経済教室NO.8 09年世界経済見通しマイナス成長


Q 世界経済について、IMFの見通しはどうなっていますか。

A IMFの見通しは、@世界経済全体の見通しと政策分析A国・地域別の見通しB景気後退から回復への方向性C先進諸国から新興諸国への金融危機の影響―などを盛り込んでいます。
 それによると、今年の世界経済の実質成長率は、2008年の前年比3.2%増に比べて、同マイナス1.3%に落ち込み、中でも日本の実質成長率は08年のマイナス0.6%からマイナス6.2%へと、かつてない後退を予想しています。世界的に金融機関による貸し渋りや債券市場の流動性不足などの信用収縮と実体経済悪化の影響が当面続く可能性が高いと分析しています。
 その結果、10年の世界の成長率は09年の前年比マイナス1.3%から同1.9%程度の回復にとどまり、本格的な世界経済の回復には時間がかかると見ています。
 一方、中国の今年の経済成長率は08年の前年比9.0%には及びませんが、09年は同6.5%で、10年はさらに同7.5%に達すると見られており地域によって差が見られます。

Q IMFは企業の生産活動を、どう見ていますか。

A 地域別の工業生産高の推移を見ると、08年9月の金融危機を境に大幅な落ち込みを見せています。今年2月時点の世界全体の工業生産は前月比マイナス12.07%で日本や米国を含む先進諸国が同マイナス16.98%であったのに対して、中国など新興諸国は同マイナス4.18%と、先進諸国ほど深刻には世界的な景気後退の影響を受けていなかったことが分かります。

Q 新興諸国の存在感が高まってきたのですか。

A そう言えます。08年の世界における資本輸出割合(国外向けの投資割合)で中国(24.2%)やサウジアラビア(7.6%)などの新興諸国が高い割合を占めています。新興諸国が米国を中心とした先進国の金融市場を下支えしていた構図が見てとれます。
 例えば、アブダビ投資庁(ADID)が07年11月に、経営危機に陥ったシティからの増資要請に応じて75億ドルを投資したことや、モルガン・スタンレーが中国投資有限責任公司(CIC)から50億ドルの出資を受けたことなどが、世界金融市場の現状を端的に示しています。このような動きは、過去にはまったく見られず、注目すべきでしょう。

Q 景気後退の原因をどう分析していますか。

A
 IMFは世界規模での景気後退と回復のパターンを分析しています。一般に世界で同時発生する景気後退は長期化し、深刻化する傾向があります。今回の景気後退を除くと、1960年以降、分析対象となった21カ国のうち10カ国以上が同時に景気後退に入った例は75年、80年、92年の3回です。このような“世界同時不況時”の景気後退期間は、平均すると一般的な景気後退期間の1.5倍の長さとなっています。特に75年と80年の景気後退期は、米国の輸入急減が世界貿易の大幅な縮小の一因となりました。

Q 今回は金融不安が大きな原因とされていますが。

A IMFは実体経済の需要減退などに金融危機が組み合わされると、かつてないほど深刻で長期的な景気後退をもたらす可能性が高いと指摘しています。実は、金融危機と重なった景気後退は1928年代の世界大恐慌などを除き、ほとんど例がありません。
 このため、経済分析が難しい側面がありますが、今回の景気後退は、冷戦時代のように経済構造が資本主義国と社会主義国に分断されていた状況と異なっています。グローバル(国際)化で世界経済が相互依存を深めていることもあり、景気後退が長引き、回復にも時間がかかると考えられます。

Q
 景気回復に必要な施策は何ですか。

A IMFは財政出動による景気刺激策を中心としたマクロ経済政策が、景気後退の厳しさを和らげ、景気回復を早める上で、極めて重要な役割を担っていると強調しています。特に、「財政政策は過去3回の景気後退局面でも確実に支援策になった」として、貸し渋りが多発するような金融の制約に直面している経済状況では有効であると強調しています。
 しかし、積極的な財政刺激策には必然的に国債発行などによる公的債務の増加が伴います。IMFもこの点に触れ、公的債務水準が高い国については財政政策効果が小さくなることを指摘しています。各国政府は、財政状況をにらみながら景気対策を実施するという難しい舵取りを求められそうです。


公明新聞記事(H21. 5. 11)より転載