経済教室NO.18中小企業の信用保証制度を拡充し
                             在庫の担保OKに
                                   
○ 公明党の推進で8月からスタート
 先月6日、商工組合中央金庫(商工中金)は、東京都内のプラスチック製品の製造会社と栃木県宇都宮市内の食品会社に対して、在庫品(棚卸し資産)を担保に運転資金を融資することを決めた。
 2件の融資はいずれも、同日から各地の信用保証協会で取り扱いがスタ−トした「流動資産担保融資保証制度」(ABL保証制度)を活用したもので、同制度として全国初の適用となった。商工中金によれば、宇都宮市の食品会社(従業員数50人)は、地元名産の「日光ゆば」製品を担保に1000万円(期間1年)を借り入れる。
 中小事業者が保有する在庫品は、売掛債権(商品やサービスの売買未回収代金を受け取る権利)とともに流動資産と呼ばれ、その担保価値が近年、新たな中小企業の資金調達手段として注目されている。これまで、金融機関が行う中小企業向け融資は、土地などの不動産担保に偏ってきたためだ。
 中小企業庁によれば、中小企業向けの融資総額が250兆円を超す中で、担保となる土地の資産規模は86兆円と、融資総額の3分の1程度にすぎない。一方、中小企業が保有する売掛債権の資産規模は91兆円、在庫品は47兆円とされ、合わせれば140兆円近くに達する。
 そこで、公明党は、「中小企業の資金調達手段の多様化のために、流動資産を担保として活用できる信用保証制度を創設すべき」と主張。こうした公明党の後押しを受けて、政府は、まず2001年12月に売掛債権を担保とした「売掛債権担保融資保証制度」を創設。信用保証協会が保証を付けることで、金融機関による融資を受けやすくした。
 同制度の利用件数は、累計で5万7000件(6月末現在)を超え、融資額も1兆2600億円を上回った。
 さらに、先の通常国会では、担保対象を売掛債権から在庫品に広げるべきとの公明党の提案が実り、中小企業信用保険法が改正(8月4日施行)され、在庫品を担保に信用保証協会の保証を受けられるようになった。これにより、従来の「売掛債権」を担保とした保証制度は、「流動資産保証」へと拡充された。

○ “攻め”の資金調達可能に
 動産や債権等の資産を担保にした融資は、ALB(アセット・ベースト・レンディング)と呼ばれる。その大きなメリットは、手元に余力のある土地などの不動産担保を持たなくても資金調達ができることにある。しかも、無担保ローンに比べて低い金利で融資が受けられる。
 また、「困ってからではなく、会社が成長していくための“攻め”の運転資金調達がいつでも安心してできるようになる」との期待の声があるように、中小企業の事業規模や収益性に応じた資金調達を、機動的かつ安定してできるメリットも指摘される。中小企業の33%がABLを「利用したい」と答えたアンケ−ト結果もある。
 ただし、日本では、売掛債権や在庫品などを評価し、金融機関が在庫を差し押さえた場合に換金する
基盤づくりが遅れてきたため、ABLが普及するための課題も少なくない。
 米国では、ABLが事業関連融資の2割近くを占めているが、流動資産の評価会社や処分会社などの専門会社や人材がそろっている。日本では米国並みにABLが普及するには、こうした基盤整備が欠かせない。
 また、ABLの融資実績を積み上げ、金融機関と中小企業の双方がABLへの理解と信頼を深めていくことも重要である。その意味では、今回の流動資産保証制度は、信用保証協会が保証を付けることで金融機関の融資資金回収への懸念が減るため、ABLの普及を促す推進力としても期待できる。
 その際の課題の一つは手続きの簡素化だ。旧来の売掛債権保証制度では、必要書類の多さや債権譲渡登記が東京法務局でしかできないなど手続きの煩雑さが、利用を敬遠する一因になった。今後、流動資産保証制度の利用を進めるためには、中小企業に使い勝手の良い制度づくりが欠かせない。


公明新聞記事(H19. 9. 3)より転載