経済教室NO.24 深刻化する世界同時株安
                                    
Q 株式市場の動揺が収まらないが。

A
 日経平均株価は、金融危機の実体経済への悪影響を懸念して、10月には26年ぶりに一時6000円台にまで大幅に値を下げる展開となりました。米国の信用各付け会社S&Pが毎月公表する「グローバル株価指数」の10月の騰落率によると、日本市場はマイナス14.32%を記録。米国市場ではマイナス18.03%となりました。中国にいたってはマイナス23.34%となっています。

Q
市場で何が起きているのか。

A 世界的株安の引き金になったのが、2002年ごろから米国で普及したサブプライムローンの焦げ付きにあります。サブプライムローンは資産担保証券(ABS)として証券化され世界中に拡散しましたが、住宅バブル崩壊で証券価値の算定が不可能になり、証券に値段が付かない状況となってしまいました。
 国際通貨基金(IMF)の試算では、サブプライムローン問題による世界の金融機関の損失は最大で約1兆4000億ドル(約140兆円)にも達しています。損失額はさらに膨らむと見込まれいます。このため投資家の間には株式の資産価値に対する懸念が広がり、投げ売りを誘う原因となっています。

Q 各国の具体的な対応策は。

A
ユーロ圏15カ国と英国は10月12日に、金融危機への対応策を話し合う緊急首脳会合を開催。金融危機対策を定めた「共同行動計画」を採択しました。具体的には銀行間取引への政府保証の付与、金融機関への公的資金による資本注入、欧州中央銀行(ECB)の資金供給の拡大が柱です。14、15日に米国のワシントンで開催された緊急首脳会合(金融サミット)では、IMFの資本増強など国際協調の強化を確認しています。

Q サブプライムローン問題で日本の損失は、比較的軽いといわれているが。

A 確かに欧米の損失に比べと日本の金融機関の傷は浅く、比較的安定しています。しかし、米国や中国などの実態経済が悪化している中、景気回復を主導してきた輸出企業の経営が打撃を受け、株価水準を下落させています。また、株式を大量に保有する大手金融機関にも巨額の含み損が発生しています。このため、銀行などが融資に慎重になり、貸し渋りなどが起きやすくなります。
 政府・与党は株式市場の安定化と金融機能の強化を目指す緊急対策の具体化を進めてきました。株式市場の安定化策は、「空売り」規制の強化、銀行の自己資本比率規制の一部弾力化、銀行等保有株式取得機構を通じた株の買い取りなどが柱です。

Q 空売り規制が注目されているが。

A 空売りとは、投資家が借りた株を市場で売る取引のことです。売却後、株価が値下がりした時点で買い戻せば、その差額が利益となります。これは投資ファンドや機関投資家が活発に行っている取引ですが、市場の流動性を高める一方で、株価下落の要因ともなります。このため空売りであるかどうかの明示など一定の規制が行われてきました。政府は一定規模の空売りを行った投資家に証券取引所への報告を義務付けるなど、さらに規制を強化しました。

Q 銀行の自己資本比率規制の弾力化とは。

A 自己資本比率とは、企業向けの貸し出しなど目減りする可能性のある資産に対する自己資本の比率です。国内銀行は自己資本比率が4%を下回ると、経営の早期是正措置の対象となり、評価損を抱えた銀行は自己資本比率維持のために融資を絞り込む懸念があります。このため、緊急措置として国内に営業を限定した地域銀行や信用金庫などについては、保有株式の評価損を資本金や資本準備金など「中核的自己資本」から差し引かないようにします。海外業務を手掛ける大手銀行などの国際基準行についても一部弾力化します。

Q 株式市場、金融システムの見通しは。

A 今は世界同時不況への“入り口”にすぎないという見方もあり、予断を許しません。株安で金融機関の損失が著しく増大する場合に備え、公的資金による予防的な資本注入を行うため今臨時国会で金融機能強化法改正案を審議中です。日本としては、金融安定化へ国際協調を積極的に主導するとともに、輸出依存から内需主導型の経済成長への転換に取り組まなければなりません。


公明新聞記事(H20. 11.17)より転載