経済教室NO.17  鳩山政権 難航する予算編成
                                    
Q 新政権と前政権とでは、予算編成は、どう違いますか。

A これまでは、6月ごろに「経済財政改革の基本方針(骨太の方針)」を策定し、次年度予算の上限となる概算要求基準(シーリング)を決定。シーリングに基づき8月末までに各府省から提出された概算要求を査定した上で、財務省原案が12月下旬にまとめられます。さらに、各府省と財務省との間で予算の復活折衝が行われ、最終的な政府原案を決定するという流れでした。

Q 鳩山政権では何が変わりましたか。

A 鳩山由紀夫首相は、一度提出されていた各府省の概算要求を白紙撤回させ、10月中旬に再提出させました。各府省の概算要求に対し、新設された行政刷新会議(行刷会議)が、ムダ削減の観点から診療報酬や在日米軍駐留経費(思いやり予算)など474事業を「事業仕分け」の対象として見直し作業を行っています。「政治主導」を演出しようと躍起ですが、実際の仕分けでは、財務省が「議論をリードする場面が目立った」(毎日新聞 12日付)と指摘されています。12月初旬ごろまでに概算要求の圧縮案をまとめるとしています。

Q 順調に進んでいますか。

A 概算要求提出時期が例年より約1カ月半も遅れています。加えて、行刷会議のメンバー選考で政府と民主党との間で軋轢が生じて作業開始が遅れたこともあり、年内に予算編成できるかは疑問です。政府は今年度補正予算で執行停止した2.9兆円を財源に第2次補正予算も編成する方針を示していることから、作業スケジュールは、ますます逼迫しています。

Q なぜ概算要求が過去最高額に膨らんだのですか。

A 民主党が衆院選マニフェストで掲げた子ども手当の創設や、高校授業料の無償化、高速道路料金の無料化などの多額の財源を必要とする新設施策を、そのまま盛り込んだからです。その結果、概算要求は過去最大の約95兆380億円となりました。しかも、金額を明示していない「事項要求」という不可解な項目を加えると、実質97兆円を突破します。
  「マニフェスト至上主義」が、財政規律を根底から揺るがしていると言わざるを得ません。政府は慌てて、事業見直しで約3兆円程度を削減して概算要求額を92兆円以下にするとしていますが、それでも今年度当初予算額88兆円を大きく上回ります。

Q 税収が落ち込みそうですが。

A 今年度の国の税収は、景気悪化の影響で当初見込んでいた46兆円から大きく落ち込み、40兆円割れの可能性も出てきました。来年度も急激な景気回復は望めず、法人税や所得税などで税収増は期待できません。さらに鳩山首相は、消費税の引き上げを4年間は行わないと明言しているため、まとまった税収も見込めません。

Q 国債の大量増発も懸念されています。

A その可能性は十分あります。新規国債発行額が税収を上回る事態に陥る恐れすらあります。もしそうなれば、1946年度以来の異常事態です。
 国債と借入金などを合計した「国の借金」は、9月末時点で864兆5226億円と過去最大額を更新しています。国民1人当たり約678万円もの借金です。国債増発を懸念して、長期金利の代表的な指標である新発10年物国債の利回りが上昇(国債価格は下落)しています。

Q どのような影響が出ますか。

A 長期金利が上昇すれば、国債の利払い負担が増加し、さらに財政を悪化させるという悪循環に陥ります。金利上昇は、企業や個人の資金調達の重荷となり、設備投資や住宅購入など内需を停滞させる要因となります。
  急激な金利上昇を招かないよう慎重な財政運営が求められていますが、一方では、物価が持続的に下落するデフレ(デフレーション)圧力も強まっています。内閣府の推計では、需要が年換算で約40兆円も不足していることから、物価の下落は今後も続く見通しです。
  デフレは雇用情勢の悪化をもたらし、景気回復の足かせになります。再び景気が落ち込む「二番底」になる可能性も指摘されています。

Q 政府に何が求められていますか。

A デフレ対策を軸に、雇用対策を含めた景気回復への具体的な取り組みとともに、国債発行に一定の歯止めをかけて、財政規律を堅持するという非常に難しいかじ取りが求められています。ところが、いまだに鳩山政権は景気回復を促す成長戦略を描き切れず、財政健全化への道筋も示せていません。


公明新聞記事(H21. 11. 16)より転載