経済教室NO.8企業業績の配分

Q 景気拡大が持続し、企業部門は業績が好調のようだね。

A 日本経済は2002年2月からの景気回復が丸5年となり、長期拡大が続いています。これに伴い企業の収益も好調です。上場企業の07年3月期決算は、5期連続で経常増益、4期連続で最高益の更新が確実と見込まれています。

Q 今年は例年以上に、この好業績をどのように配分するのか、という点に注目が集まっていると聞く。


A 確かに景気は回復していますが、その恩恵は家計にまで及んでいるとはいえません。
 企業が得た資金をどこまで勤労者に回すべきか。現在、労使交渉が本格化している今春の賃金交渉では、まさにこの点が焦点となっています。

Q それで、労使交渉はどのような構図になっているのか。

A 1月15日に、日本経済団体連合会と連合による首脳会談が開かれました。日本経団連側は、「日本企業は国際競争力をつけなければならない」(御手洗冨士夫会長)と、賃上げよりも積極的な設備投資の必要性を訴えました。
 一方、「労働者への配分が抑えられ、家計は疲弊している」(高木剛会長)として、景気拡大を持続させるためにも賃上げで消費を拡大させるべきだ、というのが連合側の主張です。

Q 配分をめぐる攻防の背景には、グローバル規模での競走激化があるといわれるが。

A 企業は「雇用・設備・債務」の三つの過剰をようやく解消し、体質強化に成功しました。次の段階の課題は、世界的な競争に対応すること。そのため、成長をにらんだ積極的な設備投資に乗り出しています。
 また、本格化するM&A(企業の合併・買収)にも備える必要に迫られています。今年5月には、「三角合併」が解禁されます。割安な株は買収の対象になりやすいことから、株主配当を増やしたり、自社株買いを進め、株価維持に努めているのです。
 こうしたことから、利益処分の中で、株主への配当金や内部留保に回す金額は近年、大きく拡大しています。

Q 一方、労働側は、配分を増やすべきという根拠に、労働分配率の低下を挙げている。

A 労働分配率は、企業が生み出した付加価値のうち、賃金として勤労者に支払われた割合です。2000年代に入ってから、労働分配率は下がり続けています。わが国では、賃金の下方硬直性などもあり、労働分配率は、不況期に上昇し、回復期には下落する傾向があります。ただ、ここ数年の動きには目立った特長が見込まれます。
 まず、人件費の抑制が強化されたことです。正社員より賃金の低いパートなど非正規雇用の割合を引き上げることで、企業は過剰債務を圧縮することができました。
 また、企業業績が回復してからも、国際競争激化を理由に人件費抑制姿勢が続いていることです。能力給導入や基本給は据え置き一時金で還元する柔軟な配分方式が広がっています。

Q 今後、好収益の企業から家計への配分は進むのだろうか。

A 安倍首相は、家計に景気拡大の恩恵が広がるように、好業績の企業の賃上げを求めていますし、公明党も重要な課題として訴えています。
 明るい兆候は出始めています。今春の賃金改善交渉では、業績好調な業種、企業で勤労者への配分が増えそうな気配です。将来不足が予想される労働力の確保を狙った動きも、現れています。サービス業を中心に非正規社員を正社員にするなど待遇改善に取り組む企業が増え始めています。より優秀な人材を確保しようと、初任給を上げる動きも広がっています。
 このような動きが広がっていけば、全体の賃金水準アップにつながる可能性があります。

Q これからの知識社会では、競争力の源泉は人的資本だ。設備への投資も必要だろうが、適正な賃金に基づく人材育成という投資は、より重要ではないか。

A 大変、大事な視点です。人件費抑制は短期的には合理的であっても、やがて競争力低下を招き、長期的な企業の成長にとってはマイナスです。競争力強化と人材育成の両立をどう実現するか。困難ですが達成を求められる重要な課題です。


公明新聞記事(H19. 3. 5)より転載