経済教室NO.1 経済成長促す税制改正


Q 経済対策を担う手段として、来年度税制改正に関心が集まっているが。

A 政府与党は、景気後退から暮らしや企業経営、雇用を守るために、第1次補正予算、第2次補正予算案、そして来年度予算案と、3次にわたる総額75兆円の経済対策をまとめました。また、日銀は金利引き下げにより、主要国の中央銀行と協調した金融政策を行っています。
 ただわが国の場合、政府がすでに大幅な累積赤字を抱える一方で、長年、低金利が続いていたことから、財政政策、金融政策とも他の主要国に比べて、大きな制約を受けているのも事実です。
 こうした事情から、税制に対して、経済の活性化や成長を促す役割が期待されているのです。

Q 税制改正によって、どのような効果を狙っているのか。

A キーワードは、「海外から国内へ」。海外にある資金を国内に呼び込もうということです。
 そのひとつが、海外で事業を営む子会社が配当を国内の親会社に支払う場合に、その配当金を益金に算入しない、つまり、法人税をかけない制度の創設です。
 わが国は、法人税の実効税率が約40%と他の主要国に比べて高く、日本企業の利益に対しては、内外を問わず日本の法人税率を課す全世界所得方式をとってきました。これが、海外子会社が利益を国内に還流させる障害になってきました。

Q 具体的にはどういうことか?

A 例えば法人税の実効税率が約30%のA国で事業を行う子会社が、日本の親会社に配当を行う場合、日本とA国との税率の差額約10%分を日本の税務当局に納めなければなりません。このため、子会社は親会社に配当し資金を国内に還流させるよりも、会社の内部に留めておくこと(内部留保)を選ぶのです。

Q 海外子会社の内部留保の規模はどれくらいあるのか。

A 近年、海外での内部留保額は急増しており、2001年度には1378億円でしたが、04、05年度は2兆円を超え、06年度には3兆2402億円にもなっています。
 これに対し海外子会社からの受け取り配当金の伸びは微増にとどまっており、この結果、内部留保残高は約17兆円にも膨らんでいます。日本企業の海外生産比率は年々高まっていることから、税制などの条件が変わらなければ、今後もこうした傾向が続くものと予想されます。

Q 内部留保を国内に還流させることで、どのような効果が期待できるのか。

A 研究開発や設備への投資に向けられることが期待されます。また、人材の育成や確保にも役立つと予想されます。こうした分野に支出が増えれば、雇用増や内需の押し上げにつながり、何よりも重要なのは、これからの経済成長に不可欠なイノベーション(技術革新)を促すことです。<海外市場の獲得→国内への資金還流→イノベーション>という好循環が構築されるわけです。

Q このほかに、「海外から国内へ」を促す税制は?

A ファンド(投資を目的とした基金)を通じて、日本に投資する海外投資家への課税を見直します。
 まず、日本企業への投資実績が1年以上など一定の条件を満たすファンドであれば、内外問わず対象とします。その上で、投資家についても、ファンドへの出資比率が25%未満などの条件を満たせば、従来課税していた株式譲渡税を非課税にするという仕組みです。

Q 狙いは、海外から投資を呼び込むことか。

A そうです。日本を開かれた魅力ある市場とするには、海外からの直接投資は不可欠ですし、M&A(企業の合併・買収)により、経営の効率化やイノベーションの促進も図れます。
 わが国への直接投資は年々、増えてはいますが、残高では世界全体の約1%に過ぎません。特に近年では、資源国や新興国の政府系ファンドが、巨額の投資資金を通じて、存在感を強めており、こうした資金をどう活用するかも課題となっています。
 もちろん、直接投資を呼び込むためには、外資規制のあり方やビジネス環境など税制以外の諸制度の整備も同時に必要です。

Q 経済成長を促す観点から、自動車減税も注目に値するのでは。

A 環境負荷の小さい自動車(エコカー)を新車で購入する人を対象に、自動車重量税と自動車取得税を減免します。環境にやさしい車ほど、税負担が軽くなり、電気自動車や、電気とガソリンを併用するハイブリッド車の場合は、全額免除するというものです。
 消費者の購買意欲が高まれば、自動車メーカーが苦境の中で力を入れている、エコカーや2次電池など環境・エネルギー分野を、後押しすることが期待できそうです。


公明新聞記事(H21. 1.19)より転載