経済教室NO.8 中小企業融資で注目される地域密着型金融
                                    
Q
 中小企業の経営悪化が懸念されています。

A 日本経済は自公政権の景気対策が奏功して回復傾向にあったものの、最近の急激な円高などで、再び「二番底」に陥る恐れが出てきました。
 急変した経済状況のしわ寄せを受けるのは中小企業です。長引くデフレで企業収益が増えにくい中で、追い打ちをかけるような円高は、中小企業にとって大きな打撃です。
 また、中小企業の資金繰り指数(DI、資金繰りが「余裕」と答えた企業の割合から「窮屈」と答えた企業の割合を差し引いた指標)は依然、マイナスと低水準です。

Q 資金繰りの実情は。

A 問題なのは、地域金融機関の融資が減少傾向にある点です。
 全国の信用金庫の「預貸率」(金融機関の預金残高に対する貸出残高の比率)は2009年度末で54.7%(速報値)と過去最低の水準に落ち込みました。地域経済の低迷が続き、中小企業は設備投資などに慎重な姿勢を崩していません。
 資金繰り支援とともに、中小企業の新事業創出を促し、資金需要を高めていくことが必要です。

Q
 どのような手法が考えられますか。

A 注目されているのが地域密着型金融です。
 一般的な融資の手法としては、財務情報などを用いて企業の倒産リスクを数値化して推計する「スコアリング融資」が普及しています。これに対し、地域密着型金融は、不動産担保に依存せず、金融機関が企業と親密な関係を築くことで蓄積した、事業の将来性などに関する情報を基に融資を行う手法です。地域密着型金融には、融資先の経営実態を正確に把握できる大きな利点があります。
 また、金融機関と企業のつながりば深ければ、融資先の経営不振を早めに把握することができ、早期の支援を行うこともできます。

Q どのように融資を行うのですか。

A 地域密着型金融の一例として、ABL(アセット・ベースト・レンディング、流動資産一体担保型融資)と呼ばれる融資があります。ABLは企業が商品を生産、保有、販売して代金を回収するといった「事業のライフサイクル」に着目し、在庫商品や売掛債権、販売代金などを一体的に担保とする点が特徴です。
 ABLは米国では一般的な制度ですが、最近は日本の金融機関も導入を進めています。金融庁の調べでは、09年度のABLの実施は1000件で555億円と同庁が調査を始めた05年度(18件、36億円)から大幅に増加しています。
 豚やワイン、ロボットなど担保は多彩です。金融機関は、融資先から定期的に担保の状況に関する報告を受けるため、企業の実情を把握しやすいメリットがあります。

Q 今後の課題は。

A
 金融機関には、融資しやすい“良い顧客”を見つけるのではなく、融資先が高い収益を上げられるよう経営面での支援を強化することが求められています。
 名古屋大学の家森信善教授は、「景気が回復しても中小企業の収益性の回復が期待できない」(10日付「日経」)として、小企業の利益率が大企業に比べて低迷している状況を指摘しています。
 また、その要因は途上国との価格競争の激化や人口減少に伴う市場の縮小にあるとして、「リーマン・ショックによる一過性のものではない。したがって、現状を守ろうとする施策ではじり貧であり、新しいモノを生み出す取り組みが必要」(同)と主張しています。

Q 考えられる取り組みは。

A
 まず、金融機関は、融資先との親密な関係を生かしてアドバイスを積極的に行うことを心掛ける必要があります。
 また、中小企業が事業拡大、新規事業に着手しようとしても、具体的なノウハウ(手法)が乏しく、経営資源にも限りがあるため、独自に行うのは困難です。このため、金融機関が中小企業同士を“つなぐ”役目を果たせば、互いの強みを生かした新事業創出や販路拡大の可能性が広がるはずです。
 ABLについては、担保の価値を正確に評価できる「目利き」の優れた人材の確保や、「在庫まで担保にしなければ融資ができないのか」といった風評が経営面での支障となる恐れもあります。
 こうした課題を解決し、使い勝手のいい制度に改善していくことが期待されます。


公明新聞記事(H22. 9. 27)より転載