経済教室NO.17米住宅ローン問題機に起こった世界同時株安
                                   
Q 世界同時株安の震源となった米国のサブプライムローンとは、どのようなものか。

A 通常の融資より審査基準の低い低所得者向けの住宅融資のことです。2000年代前半、米国では住宅ブームが起こり、03年ごろには当初数年間に限り金利を抑えた変動金利ローンであるサブプライムローンの利用が増大。利用者は米国の住宅ローン貸付残高の約1割を占めるまでになりました。
 しかし昨年ごろから、米国では住宅バブルがはじけ、住宅価格が下落し始めると住宅市場の値上がりを当て込んでローンを組んだ人々の中で返済に行き詰まるケースが急増。融資を回収できないローン会社は破たんに追い込まれていったのです。

Q なぜ、この影響が各国の金融機関に及んだのか。

A 住宅ローンを融資した銀行やローン会社は、ローン債権を小口に分け証券化して投資銀行など他の金融機関に売却。金融機関は購入した証券を束にしたこの住宅ローン債権を世界中に転売しました。

Q
世界中に転売するほど魅力的な金融商品だったのか。

A
そうですね。高金利が売り物だったので、高利回りを狙った世界の金融機関やヘッジファンド、投資ファンドなどの機関投資家がこの商品を購入していました。しかし、サブプライムローンが焦げ付いたことで、その分、多額の損失を抱え込むことになったのです。

Q 債権の小口証券化は、金融機関が巨額の不良債権を抱え込まないための効果的な手法だったはずだが。

A 米国の住宅ローン貸付残高のうち、約6割は小口証券化されています。それだけ、米国では住宅ローンの証券化は活発に行われているわけです。とりわけ、サブプライムローンを組み入れたハイリスク、ハイリターンが魅力の金融商品は世界的な金融緩和、カネ余りを背景に海外の投資家の間で幅広く取引されていました。今回はそれがアダになった形です。

Q 世界同時株安のきっかけになったのは米国ではなかったようだな。

A 今月9日、仏の大手銀行・BNPパリバリが、サブプライムローンで多大な損失を計上した傘下ファンドの凍結を発表。被害が米国ではなく欧州に飛び火していたことで、各国の金融市場では信用不安が一気に広がり、日米欧の株価急落が始まったのです。

Q いまひとつ、株価下落の仕組みが分かりづらい。

A
どの金融機関がどの程度損失を出しているのかが不透明なために、投資家間で、リスクの高い債権や株式などの金融商品を敬遠。より安全性の高い国債などに資産を移す動きが一気に集中したことから株価が急落したと考えられます。

Q この問題の日本国内における影響は。

A
各金融機関はサブプライムローン関連の損失について発表しています。このローンを商品として扱っていたために損失を出した金融機関もありますが、こうしたところも含めて、各行とも「業績に大きな影響はない」としています。現状では被害は限定的との判断です。

Q 今月中旬の世界同時株安の状況と比べ、株価の推移はどうなっているのか。

A 問題が表面化して以降、日米欧の中央銀行は市場に大量の資金提供を実施。17日には、米連邦準備制度理事会(FRB)が電撃的に公定歩合引き下げを行いました。その後、株価は依然として楽観視できないものの落ち着きを取り戻しつつあります。

Q 日本銀行は先週の金融政策決定会合で利上げを見送る判断をした。

A 日銀の福井俊彦総裁は日本経済は前進しつつも「いまだ不確定要因がある」と利上げ見送りの理由を説明。サブプライム問題については、日本の金融システムに不安をもたらすことにはならないとしつつも、この問題について「数週間でほぐれるとは考えにくい」と述べ、しばらくは慎重に推移を見守る考えを示しています。

Q この問題の根はもっと複雑ということか

A そう、特に今回浮き彫りになったのは金融や投資のグローバル化です。サブプライムローンを担保にした複雑な金融商品を世界中のファンドや金融機関がどの程度保有しているのか、依然として市場の不透明感が拭えません。信用不安の払しょくのためにも、その実態解明が急がれるところです。



公明新聞記事(H19. 8. 27)より転載