経済教室NO.9 導入への機運高まる 納税者番号制度

                                    
Q 納税者番号制度の導入を視野に入れた議論が活発化していますが。

A 今年1月には、麻生太郎首相が同制度導入に前向きな発言を行い、今年度税制改革法の付則にもこの課題が明記されました。一方、与党もプロジェクトチームが検討を開始。政府税制調査会は4月28日の会合で、納税者番号制度に関するスタディ-・グループを立ち上げ、海外事例の調査を行う予定です。
 これまでに見られなかった活発な議論が展開されています。

Q 何が背景になっているのですか?

A まず、少子高齢社会の社会保障財源をまかなうため、かねてより指摘されてきた税制の不公平是正に取り組むことが急務だからです。そのためには、できるだけ正確に所得を捕捉することが不可欠です。

Q どういう不公平是正が期待できるのですか。

A 例えば利子・配当、株式など有価証券譲渡益という金融所得の一体的課税です。金融所得は、所得が高いほど大きくなる傾向がありますが、把握が難しく、これまで分離して課税されていました。納税者番号制度の導入による一体的課税で、課税逃れを防ぐ効果も期待できるでしょう。

Q 約30年前にも同様の論議が起きました。

A
 一般消費税創設が提案された1970年代後半、課税の公平を図るため議論されましたが、グリーン・カード制度創設が挫折して以来、このテーマは常に先送りされてきました。

Q 利点は、不公平税制の是正だけですか。

A それだけではありません。
 近年、主要国では税制を通じた所得の再配分によって、格差を解消したり、子育て中の家庭を支援する政策に乗り出しています。いわゆる「給付(還付)つき税額控除」です。納税者番号制度は、そのために欠かせないインフラストラクチャー(社会経済制度を支える基盤)の役割を果たしているのです。
 税額控除(納税額が控除額より少ない場合は給付)を行う場合、各世帯の正確な所得情報を把握しなければなりません。納税者番号制度が整備されていれば、不正受給の防止とともに効率的な実施ができるのです。
 特にわが国の所得格差は主要国でも大きいという最近の調査もあり、税制を通じた所得再配分に注目が集まっています。

Q
 効果的な減税にも使えそうですね。

A 減税に関しては、消費性向(所得のうち消費に回す割合)の高い低・中所得層に絞った方が効果が高いと指摘されています。こうした「ターゲット減税」を実施する上でも、納税者番号制度の整備が前提になります。米国などで迅速な減税が実施できる背景には、この制度の存在が指摘されています。

Q
 個人のプライバシー侵害への不安を解消することも重要では?

A もちろん法整備は進める必要があります。その上で、納税者番号制度の目的や利点など、十分な情報を提供し、国民の理解を得ることが肝要でしょう。

公明新聞記事(H21. 5. 18)より転載