経済教室NO.24  コメ価格 下落の衝撃
                                   
Q 今秋の新米は、例年よりもかなり安かったような気がするが。

A コメ価格の指標となる公益法人「コメ価格センター」の落札価格は、主要銘柄が出そろった9月下旬には、前年同月比でも7%以上も低く、さらに10月に入ってからは同8%と一層安くなり、価格下落が鮮明になりました。ブランド米として知られる新潟コシヒカリは、11.1%も値を下げています。
 卸値の下落を受けて、スーパーマーケットではおおむね5%程度の値下がりとなり、銘柄によっては10%も下がったものもあります。

Q コメがやすくなった原因は?

A 最大の要因は、消費者のコメ離れで需要が減少する一方で、作付け過剰によって供給がこれを大きく上回っていることです。
 日本人の1人当たり年間コメ消費量は、最近では約60kg。約45年前の120kgに比べると半分に減っています。この傾向は今後も大きく変わらないでしょう。
 一方、07年産米の生産量は、農水省が目標としていた828万dを上回る856万dと予想され、昨年度分と合計すると約35万dもの在庫が積み上がると見込まれています。こうした供給過剰が、コメの価格を押し下げることになりました。
 また、全国農業協同組合連合会(JA全農)が、今年産米から農家に渡すコメ代金の支払い方法を見直したのも、影響しています。

Q それはどういうことか。

A
全農はこれまで、コメ出荷の段階で、販売予想価格を支払う「仮渡し金」方式を取ってきました。しかし今年からはまず一部を「内金」として渡し、残りは市場価格の動向を見ながら追加額を支払う方式に改めました。内金の基準価格が60kg=7000円と決められたため、これが市場の“下限”と関係者から受け止められ、相場が大きく揺らぐことになりました。

Q 供給過剰が続くのはなぜか。

A まず、生産調整が進まないことが挙げられます。農水省は、長年の一律的で強制的な転作政策を改め、市場原理を大幅に取り入れた改正食糧法に基づき、04年度から目標生産数量を配分する方式へと改めました。いわゆる「ポジ化」への転換です。当初の3年間は国→自治体→農業者へと配分してきましたが、今年度からは農業者や団体による需要調整が始まっています。主体的な取り組みですので、目標に比べてばらつきがでるのは仕方のないことです。
 また、農協を通さないコメ流通の増大も供給過剰の一因です。改正食糧法によって、誰でもコメの販売ができるようになり、例えば農家がインタ-ネットを通じて直接、消費者にニーズに合ったコメを売ることが簡単にできるようになりました。こうしたコメは全出荷量の相当程度を占めているみられ、転作するより収入が見込めることもあり、生産調整に加わるインセンティブ(誘因)が働きにくくなっているのです。

Q コメ価格の大幅下落は農家にとって死活問題だ。

A 60kg当たり入札価格が1万2000〜1万3000円を下回れば、生産コストを賄えないといわれています。それでも農外所得の多い兼業農家は抵抗力がありますが、収入をほぼ農業に頼る大規模農家の影響は深刻です。

Q コメ価格下落を受け、政府は緊急対策を打ち出した。

A 農水省は34万dを備蓄用に買い入れるなどの対策を発表しました。来年度の生産調整についても、強力に進めることを打ち出しています。これを受け、コメ価格センターの入札価格は上昇しており、下落傾向には歯止めがかかったとみられています。

Q こうしたコメ政策対応をどう見るか?

A コメ価格大幅下落に対する緊急措置としては、やむを得ないでしょう。ただし、備蓄米の積み増しは、国民負担によるものですし、今回で適正水準の100万dに達するため、来年度には使えない“一度きり”の対策です。備蓄米を市場で売却する際には、価格を引き下げる要因になることも留意すべきです。
 またコメに関してはこれまで、市場原理を導入し、大規模な担い手農家を育成しようと、米政策改革が進められてきました。長期的な価格低下は、当初から予想されたことです。価格下落のリスクに弱い大規模農家に対し、所得補償を行う品目横断的経営安定対策が創設されたのはそのためです。こうした方向性が今後も堅持されるのか気になるところです。
 米政策改革の最大の欠点は、市場価格の急激な変動、特に暴落への措置を欠いていたことです。そのため、価格が一定の基準価格(最低支持価格)を下回った時には政府が介入する基準やルールづくりが必要でしょう。そうした点も含めて、長期的に生産者が安心してコメを作れるような展望を示すことが強く求められていますね。


公明新聞記事(H19. 12. 17)より転載