経済教室NO.62007年問題の影響

Q 「2007年問題」が、今年のキーワードとして注目されているが。

A 戦後間もない1947年以降の、いわゆる「ベビーブーム」に生まれた人は、日本の年齢別人口構成の中で、際立って多数を占めています。とりわけ、47年から49年までの3年間に生まれた人は「団塊の世代」と呼ばれ、総数は680万人、日本の総人口の約5%にも及びます。
 団塊の世代は激しい競争社会の中で、日本の高度経済成長を支え、また「ビートルズ世代」「全共闘世代」などといわれるように、さまざまな形で新たな時代を築いてきました。
 その団塊の世代が今年から60歳に達し、サラリーマンとして働いている人の多くが定年退職の時期を迎えます。今年から3年間の定年退職者は全国で300万人に上るといわれ、史上空前の大量退職という事態に突入しようとしています。これが2007年問題といわれる理由です。

Q 団塊世代の大量退職は、どのような問題をはらんでいるのか。


A まず挙げられるのは、退職する勤労者本人の生活の問題です。公的年金の受給開始年齢が引き上げられる中で、60歳で定年を迎えても、直ちに年金や貯蓄などだけで安心して暮らしていけるという人はけっして多くありません。経済的な側面だけでなく、社会参加意欲を満たすという点からも、シルバー世代の雇用環境の整備が不可欠です。
 また、企業の側にとっても、豊かな経験や技術を持ち、これまで業績の発展に大きく貢献してきた団塊世代の労働者が一気にいなくなってしまうことは大きな損失になりかねません。
 実際に厚生労働省の調査では、団塊世代の退職に危機感を持つ企業は33.7%に上り、特に製造業では41.1%と高い比率をを示しています。「ものつくり」の分野を中心に、技術やノウハウを若い世代にいかに継承するかが大きな課題となっています。
 これらの状況に対する国の対応として、公明党などの推進で昨年4月に改正高年齢者雇用安定法が完全施行され、65歳までの雇用確保が企業に義務付けられました。これによって企業は@65歳までの定年年齢の引き上げA再雇用などの形で定年後も引き続き雇用する「継続雇用制度」の導入B定年制の廃止―のいずれかを選び、実施しなくてはならないことになっています。現在、公的年金(定額部分)の支給開始年齢の引き上げに合わせて、段階的に雇用延長年齢の引き上げが進められており、最終的に13年度までに65歳までの雇用が義務付けられます。
 企業の対応としては、Aの継続雇用制度を採用するケースが大半のため、定年前に比べて待遇が大幅に悪化したり、中小零細企業の制度への対応が十分に行われるか、などの懸念はあるものの、雇用延長へ大きな流れが形成されたことは間違いありません。

Q シニア層の増加は、消費にも変化をもたらすのでは。

A 団塊世代の大量退職が続く3年間で、支給される退職金の総額は50兆円に上るともいわれいます。また、元気で消費意欲も旺盛な高齢者が増えることによって、今後、シニア層を対象とした商品やサービスの提供が活発になると予想されます。
 とりわけ、膨大な退職金マネーをめぐって、銀行や証券会社などが顧客の獲得に力を入れており、退職金の運用を念頭に置いた高齢者向けの金融商品が次々と発売されています。また、保険業界も、高齢や病気で通院中の人でも加入できるなど、これまでになかった商品を相次いで開発し、シニア層への売り込みを図っています。さらに、旅行などのレジャーや、趣味・教養、医療・介護といった分野でも市場の拡大が期待されており、団塊世代の大量退職は、シニア層を消費市場の主要ターゲットの一角に押し上げる役割も果たしています。

Q 退職したシニア層による地域社会での活躍も期待されるが。

A 団塊世代のすべてが60歳に達すると、これを含めて60歳以上の元気な高齢者は3000万人を突破すると推計されています。退職して時間的余裕があり、社会への参加意識が高いシニア層が増加することは、たしかに地域社会にとっても大きな活力を得ることになります。すでに多くのNPOなどが退職後、自分の知識や能力を生かしたいと希望する人々と地域社会とを結び付けたり、ボランティアなどの団体の立ち上げをサポートする活動を進めています。
 また、団塊の世代の約半数は東京、名古屋、大阪の3大都市圏に居住しています。これは進学や就職をきっかけに地方から都市部に移り住んだ人が多かったためですが、今度は地域活性化の担い手として、第二の人生を故郷に戻って生活してもらおうという「Uターン」移住の支援を積極的に行う地方の自治体も増えています。
 このように団塊の世代の大量退職、シニア層の増加は、さまざまな課題と同時に、大きな可能性も包含しており、シニアの活力を最大に生かせる社会の仕組みづくりが望まれます。


公明新聞記事(H19. 2. 19)より転載