経済教室NO.421年ぶりの円安水準

Q 外為市場で円安が進んでいるね。

A まず円の対米ドル相場は、昨年5月に1ドル=109円台をつけ、その後、下落基調に転じました。年末には上昇する場面もあったものの、1月半ばから再び円安の勢いが強まり、1月29日には一時的に1ドル=122円20銭と、約4年1カ月ぶりの円安水準を記録しています。
 先週末には、通貨の国際会合を控えて幾分、円高に戻しましたが、それでも1ドル=120円台で推移しています。
 円安は対米ドルだけではありません。対ユーロでこれまでの最安値を更新し、さらには、韓国のウォンなどアジアの通貨に対しても、円安となっています。いわば、円の「独歩安」の様相です。
 世界の主要15通貨に対して円の総合的な強さを示す実質実効為替レート(1973年3月=100)でみれば1月は99.0。85年9月に日米欧の通貨当局がドル高是正を決めた「プラザ合意」当時の水準までに、円安が進行していることなります。

Q 円がじりじりと値を下げ続けてきた背景には、どんな要因があるのか。


A 国内の資金が、より高い利回りを求めて、投資信託や外貨投資などの形で海外流出しているためです。そして、これを後押ししているのが、家計部門のマネーであることが大きな特徴です。
 民間シンクタンクの調査によると、2006年9月末時点における家計の外貨建て金融資産の保有残高は約37.5兆円と、5年半で2倍以上に急増。このうち、投資信託の中に組み込まれたものが、26兆〜30兆円に達すると見られています。
 投資信託の人気の理由は、郵便局などでの販売で身近になったことや、新興国の株式・債券を組み込んだ利回りの高い商品の登場が挙げられ、「利回り志向の高い高齢者を中心に、銀行窓口で定期預金からシフトしている」との指摘があります。
 一方、外国為替証拠金取引も円安を促す働きをしています。少ない証拠金でその何十倍もの大きな外貨投資を行う仕組みで、個人投資家の人気を呼んでいます。

Q やはり、わが国の超低金利政策が影響しているというべきか。

A こうした動きの基調にあるのが、日本と海外との金利差であることは自明です。昨年7月に、日銀はゼロ金利を解消しましたが、政策金利は年0.25%。米国のFF金利年5.25%、欧州中央銀行の政策金利年3.50%と比べて、非常に低い状態です。金利差が解消されるまで、円安が継続するという見方が有力です。

Q この金利差に目をつけて、「円キャリートレード」といわれる取引が活発化しているというが。

A 主要国で最も金利の低い円を借り入れて、高金利の外貨や外国の株式、商品などに投資し、高いリターンを狙う仕組みです。
 先に挙げた外国株式を組み込んだ投資信託もそうですが、投機を行うヘッジファンドの資金源になっているほか、外国の個人が銀行から円建てローンで資金調達する動きが指摘されています。外為市場で大量の円が外貨に換えられるので、円安圧力もかかり、円安が進めば為替差益も狙えます。
 こうした円キャリートレードによる資金については、40兆円規模とも推計されており、欧米だけでなく新興国の市場へも流れ込んでいるといわれてます。昨年、原油など資源相場を押し上げたのも、こうした資金といわれており、円の流動性が、世界各地の金融、商品市場に大きな影響を与えているといえるでしょう。

Q しかし、円キャリートレードの今後の動きに、懸念する声も聞く。

A 円キャリートレードによる資金の最大の問題は、いわゆる「逃げ足」が速く、市場を不安定化させるということです。日本の金利先高感や円高観測が浮上すれば、一気に資金が流出し、外貨から円に向かう可能性も否定できません。「巻き戻し」です。
 投資が解消される海外の市場が混乱するだけでなく、経済実態以上の円高が急激に進み日本経済も大きな打撃を受けることになります。
 最近の円安については、欧米諸国も大きな関心を持っており、9、10日にドイツで開催する7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)での議論も注目されます。


公明新聞記事(H19. 2. 5)より転載