経済教室NO.16  国債管理は大丈夫か
                                    
税収不足補う“国の借金”
 国が政策実現などのために必要とする財源には税収で充てるのが基本です。予想以上に税収が減った場合などには、財源確保のため、国債を発行します。
 国債とは、国が必要な資金を調達する際に、借り入れ証書として発行する債券で「国の借金」です。国は市場などを通して国債を発行。購入した投資家などには利子を付けて返済(償還)しなくてはなりません。
 現在発行されている国債の償還期間は主に2、5、10、15、20、30年でその期間から@短期国債(償還期間1年以内)A中期国債(同2〜4年)B長期国債(同5〜10年)C超長期国債(同10年以上)―に分類されます。このうち、発行の大半を占めているのが10年物長期国債です。
 国債は、発行の根拠となる法律によって@建設国債A赤字(特例)国債B借換債C財投債―の4種類にも大別できますが、財政法は国債発行を建設国債に限定するよう規定しています。これは、国の債務に見合った社会資本(橋やダムなど)を整備する目的でしか国債発行ができないことを意味します。
 このため、公共事業以外の歳出に必要な赤字国債を発行するには、「特例公債法」を国会で議決しなければなりません。
 なお借換債は国債の借り換えのために発行する国債で、財投債は独立行政法人などの財政投融資機関へ資金を貸し付ける際に、政府が発行している債券をいいます。

残高は680兆円に
 戦前には戦費調達のために国債が大量発行され、通貨下落でインフレが起きたことがあります。その反省から、戦後から1964年まで国債は発行されていませんでした。
 ただ、65年の不況で赤字国債が発行されたことを皮切りに、70年代の石油ショック以降、国債発行は恒常化。特に、90年代のバブル崩壊後の景気対策などで国債は大量発行されました。
 今や日本の国債残高は680兆円にも達しています。これに政府短期証券(一時的な資金不足を補う短期の国債)や借入金を加えると国の債務残高や約860兆円に上昇。国民1人当たり674万円もの借金を抱えている状況です(2009年6月末現在)。
 また、国債や地方債、国の借入金などを含んだ長期債務残高に限っても今年度末で800兆円を超える見通しで、国内総生産(GDP)比は168%と主要国で最悪です。
 国債は銀行などの金融機関が多く保有していますが、これでは金融機関の投資行動によって取引が一方的になる危険性があります。これを防ぐには、幅広い投資家が国債を保有することが必要で、特に金融機関と投資行動が異なる個人投資家などの国債保有を促す多様化が欠かせません。
 ただ、安易に国債発行を続ければ、国家の財政規律は崩れ、市場の信用を失うことになります。借金ばかりが増え続ける国への投資は大きなリスクになるからです。
 まして国債残高が増加傾向にある今では、利払いや償還などを適切に行い、国債の発行や残高をしっかりと運営する「国債管理」の必要性が一段と増しています。

緩み始めた財政規律
 公債依存度(国の歳入に占める公債額の割合)の高さが強く懸念されているにもかかわらず、国債発行をめぐる鳩山政権の対応は一貫性がなく、財政規律の緩みも目立っています。財政健全化への道筋もいまだ示さず、財政に対する責任感が乏しいとしか言いようがありません。
 経済危機に伴い、今年度当初予算で見込んだ約46兆円の税収が40兆円を割る水準にまで落ち込む見通しを受け、政府は歳入不足分を赤字国債の増発で補う考えを示唆しています。
 そもそも、鳩山由紀夫首相は衆院選中、「借金はこれ以上増やさない」と公言していました。政権交代後に、軌道修正した以上。その理由を明らかにする必要があります。
 来年度予算の、“膨張化”に対する懸念も高まっています。来年度予算の概算要求は、国の財政規模を示す一般会計で約95兆円と過去最大規模に膨らみました。鳩山首相は今年度当初予算の一般会計(約88.5兆円)を下回ることを求めていましたが、これが反故になった格好です。
 その上、金額を示さず、項目だけを求める「事項要求」も多く、実際の額がさらに膨らむことは避けられません。マニフェストを実現するという大義名分をかざすだけで、厳しい経済・財政状況を考えているか疑問です。
 藤井裕久財務相は、来年度の新規国債発行額を今年度補正予算後の44兆円以下に抑える意向を示しています。仮に、これが実現しても、今年度当初予算の発行額33兆円から増えれば、財政規律の緩みは否定できません。

経済への悪影響に懸念
 国債の大量発行は経済にとって好ましいものではありません。国債が大量増発となれば、それだけ市場に国債があふれることになり、値崩れをお越して金利(利回り)が上昇します。
 例えば、話を分かりやすくするため、額面価格100円の10年物国債(利率2%)があるとします。この場合、年間利益は2円で利回りは2%です。ここで国債価格が95円に下がった場合の年間利益がは2.5円(利子2円+価格の差額5円÷10年)。利回りは2.63%(2.5円÷95円×100)に上がります。
 この影響は経済全体に波及し、家計でいえば、住宅ローン金利の上昇が懸念されます。
 住宅ローンの金利は、長期金利(主に新発10年物国債の利回り)が基準になるため、長期金利の上昇は住宅ローン金利の上昇を招き、家計の負担を増大させます。企業にとっても銀行の貸し出し金利の上昇で資金調達が一段と困難になります。
 国債の利払い費が増えるのも確実で、これで政策に回せる予算が減り、赤字国債の発行に歯止めがかからなくなる悪循環に陥る恐れもあります。
 実際、財政への先行き不安を背景に、最近の長期金利は上昇傾向が鮮明です。新発10年物国債の利回りは先月27日に2カ月ぶりに1.4%まで上昇。国債の大量増発を警戒して、銀行は国債の売りに転じています。
 さらに、財政健全化への道筋を示さない政府の無責任な姿勢も市場の不安をあおっています。
 こうした動きが続けば、長期金利の上昇圧力は一段と増し、デフレ(物価の持続的下落)と相まって、上向きかけた景気が再び失速する事態を招きかねません。
 国債発行とは、いわば次世代への「負担の先送り」です。政府には、安易に国債発行に頼らず、債務残高を着実に減らしていくための国債管理を適切に行うことが求められています。


公明新聞記事(H21. 11. 2)より転載