経済教室NO.17 日本直撃するインフレ危機
                                   
Q 物価高騰に歯止めがかからないが。

A 最近になっても、世界的にインフレ(物価上昇が続くこと)傾向強く、デフレ(物価下落が続くこと)下の日本でも、生活必需品の値上げなど、物価高騰が国民生活に暗い影を落としています。
 総務省が25日に発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く)は前年同月比1.9%の上昇と、15年6カ月ぶりの高い水準を記録しました。
 また、政府と日銀は今月、今年度の経済成長率の見通しを当初予測より大幅に下方修正しました。その主な原因は原油や穀物価格の上昇による企業収益の縮減や個人消費の鈍化です。日銀は今年度の消費者物価指数の上昇率を0.7%引き上げ、1.8%としました。
 賃金が伸び悩む中、こうした物価高騰は、個人消費を冷え込ませるだけに、景気への悪影響を懸念する声は高まっています。
 その上、インフレと景気停滞(スタグネーション)が同時に進むスタグフレーションの危機も指摘されており、何とか回復基調を維持してきた日本経済は、試練の時を迎えています。

Q 中小企業や漁業が深刻な打撃を受けているが。

A 原材料価格の高騰は、大企業よりも中小企業を直撃しています。価格競争が激化する中、立場の弱い中小企業は原材料価格の上昇分を製品価格に転嫁することがより難しいからです。
 資金繰りなどで、ただでさえ景況が厳しい中小企業に原材料価格の高騰が追い打ちをかけている状況で、最近は倒産件数も増加傾向にあります。
 中小企業庁の調査では、原材料仕入単価の上昇を危惧する経営者は多く、「(原材料価格の高騰を)企業努力で吸収するには限界がある」と切実な声を寄せています。
 一方、漁業への影響も深刻で、燃料費が5年前の3倍にも上昇し、大半の漁船が赤字に陥っています。漁業は他産業に比べ生産コストに占める燃料費の割合が高い上、魚類の価格がスーパーなど量販店の意向で決まる傾向が強まっています。このため、値上げが困難です。
 こうした窮状を訴えようと、漁業者は15日、全国の漁船約20万隻を一斉休業しました。これを踏まえ、政府は新たな漁業支援策を発表する方針です。

Q インフレの要因は。

A
第一に原油価格の高騰です。代表的な指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は先月、1バレル=140ドルを初めて突破し、史上最高値を更新。今月中旬からやや下落してますが、依然高水準です。
 日本国内でのレギュラーガソリンの全国平均価格も1987年の統計開始以来、初めて180円を突破。8月には190円に迫る勢いです。
 原油価格の高騰は、製品の輸送コストを高め、広範な物価の上昇圧力を強めています。主に、中国やインドなど新興国の経済発展に伴う需要増や、投機マネーの流入が原因です。
 投機とは、モノの価値よりも値動きを見越してお金を投じることで、最近は米国に端を発した金融不安を背景に、証券などの市場から原油へとお金の流れがシフトしています。

Q 食料品価格の高騰も大変だ。

A 食料品に関しては、新興国の需要急増や、穀物を原料とするバイオ燃料の開発などにより、世界の穀物需給がひっ迫していることが背景にあります。経済産業省の「2008年版通商白書」によれば、過去8年間で小麦は3.4倍、トウモロコシは2.6倍も価格が上昇しました。

Q インフレにどう対応すべきか。

A 中央銀行が金利を引き上げることが一般的です。金利を引き上げ、世の中に出回るお金の量が減れば、物価下落の効果が期待できます。
 実際、欧州中央銀行(ECB)は3日、インフレの克服に向け、年4.0%の政策金利を0.25%引き上げることに踏み切りました。
 米国はサブプライムローン(低所得者向け住宅融資)問題に端を発した金融不安を懸念し、利下げ傾向にありましたが、ここにきて利下げを休止しました。ただ、景気を冷やす恐れもあり利上げには踏み切れず、インフレと経済停滞の板挟みあるのが状況です。

Q 日銀はどうか。

A 利上げに慎重な姿勢を崩していません。15日の日銀金融政策決定会合では、政策金利である短期金利(無担保コール翌日物)の誘導目標を年0.5%に据え置くことを決めました。物価高騰による景気の下振れリスクの高まりを懸念した措置といえます。
 今後、日銀は「経済・物価のリスク要因を丹念に点検しながら機動的に金融政策運営を行う」(白川方明総裁)方針ですが、インフレが収束する気配がないことを考えると、日銀の金融政策や政府の経済政策への注目はさらに高まりそうです。

公明新聞記事(H20. 7.28)より転載