経済教室NO.107年の日本経済を展望

Q 昨年11月には、02年2月から始まった現在の景気拡大が、これまで戦後最高だった「いざなぎ景気」の57カ月を超え、記録を更新したらしいと話題になった。今後、景気拡大はどう推移すると見ているのか。

A 政府をはじめ、民間シンクタンク(調査機関)が年末にかけて、経済見通しを相次いで発表しました。それによれば、今年前半は景気拡大が一時的に足踏みする「踊り場」あるいは「調整」局面を迎えるものの、後半以降は再び、成長率が加速するとの見方が大勢を占めています。
 日本経済全体の姿を示す実質国内総生産(GDP)の成長率に関しては、政府が06年度は1.9%、07年度は2.0%の伸びを予測しています。一方、民間シンクタンクも、06年度が平均2.0%前後、07年度は同2.0%前後となる見通しをはじいています。

Q 今年前半に踊り場にさしかかると見ているのは、どうしてか。

A まず、昨年から減速を続けている米国経済の影響が徐々に表れ始めることです。わが国は円安と、アジアや欧州などの好調な経済といった良好な輸出環境により、輸出増を維持しています。しかし米国経済の減速が続けば、こうした地域の経済の足を引っ張り、輸出にはね返る恐れがあります。
 また、電子部品やデバイスなどIT・デジタル産業の在庫が増えていることや、個人消費の勢いが幾分弱いことなど、国内的な要因でも懸念材料が指摘されます。
 現実に、わが国経済の各種指標は、昨年後半以降、弱めのものが目立っています。

Q ところで、デフレの克服はここしばらく、わが国経済運営の課題だった。脱却の見通しが立ったのか。

A 06年度のGDP成長率はまだ、名目が実質を下回る「名実逆転」が続きそうです。しかし政府や多くの民間シンクタンクは、07年度には物価の上昇率も示すGDPデフレーターがマイナスからプラスに転じると予測しています。まだまだ予断はできませんが、デフレからの脱却へ向けて前進しそうです。

Q では、各部門の見通しについて聞きたい。民間企業は好調な業績を維持しそうだが。

A 企業収益は06、07年度も増収・増益を続け、過去最高水準を更新しそうです。
 ただし、これまでに比べて増加率は縮小しそうで、特に昨秋の中間決算公表の際には、今年度業績予想の下方修正が相次いだことは、まだ記憶に新しいところです。
 これに伴って、足元の設備投資の伸びが鈍っており、今後も拡大ペースは低下する可能性が高いと予測されています。

Q 設備投資はこれまで景気拡大を引っ張ってきた。もう一つのけん引役として期待されるのは家計の個人消費だが、今後、復調は見込めるか。

A 確かに、昨年夏を中心に個人消費が大幅に低下し、その脆弱さが心配されました。しかし、これは長雨など外部要因による一時的な現象であり、その後は持ち直すと予測されています。
 ただし、個人消費を支える所得そのものが、企業業績とは対照的に伸びていないことが、個人消費の拡大を限定的なものとしています。
 失業率低下による労働需給も改善の方向にありますので、今後、企業が雇用と賃金をともに増やしていけば、個人消費による景気拡大も見込めるでしょう。

Q リスクとなる要因はないのか。

A 懸念される第1は、米国経済の動向です。個人消費や設備投資は堅調ですが、住宅投資の落ち込みが長引き景気が失速すると、輸出への依存度が大きいわが国経済は大きな影響を被る恐れがあります。
 第2は、日銀の金融政策です。ゼロ金利解除後、日銀は利上げのタイミングを探っているといわれますが、景気回復の現状を見誤れば、企業の設備投資意欲をくじくことになりかねません。また、米国の金融緩和と重なり日米金利差の縮小による急速な円高を招くことも、考えられるシナリオです。
 第3は、個人消費の低迷です。先に見たように、景気拡大の恩恵はまだ家計には及んでいません。今後は、企業収益を所得にどこまで反映させていくかが課題となります。

公明新聞記事(H19. 1. 8)より転載