経済教室NO.3景気回復の持続へカギ握る個人消費

Q そもそも個人消費とは何か。

A 個人が商品やサービスを購入するために実際に使った金額の総合計です。日本の個人消費は国の経済規模を示すGDP(国内総生産)全体の半分程度を占め、その動向が景気や金融政策に大きな影響を及ぼします。
 例えば、今月17日、18日に行われた日銀の金融政策決定会合では、金利の引き上げが見送られましたが、その理由の1つとして「個人消費は引き続きやや伸び悩んでいる」ことが挙げられました。
 昨年12月に内閣府が実施した消費動向調査によると、「暮らし向き」「耐久消費財の買い時判断」などすべての調査項目で下がり、消費者心理を示す消費者態度指数(一般世帯、原数値)が前年同月比で0.6ポイント低下し、45.9となるなど、個人消費の回復具合に一抹の不安がぬぐえません。消費総合指数の動きを見ても昨年から横ばい状態で推移しています。

Q 景気が腰折れする恐れがあるのか。


A 「景気の回復基調は崩れていない」という見方では政府も日銀も一致しています。
 昨年12月で戦後最長となった景気拡大(4年11カ月)を引っ張ってきたのは、設備投資、輸出を軸にした企業部門です。今後の景気回復を持続させるためには、企業部門の好調さが家計部門に波及するかどうかがカギになっています。その点を見極める指標として個人消費の動向が注目されているのです。

Q 個人消費が伸びれば景気回復は続くのか。

A モノが売れることで企業の利益が増大し、賃金の上昇に反映されると個人消費が増加します。その結果、企業の利益がさらに増えて賃金上昇、個人消費の拡大をもたらすという好循環が、あるべきシナリオです。
 アメリカ経済の減速など外的な不安要因もありますが、そうした懸念材料を乗り越える個人消費の力強い回復が求められています。景気拡大が15年目に入ったイギリスの家計消費がGDPの約7割に達していることは、示唆に富んでいます。

Q 個人消費に火がつかない原因は何か。

A 幾つかの要因が考えられますが、第1に、家計の給与所得の伸び悩みです。厚生労働省が毎年公表している「労働経済の分析」によると企業の現金給与がほとんど伸びていません。景気回復が賃金上昇に反映されてこなかった現状が分かります。
 第2に、薄型テレビの“値下げ合戦”に象徴されるような激しい国際価格競争の中で、企業はもうけた利益を従業員の賃金に反映させることに慎重になっています。物価が上昇しない背景には海外から安価な製品が大量に輸入されている実態もあります。「100円ショップ」の店舗数が大幅に伸びていることは、企業が価格を値上げしにくい現状を端的に示しています。
 第3には、本格的な少子高齢社会、人口減少時代に突入したことで、国民の間に漠然とした将来不安が根強いために消費活動を鈍らせている側面もあるでしょう。

Q 賃金の面ではパートやアルバイトの増加、待遇などが問題ではないか。

A これは企業の“賃金抑制策”の表れと言ってもいいでしょう。パートやアルバイト、派遣社員など非正規雇用者は年々増加しており、そのほとんどは若年層です。そのうち、「年長フリーター」と呼ばれる25歳から34歳までの非正規雇用者が特に増加しています。賃金は、正規雇用者の5〜6割、パート、アルバイトなど短時間労働者に限れば5割を大きく割り込み、平均的な賃金水準を押し下げています。同じ職場で何年間もアルバイトとして働き、正社員になりたくてもなれないような雇用環境は改善が急務です。そのためにも、景気回復を持続させていくことが不可欠です。

Q 景気回復と個人消費復活のためには、今後の成長戦略も大事だが。

A 政府は25日、これから5年間の中期的な方針となる「日本経済の進路と戦略」を閣議決定しました。
 その中で、めざすべき日本経済の姿として、@イノベーション(技術革新)を開花させる成長力の強化A再チャレンジ可能な社会B社会保障制度の充実など健全で安心できる社会C21世紀にふさわしい行財政システムの構築―の4つを提示しています。そこに盛り込まれた政策が実行されれば、今後5年間のうちに「2%程度あるいはそれをかなり上回る」実質成長率、名目では「3%台半ば程度あるいはそれ以上」の成長率が期待できるとしています。
 息の長い景気回復を実現するには、安定した政治の下で経済財政政策を切れ目なく発動していかねばなりません。その意味でも、今年の政治決戦の持つ意義はとても重要です。

公明新聞記事(H19. 1. 29)より転載