経済教室NO.14  鳩山政権の経済運営に懸念


Q 日本経済の現状と見通しは。

A 経済対策の効果などで最悪期は脱したといえますが、本格回復は道半ばで予断を許さない状況です。
 実際、7月の完全失業率は5.7%と過去最悪を記録し、物価の下落も目立ってきました。物価の下落が続けば、やがて日本経済はデフレ(物価の持続的な下落)に陥り、企業収益や賃金に悪影響が生じかねません。
 鳩山政権には、これらの不安を払しょくし、景気回復の足どりを確かなものとするため、経済対策の切れ目ない実行が求められています。
 にもかかわらず、鳩山政権の経済運営は、国民の期待に応えるどころか、不安が増すばかりの不十分なものといわざるを得ません。

Q 具体的には、

A まず、中長期の成長戦略が十分に描き切れていない点です。
 成長戦略は、産業社会のあり方を示す“設計図”のようなもの。現下の厳しい経済情勢を乗り越え、人口減少時代でも持続的な成長をめざすには、成長戦略の策定・実行が欠かせません。
 鳩山政権は、子ども手当などマニフェストで掲げられた“目先の施策”で家計消費を刺激すれば、自動的に景気が回復するかのような説明を繰り返しています。しかし、これでは将来の日本経済の具体像がまったく見えません。

Q 個人消費の本格的な拡大に着目した景気対策と評価する声もありますが。

A それは疑問です。家計消費が拡大したとしても、その財源として公共事業などが削減された場合は、全体として景気は浮揚しません。
 国民ウケを狙ってか、鳩山政権の経済対策は家計部門への分配を手厚くするものばかりが目立ちますが、分配する原資を増やすためには、経済の規模拡大、つまり成長戦略が必要なのです。目先の対策に躍起な姿を見る限り、日本経済の将来に明るい展望を見いだすことは困難です。

Q そもそも、子ども手当などの実施に必要な巨額の財源は確保できたのですか。

A 財源を確保できるのか、まったく分かりません。
 民主党のマニフェストでは、子ども手当や高速道路料金の無料化などの実現には、2013年度までに16.8兆円が必要とし、このうち来年度は7.1兆円の財源を生み出すとしています。そのため、鳩山政権は今年度補正予算(事業総額15.3兆円)の未執行分(約8.3兆円)の一部執行停止にまで手を付け始めました。
 公共事業など、今年度補正予算に盛り込まれた施策は景気を下支えしています。
 すでに地方自治体や経済界は、補正予算を前提とした計画を進行中で、ここで一部の執行を停止すれば、「景気の足を引っ張る」(17日付 産経)ことも否定できません。このため、自治体や経済界からは一部執行停止に反対の声が噴出しています。
 また、たとえ補正予算を凍結し、それを来年度予算に無理やり回したとしても、恒久的な財源にはなりません。鳩山政権が財源として有望視する、いわゆる“埋蔵金”(特別会計の剰余金や積立金)も毎年度使えるわけではありません。
 仮に来年度予算編成が遅れ、越年となれば、景気にマイナスの影響を与えることは明らかです。

Q 厳しい財政の立て直しにはどう取り組むのですか。

A 日本が抱える借金(国と地方の長期債務残高)は、09年度末で816兆円にも上る見通しで、債務のGDP(国内総生産)比率は168%と主要国で最悪です。景気悪化の影響で税収増も期待できません。
 日本の財政状況は今や“火の車”であるにもかかわらず、鳩山政権は健全化への具体的な道筋をまったく示していません。危機感が乏しく、極めて無責任です。
 鳩山政権は政策実現のために赤字国債は発行しないと明言していましたが、ここにきて藤井裕久財務相は、景気が失速した場合の経済対策の財源として赤字国債発行を「あり得る」と表明するなど、経済対策の一貫性のなさにはあきれるばかりです。
 赤字国債を大量に発行する事態となれば、長期金利の急上昇を招き、住宅ローン金利の高騰など、かえって景気に冷や水を浴びせます。日本経済に対する海外からの信用失墜も避けられません。

Q 鳩山由紀夫首相は、地球温暖化対策でも注目されていますが。

A 地球温暖化対策を強力に進めると胸を張っていますが、高速道路料金の無料化など、温暖化対策に逆行する施策との矛盾は、いまだ解消されていません。
 そもそも高速道路料金の無料化は、世論調査でも約6割の国民が反対し、渋滞の増加で打撃を被る運送業界や、経営を圧迫されかねない鉄道会社などからは根強い反発があります。さらに、道路建設の借金返済に税金が充てられ、結果的に車を使わない人にも負担を強いることに不満が渦巻いています。

公明新聞記事(H21. 9. 28)より転載