経済教室NO.9  激化する国際的な穀物争奪
                                   
Q 小麦を原料とする食品の値上げが相次いでいるが。

A 小麦自体の価格が高騰しているため、それを原料とする食パンや家庭用パスタ、即席めん、菓子類などが最近では8%から20%値上がりしています。
 さらに、4月からは輸入小麦の政府売渡価格(政府所有小麦の売却基準価格)が、これまでより30%引き上げられる予定です。この上昇率は1973年12月の35%に次いで番目に大きい引き上げとなります。そうなると今後、さらに食品の値上げや容量の減量が行われる恐れがあります。

Q なぜ値上がりしているのか。

A 一つは、世界人口の大幅な増加です。国連の推計によると、この約10年間で人口は7億人も増えて66億人に達しています。また、近年、中国やインド、ブラジル、ロシアなどの経済が発展し、これらの国の所得水準は上昇傾向にあります。人口増と経済発展の結果、肉類、油脂類など畜産物の消費が地球規模で拡大。飼料用穀物の需要が今後も大幅に増加すると予想され、価格を押し上げています。飼料穀物の高騰は国内の外食産業にも影響を与え、値上げの決定が相次いでいます。

Q バイオ燃料用の穀物生産の影響もあるのか。

A
食料用か燃料用かで穀物の奪い合いになっています。近年、地球温暖化防止や原油価格の高騰を受け、石油など化石資源の代わりにバイオマス(生物資源)エネルギーの活用が進んでいます。具体的には、トウモロコシなどを原料にした、二酸化炭素(CO2)の出ないバイオエタノールの生産が急増。2001年には812万キロリットルだった生産量が07年には2608万キロリットルへと3.2倍に増加しています。
 米国の農家では、大豆や小麦からバイオエタノール用のトウモロコシ生産へと転作が進み、大豆や小麦の生産量が減少。さらに最近も株安で穀物が投機の対象になっていることも影響し、国際価格が高騰しているのです。

Q 食料の供給面はどうなっているのか。

A 世界的に一人当たりの穀物収穫面積は年々減少しています。品種改良や農薬、化学肥料の使用などによって伸びた10アール当たりの収穫高も近年は鈍化する傾向にあります。さらに、地球温暖化の影響で、土壌劣化をはじめ、砂漠化や水資源不足など農作物の生産にとって不安定な要因が増しています。そもそも農業生産は、自然条件の影響を強く受けるために生産量の変動が大きく、需要の変化に直ちに対応することは困難です。
 特に、トウモロコシや大豆は、世界全体の輸出量のほとんどを米国や南米諸国が占めている状況にあります。世界の穀物消費量が年々上昇する一方、生産量は追いつかず在庫率は大きく減少しています。

Q このままでは輸出を控える国が出るのでは。

A その通りです。農産物輸出国は作物を国内の消費に向ける傾向を強めています。小麦や大豆、トウモロコシなどの輸出規制を実施する国が増えています。例えば、昨年10月には、インドで一部の高級なコメと小麦を除いて輸出が禁止されました。11月からはロシアが小麦や大麦に輸出税を課し抑制しています。また、中国では、昨年12月に穀物などを対象に導入していた輸出促進のための還付金を廃止。今年1月には、輸出数量割当制度の対象品目を拡大するとともに、穀物に輸出税を課しています。

Q 日本は食料を安定的に確保できるのか。

A 日本のカロリーベースの食料自給率(国内で消費される食料のうち自国で賄われている割合)は8年連続、40%の低水準で推移しています。昨年度は、ついに40%を割り込み39%となりました。日本経済は輸入に頼り発展を遂げてきましたが、この間、食生活は洋風化し、コメ離れや安い輸入農作物への依存を加速させました。農水省内に設置されている国際食料問題研究会がまとめた報告書によると、万が一、農作物輸入が途絶えた場合、国民が必要とする最低限の食料を「確保できない事態も起こりうる」と警鐘を鳴らしています。
 安定した食料需給には、農地の保全や農業の担い手の確保・育成・農業技術水準の向上・技術の普及を図っていくことが重要です。さらに、地元でとれたものを地元で消費する地産地消、コメ需要の掘り起こしなどが求められています。

Q 政府の対策は。

A 食料自給率の向上をめざし、政府は国民への情報発信や生産基盤の強化など総合的な対策を来年度予算案に計上しています。農水省は4月から「食料安全保障課」(仮称)を設置し、世界の食料事情の収集・分析を行い、各種の施策に反映させる方針を決めています。

公明新聞記事(H20. 3. 24)より転載