経済教室NO.16 外国人看護師・介護士の受け入れ
                                   
Q インドネシア人受け入れの経緯は。

A 看護・介護分野の労働者の受け入れを含むEPAが昨年8月に締結され、今年5月の国会で承認されました。政府はこれまで、大学教授や外資系企業経営者、弁護士など専門的、技術的分野に限り外国人労働者の受け入れを積極的に推進してきましたが、それ以外は原則認めていません。
 しかし、看護師や介護士などが不足している状況を踏まえて、今回のEPAで看護と介護の分野へ初めてインドネシア人を受け入れることになりました。介護福祉士候補は7月下旬、看護師候補は8月上旬に来日する予定です。
 ちなみに、厚生労働省によると、看護師は2006年時点で約4万人不足していると推計され、介護士にいたっては、今後10年間で40万〜60万人不足する恐れがあると見られています。

Q 受け入れ条件は。

A 看護師候補は、インドネシアで看護師の資格を取得後、2年以上の実務経験があることが受け入れの条件になっています。介護福祉士候補については、現地で看護師の資格を取得している人か、もしくは高等教育機関を卒業して政府から介護士として認定されていることが必要です。受け入れの人数枠は、2年間で看護師が400人、介護福祉士が600人です。

Q 看護師、介護士の「候補」とは。

A
まず、日本語などの研修を半年間受け、各地の病院や施設で働きながら日本の国家試験合格に向けた実地研修を行います。その上で、看護師は入国して3年以内に、介護福祉士は4年以内に試験に合格しなければなりません。もし、期限内に試験に合格しなければ帰国することになります。試験の合格者については、その後も日本で働き続けることができる仕組みで、かなり厳しいハードルになっています。

Q なぜ、外国人労働者の受け入れが注目されているのか。

A 日本は、平均寿命が延びる一方で出生率の低下によって少子高齢化が急速に進んでいます。例えば、合計特殊出生率でみると、05年に過去最低の1.26を記録しました。その後、2年連続で増加に転じ、07年には1.34となりましたが、出生数自体は減少していることから長期的には人口は減少していくとみられています。当然、経済活動を支えている労働力人口も減少します。
 厚生労働省によると、現在6500万人前後の労働力人口は、30年までに今より最大1000万人以上も減ると推計されています。労働力の減少は企業の競争力を低下させ、経済の縮小をもたらすと懸念されています。そこで、「海外から人材を積極的に受け入れるべきだ」との声が強まってきました。

Q 日本の外国人労働者の現状は。

A 法務省によると、外国人登録者数(6カ月以上国内に滞在する人)は年々増え、05年には200万人を超えました。そのうち、外国人労働者は、現在約75万人いると推計され、10年前と比べて2倍以上に拡大していますが、そのうち専門性や技術を持っている人は2割にすぎません。しかも、労働力人口に占める割合は、05年時点で1%と世界的に見て非常に低い状況です。
 農林、製造などの分野においては、「外国人研修・技能実習制度」を利用して多くの外国人が実習生として働いていますが、期間は最長3年間と限定されています。

Q 海外諸国の受け入れ状況は。

A ドイツでは介護に携わる人が不足し、東欧諸国からの受け入れを行っています。情報通信分野においては、大学卒業程度以上の学力と技術を有する人に、労働許可の取得を簡素化するグリーンカード制度を導入しています。
 また、フランスでは、06年に移民の滞在資格選抜の厳格化を図るための新移民法が可決されました。この法律には、高い技術などを持つ外国人の滞在資格の新設、移民の母国語の教育、フランス市民教育の義務化などが盛り込まれています。

Q 日本における今後の課題は。

A 製造業や農業、建設などでは、すでに外国人労働者がいなければ成り立たないというケースも多くあります。
 しかし、ただ人手が足りないからといって単純労働者として受け入れ長時間労働や低賃金などの温床となってはよくありません。人口減少社会を視野に入れ、外国人の生活支援も含めた抜本的な受け入れ体制づくりが重要な課題となってきます。
 一方、医療、福祉の現場を支えている日本人看護師、介護士の待遇改善をはじめ、フリーターやニートなど若年労働者や女性、高齢者らの潜在的な能力を最大限に発揮させていく国内雇用対策とのバランスも求められています。


公明新聞記事(H20. 7.7)より転載