経済教室NO.9不安定な動き続く株価

Q 景気の回復とともに、株価も値上がりが続いていたので、大幅に下落したのは驚きだ。

A 確かに日本の株価はこのところ順調な回復が続き、2月22日には日経平均株価が6年9カ月ぶりに1万8000円台を回復、同26日には1万8215円まで上昇していました。しかし、28日になってニューヨークなどの株価急落の影響を受けて、東京市場でも株価が大幅に下落、同日の下げ幅は一時737円にも達しました。順風に乗っているかに見えた株価回復の足どりは、一気に冷や水を浴びせられる形になりました。
 今回の株価急落は日米だけでなく、世界各国の証券市場を巻き込んでいます。急落の“震源地”となったのは27日の中国・上海市場で、総合株価指数が前日比8.8%という過去最大の下落を記録。これを受けて同日のロンドン、フランクフルトなど欧州市場が前日比2−3%と大幅に下落しました。さらにニューヨークでダウ工業平均株価が前日比416.02ドル(3.3%)と、2001年9月の同時多発テロ直後以来の大幅な値下がりとなったことから、各国への影響が決定的になりました。
 翌28日の東京市場が取引開始直後から大幅な値下がりとなったほか、同日のオーストラリア、韓国、シンガポール、インドなどの証券市場でも株価が急落し、「世界同時株安」の状態に陥りました。

Q 中国での株価急落が、なぜ各国の市場にまで影響を与えたのか。

 
A 経済的に目覚しい発展を続けている中国には世界中から多くの資金が流れ込んでいます。これらを背景に上海市場は昨年1年間だけで相場が2倍にハネ上がるほどの膨張が続いていました。しかし市場のメカニズムが未成熟で乱高下しやすい上に、中国政府が近く、過熱気味の株価を抑制する動きに出るのではないかとの観測が広がり、一気に株価の下落を招きました。
 また、最近は世界的な株価の上昇傾向の中で、投資家から大口の資金を集め、運用で高収益を得ようとするヘッジファンドなどが、盛んに各国の証券市場に巨額の投資を行い、相場の過熱感が高まっていました。そうした中で、中国の株価急落は、相場への警戒感を呼び起こす結果となり、機関投資家が連鎖的に各国の市場で売りに走り、世界的な株安を招いたとみられています。

Q では株価が下がっても、日本の景気への悪影響は心配ないのか。

A 日本の景気は依然として緩やかな回復が続いています。内閣府が今月12日に発表した06年10−12月期の国内総生産(GDP)の改定値も物価変動の影響を除いた実質で前期比1.3%増、年率換算では5.5%増の高い伸びとなっており、安定的な成長を維持していることが裏付けられています。さらに企業業績も好調な状況が続いており、今回の株価下落は一時的なものと受け止められています。
 しかし、景気の先行きに気がかりな面もないわけではありません。最も大きな懸念は、株安と同時に進行している円高の動きです。デフレ経済が続く中で、日本銀行は長期にわたってゼロ金利をはじめとする超低金利政策を取っていました。その結果、ヘッジファンドのような機関投資家が、金利の安い日本で円を借り、それを外貨に換えて海外で株式や債権、金融派生商品などに投資する「円キャリー取引」が盛んに行われ、その資金がアジアの新興市場国などに流れ込んでいました。
 円キャリー取引は円を売って外貨を買うため為替相場を円安方向に動かしますが、今回の世界同時株安の結果、市場から資金を引き上げた機関投資家が円を返済する逆流現象が生じ、今度は円高傾向が強まっています。円相場は2月末の株価急落前は1ドル=120円前後で推移していましたが、その後は円高が進み、今月5日には115円66銭まで値上がりました。わずか1週間で4%以上の急激な円高となったわけで、この傾向が今後も続けば輸出企業に打撃を与え、景気の回復を妨げることにもなりかねません。

Q 2月末の急落以降、株価はどう動いているのか。

A 今月に入っても、当初は円高の影響で株価はじりじりと値を下げ、5日には1万6642円まで下落しました。その後、1万7000円台を回復しましたが、14日には再び、1万7000円台をいったん割り込みました。これは米国で住宅ローンの焦げ付きが増加、これによって住宅市場が悪化するのではないかとの不安が広がって、13日のニューヨーク市場の株価が大幅に下落したためで、この時も世界各国で同時株価安状態に陥りました。このように株価は依然として世界的規模で不安定な動きが続いています。
 ただ、経済の状況から見れば「一過性」との見方が大勢で、春から夏にかけて再び高値に動く可能性が強いと予測されていますが、まだしばらくは神経質な値動きが続きそうです。


公明新聞記事(H19. 3. 26)より転載