経済教室NO.20注目高まる観光産業
                                   
Q 「観光庁」が新たに設置されると聞いたが。

A 国土交通省が、2008年度の組織・定員要求で観光庁の新設を盛り込んだ外局の再編を正式に発表しました。観光庁は現在80人程度の観光担当を110人に増強し、「国際観光部」と「観光地域振興部」の2部を設置して同年中にスタートさせます。  図
 政府は06年12月に観光立国推進基本法を成立させ、また、今年6月には観光立国推進基本計画を閣議決定しました。今年度から5カ年の計画で、観光立国の実現に関する具体的な目標と、達成に向けた施策を示しています。
 基本的方針として計画は、@国民の国内旅行および外国人の訪日旅行を拡大し、国民の海外旅行を発展させるA将来にわたる豊かな国民生活の実現のため、観光の持続的な発展を推進するB観光の発展を通じ、地域住民が誇りと愛着を持つことができる活力に満ちた地域社会を実現するC国際社会における名誉ある地位の確立を図るため、平和国家日本のソフトパワーの強化に貢献する―の4項目を掲げています。これらに加え、観光庁の設置により官民一体となった観光産業の振興策が強化されます。

Q 観光庁を設置する狙いは。

A 観光産業を軸にした新たな経済成長をめざす点にあるといえるでしょう。国交省は観光庁設置の理由について、観光立国の実現が21世紀の日本の経済社会発展にとって、不可欠な国家的課題である点をあげています。観光産業は地域の自然景観や祭り、歴史的遺産などあらゆる分野が対象となります。地方には、これらが多く存在するので、地方経済活性化の切り札になるといえます。
 さらに、日本は歴史的遺産だけでなく、アニメやマンガなど世界に対しアピールできる文化も豊富です。近年は“日本文化ブーム”の影響もあり海外からの観光客も増加していることから、観光を通じた国際相互理解の増進を図る目的もあります。

Q
国内の観光産業の経済状況は。

A
国交省の「平成19年版観光白書」によると、05年度における日本人による国内観光消費額は、宿泊旅行が16兆4100億円、日帰り旅行が4兆6600億円となっています。また、訪日外国人による国内観光消費額は1兆6500億円で、04年度比3.9%の増加です。これらに、日本人が海外旅行の準備のために国内で使った金額(約1兆7000億円)を合計した国内観光消費額は24兆4300億円。07年の世界半導体市場の規模が30兆円の大台に達するといわれていることから見ても、いかに経済規模が大きいかが理解できます。
 05年度国内観光消費額による直接的付加価値誘発効果は12兆3400億円、雇用誘発効果は229万人と推計されています。さらに観光消費がもたらす間接的な効果を含めた生産波及効果は55兆3100億円で、国内生産額の5.8%に当たります。間接的な雇用誘発効果に至っては469万人になると見込まれています。

Q 観光産業は今後どうなるのか。

A 白書は10年度における観光産業の国内経済への影響を三つの観点から分析しています。
 第一は、10年に政府が観光立国推進基本計画で掲げている訪日外国人旅行者数1000万人を達成すれば、8400億円の国内観光消費額の増加が見込まれると分析しています。この時点での訪日外国人旅行者による国内観光消費額の合計は2兆4800億円と推計しています。
 第二には、団塊世代の退職に伴うレジャーの増加が国内観光消費に好影響を与えるとしています。予測では団塊世代がもたらす国内観光消費額の増加を1兆1000億円と推計しています。最後は、働く現役世代の有給休暇取得率の上昇により、国内観光消費額の増加が2兆1600億円となるとしています。
 これらさまざまな要素を踏まえて、10年度の国内観光消費額は05年度より21.4%増の29兆6600億円規模になると推測しています。
 10年度に、29兆6600億円規模の国内観光消費額を達成できた場合の生産誘発効果は65兆2000億円で、雇用誘発効果は528万人と考えられます。05年度と比較して観光が日本の経済全体に占める重みは一層大きくなることが分かります。

Q これからの課題は。

A 白書が描くような国内観光消費額を達成するためには、政府の観光立国実現に対する積極的な取り組みが求められます。例えば、訪日外国人旅行者を増加させるためには、入国手続きの簡素・円滑化が必要になってくるでしょう。また、外国人が観光地や宿泊施設で、言語による不便さを感じないようにするための施策も求められます。
 さらに、観光客の増加は観光地にとって大きな経済効果を与える半面、観光地におけるごみ問題の発生といった新たな社会的負担を生む可能性もあります。地域と行政が一体となった新しい観光産業の在り方も考えていく必要があるでしょう。


公明新聞記事(H19. 10. 1)より転載