経済教室NO.1  国際競争が激化する「水ビジネス」
                                    
Q 水の確保が今後、グローバル(地球規模)な課題になっていると聞きますが。

A 世界の水への需要は、年々増加しています。国連によれば、水使用量は2025年には5235立方キロと、00年に比べて約30%も増加すると予測されています。
 背景にあるのは、人口増に加え、急成長を遂げる振興国を中心に都市化や工業化が進んでいることです。特に、増加が顕著なのはアジア地域で、世界の水需要の約6割を占めています。


Q 水資源は、どのような現状なのですか。

A 地球上の水の大部分は海水で、地下水や河川水など、人が利用可能な淡水は総量のわずか0.6%に過ぎません。
 さらに水資源は、地域に遍在しています。例えば、世界人口の6割が住むアジアの降水量は世界全体の36%に過ぎません。しかも、地球温暖化による異常気象が頻発し、世界各地で水不足を深刻化させています。
 このため水をめぐる国際紛争が起きており、近年、「世界水フォーラム」など“水の危機”を話し合う国際会議が、活発に開かれてきました。

Q 水問題は、わが国に対して、どのような影響があるのですか。

A 日本人はこれまで水問題に、高い関心を持ってきたとはいえません。
 しかし、わが国は食料の大半を輸入に頼っており、その農畜産物を育てるため、大量の水が消費されています。例えば、穀物1トンの生産には約1000トンの水が必要といわれ、農畜産物の輸入は、同時に水も輸入していることを意味します。そうした「仮想投入水」は1年間で、日本人が家庭で使用する水の5年分にも当たる計算です。
 世界の水問題は、日本の問題でもあるのです。

Q 見方を変えると、深刻化する水問題は、かえってビジネス拡大のチャンスでもあるといわれていますが。

A 水資源確保に関連する市場の将来性が有望視されています。
 生活用水や工業化にとって必要な、上下水道のインフラ整備をはじめ、降水量の少ない地域向けの海水淡水化プラントや、雨水や生活排水の再利用プラントの建設・運営、水処理膜やポンプといった機材・部材の供給などの分野があります。
 世界の水ビジネスは、07年には約36兆円の市場規模でしたが、25年には約86兆円に膨らむ見通しです。
 地域別では、経済成長が見込まれる中国、南アジア、中東などが有望です。

Q 水ビジネスをめぐる国際競争で、わが国の企業は存在感を発揮しているのですか。

A 残念ながら、必ずしもそうとはいえません。付加価値の大きな上下水道のインフラ整備では、設計・建設から管理・運営まで一括して請け負う欧州企業2社が強く、「水メジャー」と呼ばれています。
 また、水ビジネスの振興国とされるシンガポールや韓国では、政府の後押しを受けた企業が積極的に海外進出し、大規模事業を受注するなど実績を挙げています。

Q 日本企業に出遅れた印象があるのは、どうしてですか。

A わが国メーカーは海水淡水化用の処理膜やポンプな素材・部材で高い技術を誇り、世界市場でも大きなシェア(占有率)を持っています。
 弱点は、システムの管理・運営というソフト面です。わが国の上下水道は自治体公営企業が担っており、ノウハウが民間に蓄積していません。このため、設計から運営まで一括して引き受ける海外の水道インフラ整備では影が薄くなっているのです。

Q 今後、日本にとって必要な取り組みは?

A 得意分野を補完し合うような、官民の連携求められます。例えば、オーストラリアの水道事業に、川崎市水道局が民間プラントメーカーと参入するなどの動きが始まっています。
 わが国の水ビジネスに国際競争力がついていけば、振興国や発展途上国の需要を取り込み、経済成長にも寄与することは間違いありません。


公明新聞記事(H22. 2. 15)より転載