日銀は新たに基金を創設します。基金の規模は、低利で長めの資金(最長6カ月、金利年0.1%)を貸し出す従来の「新型オペ」(30兆円)を加え、35兆円に上ります。今後、日銀は金融緩和の目安を基金の規模とする「量的緩和」を進める方針です。

Q “副作用”はないのですか。

A
 日銀が大量の国債を買い取れば、政府の国債発行に歯止めがかからなくなる恐れがあります。
 このため、日銀が買い取る長期国債の量は、世に出回るお札(銀行券)の総額以内に抑える規定(銀行券ルール)がありますが、基金を活用した国債購入は対象外としました。これが安易な国債発行を許し、実質的な財政悪化をもたらす危険性は否定できません。
 また、米国が追加金融緩和を決めれば、再び日米の金利差が縮小し、円高が続くことから効果は限定的との見方もあります。

Q 公明党の考えは。

A
 金融政策だけでデフレを克服するには限界があります。当面は景気後退を食い止めるための財政出動を行い、中長期的には日本経済の“体質改善”が必要と考えています。
 そのため、公明党は医療・介護と農業・環境の両成長分野を「二つのエンジン」とする「21世紀型の経済成長」を提唱しています。 また、公明党は物価上昇率の具体的な目標を定める「日本版物価目標政策」(インフレターゲット)を導入し、政府と日銀が協調して政策を講じる枠組みをつくるよう求めています。



公明新聞記事(H22. 10. 25)より転載