経済教室NO.8  存在感増す政府系ファンド
                                   
Q 政府系ファンドとは。

A 国有財産を株式投資などで運用し、運用益を得て国の富を増やすために政府が運営する投資ファンドのことです。
 SWF(ソブリン・ウエルス・ファンド=国の富を運用するファンド)とも呼ばれ、50年以上も前から設立されていますが、ここ数年の間、中東諸国や中国で設立が相次ぎ、運用が活発化しています。
 2007年9月の政府系ファンドの資産残高は、アラブ首長国連邦(UAE)を筆頭に世界29カ国・地域で計2兆8274億ドル(約330兆円)にも上っており、15年には12兆ドル(約1400兆円)にまで膨らむと試算されています。
 資金が巨額なだけに、世界経済に及ぼす影響も無視できないものとなりつつあり、その動向が注目されています。

Q なぜ、中東諸国や中国での運用が活発なのか。

A オイルマネーや外貨準備(外国為替市場に介入したり、海外収支の決済を行うために、通貨当局が保有する外貨)が潤沢にあるからです。
 中東諸国は当初、不安定な原油収入を補填するために政府系ファンドを運用していましたが、最近は原油価格の値上がりで原油収入が急増、これを原資に積極運用に乗り出しました。
 中国では、莫大な貿易収入のほか、人民元急伸を防ごうと「人民元売り・米ドル買い」を進めた結果、外貨準備が大幅に増えたことが背景にあります。また、近年のドル安の影響で、外貨建て人民元が目減りすることへの懸念が運用を活発化させているともいわれています。

Q 金融市場へのかかわりは。

A
最近では、米国の低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」の焦げ付き問題で欧米の金融機関が巨額の損失を出した際、政府系ファンドが次々と増資に応じたことが話題になりました。
 この結果、先進国の金融機関を支えている政府系ファンドの側面が脚光を浴びるようになり、金融市場での存在感は高まっています。

Q どういった運用をしているのか。

A 海外企業の株式や金融機関、証券会社への投資が目立ちます。
 日本への投資も増えつつあり、例えば、シンガポール政府投資公社は「ウェスティンホテル東京」や、福岡ソフトバンクホークスの本拠地・ヤフードームを買収。また、UAEの政府系ファンドは、昨年11月、ソニーへの投資を発表しました。

Q 日本で設立される可能性は。

A 最近になって、政界の一部で、日本版・政府系ファンド設立への動きが出始めました。
 原資は、中国に次ぐ世界第2位の保有量で100兆円を超える外貨準備や、約150兆円もの公的年金積立金(国民年金と厚生年金の合計額)が想定されています。
 現在、これらの資産は、日本国債や米国債など、安全性を考慮した運用がなされていますが、政府系ファンドにより、海外株式などへの投資を積極的に行えば、より高い運用益が確保でき、財政健全化や、増大する社会保障費に充当できると期待されています。
 このほかにも、@中長期的な株式の保有による市場の安定化 A投資先を多様化することで経済変動の影響を軽減できる B海外の金融のプロが多く登用され、市場が活性化する―などの効果が見込まれています。

Q 政府系ファンドの問題点は。

A 政府系ファンドの設立には多くのメリットがある一方、課題も少なくありません。
 その一つが投資方針や運用実績などの透明性の向上です。現在の政府系ファンドは実態が不透明で情報開示が不十分との指摘があり、投資を受ける国や企業からすれば、実態の分からないファンドからの投資には警戒心を抱かざるを得ません。
 このため、昨年10月に開かれたG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明では、政府系ファンドの透明性を高める重要性が提起されました。
 EUでも同様の問題意識から、政府系ファンドの透明性を確保するための「行動規範」を策定するよう加盟国に提案しています。
 また、政府系ファンドには、国際関係など政治的意図を含んだ投資への懸念があるほか、日本の外貨準備は国の借金が原資になっているため、運用に失敗した場合は、実質的に債務が増えて国民負担に直結しかねず、国民から強い批判を招く恐れもあります。

Q 政府の見解は。

A 設立について、福田康夫首相は「検討するなら慎重に」との見解を述べており、額賀福志郎財務相も「高いリスクを伴うことになるので、国民にどう説明していくのか十分議論しなければならない」と、慎重な見方を示しています。日本での設立には、さらに議論を深める必要があります。

公明新聞記事(H20. 3. 10)より転載