経済教室NO.11 世界経済に回復に兆し

                                    
Q 世界経済に、改善の兆しが見えてきたようですね。

A 昨秋来、世界経済は、「100年に一度」という深刻な危機に見舞われました。急激な信用収縮で、生産や設備投資が一気に落ち込み、経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国の今年1−3月期の実質GDP(国内総生産)成長率は、前期比マイナス2.1%と、統計をとり始めた1960年以降で最大の下落幅を記録しました。
 しかし一方で、鉱工業生産がプラスに転じたり減少幅の縮小傾向が続くなど、足元では景気悪化に歯止めがかかる動きが表れています。金融システムも落ち着きを見せ、「最悪期は脱した」という指摘が聞かれます。

Q “一息ついた”わけですね。その理由は何でしょうか。

A 金融危機に立ち向かうため、新興諸国も参加した金融サミット(G20)が二度開催され、金融規制改革や債務国の救済、国際通貨基金(IMF)の強化で合意するなど、政策協調が進展したことが挙げられます。また米国が主導し、思い切った財政出動を各国が行い、内需押し上げを図っていることも重要です。

Q 各国経済の現状をどのように見ますか。

A 経済危機の震源地となった米国では、悪化のテンポが鈍り、景気の底が近づいていると見られます。ゼロ金利政策や公的資本注入を通じ、金融不安解消へ進展がみられました。自動車産業危機も、クライスラーとGMの早期再生を視野に入れた破たん処理で乗り切り、これらにより市場の心理は大きく好転することになりました。
 一方、欧州では英国が底入れの兆しですが、ユーロ圏で悪化に歯止めがかかるのは、今年後半になりそうです。

Q 世界経済のけん引役として期待される新興諸国はどうでしょう?

A 中国も、今年1−3月期の成長率(6.1%)が、92年以来最低となりましたが、4兆元(約56兆円)の景気対策や金融緩和など、拡張的な財政・金融政策の支えで、足元では回復基調が鮮明になってきました。
 インドや韓国など他のアジア諸国でも総じて、持ち直しの兆しが見えます。

Q 各国経済は順調に回復するでしょうか。

A そこまでは期待できません。これまで世界経済を引っ張ってきたのは米国の旺盛な個人消費でしたが、家計のバランスシート調整や、雇用・所得環境の悪化、住宅価格の下落基調から、消費の抑制がしばらく続くと見られるからです。
 世界経済が、経済危機以前の年率5%成長に戻ることは当面考えられず、今年、来年は極めて緩やかな回復にとどまると予測されています。


Q 回復具合にも濃淡があると思いますが。

A 米国では、設備投資の調整がこれから本格化するため、回復は脆弱でしょう。財政赤字拡大への懸念から、長期金利が上昇することも不安要因です。

 より悪いのは欧州で、底打ち後も戻りが弱い「L字回復」になるとの見方もあります。足元で、雇用の悪化が際だってきた上、金融機関の健全化の遅れも気になります。

Q 中国などは?

A 中国はじめアジアは欧米への輸出持ち直しが望めず、雇用悪化や設備投資低迷などが懸念されます。成長率は他の地域より高いとはいえ、力強さには欠けそうです。



《日本は「底打ち」宣言》

 我が国の実質GDP成長率は、今年1−3月期に、年率で前期比マイナス14.2%という過去最大の落ち込みを記録しました。
 しかし2月を底に、輸出や生産が持ち直すなど回復の動きが明確になり、6月17日の月例経済報告は、「景気底打ち」を、先進国で最も早く宣言。民間エコノミストは、緩やかながら回復が続くと予測しています。
 今後の景気回復の推進力となるのは、在庫調整の進展に加え、政府・与党が相次ぎ出した経済対策です。公共投資の拡大・前倒し執行をはじめ、定額給付金の支給、ハイブリッドカーなど環境対応車への減税や買い替え助成制度、エコポイント制度による家電購入促進、住宅減税など、公明党が進めてきた施策が、個人消費による需要を誘発すると期待でき、4−6月期はプラス成長へと転じる見込みです。
 一方で、昨秋以降、生産など経済規模が一気に縮小したことによる「雇用と設備の過剰」が、景気回復の重しとなりそうです。完全失業率は上昇を続けており、給与所得も減少幅を拡大、今夏のボーナスは大幅減が予想されています。設備投資や住宅投資もまだ、減少が続くとみられます。
 さらに、欧米や中国など海外からの需要増は当面、期待できず、世界経済の下振れリスクも解消したわけではありません。従って、経済対策が息切れするとみられる来年以降の対応も視野に入れ、慎重な経済運営が引き続き必要となるでしょう。


公明新聞記事(H21. 6. 22)より転載