経済教室NO.30国、地方に広がる市場化テスト

Q 市場化テストの目的は。


A ゛お役所仕事≠ニいう言葉に象徴されるように、民間とは異なり競争原理の働かない行政のサービスは、効率が悪くなりがちです。市場化テストは、民間も参加する競争入札制度を導入することによって、公共サービスのコスト(経費)を抑制しつつ、提供されるサービスの中身を改善する試みです。
 政府は昨年4月、内閣府に「市場化テスト推進室」を設置し、ハローワークや社会保険庁など3分野8事業でモデル事業を試行しました。その結果、国の事業よりもコストを低減でき、同等のそれ以上の成果を収めるケースが相次ぎました。こうした結果も踏まえ、先の通常国会で行政改革推進法などと合わせ、市場化テストの実施手続を定めた「公共サービス改革法」を制定。本格的な市場化テストへと踏み出しました。公明党も歳出改革を具体化する観点から、強力に推進してきました。

Q
本格実施は来年度から。

A
そうです。本格実施の初年度となる来年度は、国民年金保険料の滞納者に納付を促す社会保険庁関連事業をはじめ、管理職や技術者などを対象にした無料職業紹介などハローワーク関連の3事業、統計や登記、独立行政法人である雇用・能力開発機構の仕事など計9事業で競争入札が実施されます。
 このうち、ハローワーク関連と同機構の5事業は、来月に民間だけ参加する入札の広告を行い、2007年4月から落札者による事業が始まります。契約期間は1〜3年で、問題がなければ民間移管などが検討されることになります。


Q
市場化テストの手続は。

A
民間や地方自治体から市場化してほしい事業の要望を毎年受け、「公共サービス改革基本方針」で対象を選定します。各省庁で入札の実施要項を作成し、官と民、あるいは民間同士で入札を行ない、サービスの質・価格の両面で優れた担い手が落札します。民が落札すれば、その創意工夫を生かしたサービス向上などが期待できます。官が落札した場合でも民に事業を取られないよう、緊張感を持って仕事に取り組むようになるでしょう。

Q
入札で同じ省が発注者と応札者の二役になるのは分かりにくいが。

A
一連の手続きに関しては、第三者機関である「官民競争入札等管理委員会」(委員長=落合誠一・東大大学院教授)が基本方針や入札の実施要項、落札者の決定などを審議し、全体の透明性・中立性・公平性を確保します。競走入札で仕事を奪われた公務員が一時的に落札先企業に移籍したり、配置転換されることも想定し、不利にならないよう規定されています。落札した民間業者の従業員は見なし公務員として守秘義務を課されます。

Q 民業活性化の効果は。

A
市場化テストによって行政の歳出削減に加え、民業の活性化による増収入という“一石二鳥”の効果が期待できます。民間研究機関の推計によると、市場化テストなどアウトソーシング(外部委託)される事業の市場規模は、国(府省、独立行政法人)が約2.4兆円、自治体が約5.4兆円で、合わせて8兆円近くになります。モデル事業の説明会に延べ285社が参加し入札参加企業は延べ127社に達したことに示されるように、“官業開放”は民間にとって新たなビジネスチャンスをもたらします。

Q
今後の課題は。

A
対策事業の拡大です。「仕事を失いたくない」という官僚の抵抗は根強く、官が手放しやすい事業だけが入札にかかる恐れもあります。例えば、来年度の対象になった国民年金保険料の納付促進事業は、既に決まっている社会保険庁の人員削減計画によって、もともと官が担う余地の少ない分野だったと指摘されています。内閣府は、来夏をメドに対象9事業を約20に拡大する方針ですが、政治の強いリーダーシップが不可欠です。

Q 自治体の取り組みはどうか。

A 国の「改革基本方針」に自治体への積極的な導入が盛り込まれました。導入または導入を検討中の都道府県が23あるほか、政令市や区市でも導入する動きが広がっています。特に和歌山県は、来月完成予定の県庁南別館の警備や清掃など保守管理業務を官民競争入札にかけました。民間有識者らで構成する第三者機関「評価委員会」が技術と価格の両面から入札者を採点し、きょう20日にも落札者が決定します。官民競走となる入札は国、地方を通じて全国初とあってその成果が注目されています。東京都は都立技術専門校で行なっている公共職業訓練の5科目について、来月、官民競争入札を行ないます。

Q ほかに、どんな自治体の取り組みがあるか。

A 佐賀県では、警察などを除く県の業務2027項目について県民の意見を募り、民営化するか県が継続実施するかなどを決める「協働化テスト」を始めました。協働とは県の業務について市民団体、民間企業などが対話をしながら、それぞれの特徴を生かしてサービスの質的向上に取り組むことです。県のほぼすべての事業が県民の目線から洗い直されることになります。

公明新聞記事(H18. 11. 20)より転載