経済教室NO.29景気拡大、戦後最長へ

Q 景気拡大の期間が戦後最長になるといわれているが、景気の拡大、後退はどのように判断されるのか。


A 景気はつねに好況と不況を繰り返していて、後退から回復へ転じた時期が「谷」、拡大のピークを迎えた時期が「山」と呼ばれます。直近の景気の谷は2002年1月とされており、同年2月以降、日本経済は拡大を続けています。直近の谷から、次のピークである山までが景気拡大期間となるわけです。
 この景気の山と谷の時期については、内閣府が毎月発表する景気動向指数の中の「一致指数」の数値を基に、専門家が判定します。一致指数は一般に50%を上回れば景気が上向き、下回れば景気は下向きと判断されますが、景気の山、谷という基準の判定は短期間で下すことはできず、正式な判定までには実際に山や谷を迎えた時期から1年以上かかるのが普通です。

Q
最近の景気はどのように推移しているのか。

A
政府は10月12日に公表した月例経済報告で「景気は回復している」との基調判断を示しました。これで02年2月からの今回の景気拡大の期間は4年9カ月となり、戦後最長だった「いざなぎ景気」と並びました。今月はこれをさらに更新して、戦後最長となることが確実とみられています。
 今回の景気拡大は途中で2度の「踊り場」があり、回復が減速する場面もありましたが、米国のほか、中国やインドなどアジア諸国の著しい経済発展に後押しされて輸出が増加し、成長の大きな要因となりました。
 この間の産業界は、これまで業績回復を妨げていた設備、債務、雇用の三つの過剰を解消して体力が徐々に向上、最近は大企業を中心に過去最高の利益を記録するところも増えています。

Q
家計などから見ると、まだ景気回復の実感が乏しいが。

A
今回の景気拡大局面は、多くの点で過去の景気拡大と性格が異なる部分があります。
 例えば、期間中の実質成長率を見ると今回は2.4%で、いざなぎ景気(11.5%)の5分の1程度。バブル景気に比べても2分の1以下にとどまっています。さらに物価の変動も反映して、より景気の実感に近い名目成長率で比較すると、いざなぎが18.4%だったのに対し、今回は1.0%と圧倒的な差があります。こうした景気回復の勢いの違いが、期間が長い割に回復を実感しにくい大きな要因となっています。
 また、いざなぎ景気の当時、日本は高度成長期にあって経済大国への道を突き進んでいました。カラーテレビ、クーラー、自動車の「3C」のブームに代表されるように、国民の中に旺盛な消費意欲があり、強い個人消費が企業の設備投資と並んで、景気を押し上げる力となっていました。
 しかし、現在の個人消費は、そうした力強さを持ち合わせていません。その要因としては、必要なモノがすでに行き渡っていて、特に買いたい物が見当たらないという消費者心理とともに、賃金が伸び悩んでいることが挙げられます。拡大期間全体を通した定期給与(従業員30人以上)は、いざなぎ景気では79.2%も増加、バブル景気でも12.1%増加したのに対し、今回は0.85%減とマイナスになっており、個人消費を抑え込む形になっています。

Q
景気が回復しているのに、賃金が上がらない理由は。

A
近年の日本経済は、景気が回復しつつも、物価が下がり続けるデフレ状態にあるという異例の状況にあり、勤労者の賃金も減少しました。
 また、企業は業績を回復するために過剰な雇用を整理するリストラを推進、失業率の上昇や賃金の減少を招きました。業績が改善してからも、厳しい国際競争に勝ち残るため、正社員の数を増やさないなど、依然として人件費の節約を図る企業が多く、景気回復の影響が家計に及びにくい状況が続いてきました。

Q 景気拡大は今後も続くのか。

A
今後の経済状況を考えると、米国の景気減速や原油価格高騰の再燃、北朝鮮の核開発問題などの不安定材料があるものの、多くのエコノミストは、日本の緩やかな景気拡大が08〜09年ごろまでは続くとの見通しを示しています。
 政府・与党としても、持続的な景気回復を今後も維持することが重要な課題であり、その中で設備投資や個人消費の拡大を図り、より安定した経済成長への構造を築くことが必要です。
 そのためにも賃金の上昇や雇用情勢のさらなる安定化を図るとともに、大企業と中小企業、中央と地方などの経済格差の解消を進めることが強く求められます。


公明新聞記事(H18. 11. 6)より転載