経済教室NO.7  深刻な社会資本の老朽化
                                    
Q
 わが国では社会資本の老朽化が、急速に進んでいると聞きます。

A 橋や高速道路、下水道といった社会資本の老朽化が進展するのは、これらが、戦後の高度成長期にあたる1960〜70年代に集中的に整備されたからです。今後20年の間に次々と、“耐用の目安”とされている「建設後50年以上」を経過することになります。
 わが国は、社会資本も“高齢社会”に突入するといえそうです。

Q 具体的な老朽化の進ちょく度は?

A 最新の国土交通白書によれば、2029年度には道路橋のうち約51%が、建設後50年以上を経過するとしています。昨年度には約8%でしたから、この間、老朽化がいかに急速に進むかが分かります。
 また、水門といった河川管理施設や地下に埋められた下水道(下水道管きょ)なども、同様の老朽化が指摘されています。

Q
 すでに影響が出ているようですが。

A 鋼材の破断や腐食、コンクリートのひびなどにより、通行止めや通行規制をしている長さ15メートル以上の道路橋は、全国で約1000カ所に及ぶそうです。東京都では古くなった下水道管が原因となる道路の陥没事故が、年間1000件前後も起きているといいます。

Q 早めに対策を講じなければ大事故につながる恐れがありますね。

A これまでは、損傷が発生するごとに個別的に対応してきましたが、今後は、計画的な維持管理や更新投資を確保することが重要になってきます。
 特に、橋などの社会資本を管理する自治体の役割が大切なことから、国土交通省は、全自治体に対し、橋の点検や補修時期を書き込んだ「長寿命化計画」を、12年度末までに作るよう求めていますが、策定率は約4割(08年度、橋梁個所数ベース)と半数以下にとどまっています。
 また、下水道施設や港湾施設に関しては、長寿命化計画の策定は、これ以上進んでいません。非常に深刻な事態と言わざるを得ません。

Q 維持管理や更新投資を行う、予算の確保も課題といえそうですが。

A
 国の今年度の予算では、社会資本整備費のうち、維持管理・更新費はすでに約50%を占めています。今後、この比率は増える一方で、多額の維持管理・更新投資が財政を圧迫するのは必至です。
 仮に将来にわたって、社会資本整備費の伸びがゼロで、これまで通りの維持管理・更新投資を行うとすれば、11年度から60年度までの50年間に、予算不足のため更新できない老朽化社会資本は約30兆円分に上ると、国土交通省は試算しています。地方自治体でも事情は同じです。

Q 財源不足を補う工夫が必要ですね。

A
 有望視されている「予防保全」という考え方です。社会資本施設の状況を定期的に点検・診断し、早めに対策を講じるというものです。小規模な補修を繰り返すことにより、大規模な補修を行う場合に比べて施設の寿命延ばしたり、耐用年数にわたる合計費用(ライフサイクル・コスト)の縮減を図ることができます。
 また、効率を上げるために、計画段階から民間の提案を取り入れる公民連携の導入や、財源を確保するため、民間のプロジェクト・ファイナンスを参考にした新たな資金調達制度の創設も、検討に値します。

Q
 老朽化対策は、主要国よりも取り組みが遅れているそうですが。

A 社会資本を資産と捉え、長期的視点から効率的に維持管理するため、工学的、経済的、会計的な知識を駆使しながら考える手法を、「アセットマネジメント」といい、欧米で活用されいます。
 わが国は、新しい施設の整備に熱心ですが、維持管理にはあまり関心が向いていませんでした。一方、計画的な維持管理や更新投資は、“必要な公共事業”であり、経済対策としても推進すべき、との指摘もあります。


公明新聞記事(H22. 9. 6)より転載