経済教室NO.28地方財政の再建

Q 地方財政の現状は。


A 地方自治体の2004年度末の債務残高は前年度より3兆円余も増えて、201兆4000億円に上り、初めて200兆円を突破しました<棒グラフ参照>。累積傾向に歯止めがかかっていません。
 また、人件費など支出が義務付けられている経費が一般財源に占める割合を示す「経常収支比率」を見ると、前年度比2.5ポイント増で過去最高の91.5%に達しました。
 この比率が高いほど窮屈な財政運営を余儀なくされていることになります。財政運営上、望ましいとせれている80%未満の市町村は6.5%です<円グラフ参照>。

Q
いずこも厳しい財政運営を強いられているということか。

A
税収などで政策経費をまかなえているかどうかを示す単年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支)で見ると、国の赤字財政に比べ地方全体では黒字です。これは、東京都など財政に余裕のある自治体が貢献しているからで、中山間部や離島、旧炭鉱地域など財政力の弱い自治体との二極化が問題です。特に夕張市が財政再建団体の手続きに入ったことで、財政難の自治体への対応が大きな問題になっています。

Q
夕張市は、経営破たんに陥る前に手を打てなかったのか。

A
同市は、短期の資金繰りを目的に金融機関から借り入れ原則年度内に返済することが義務付けられている一時借入金を使って、特別会計と一般会計の間で年度をまたぐ貸し借りを繰り返しました。財政悪化が表面化しないよう“粉飾”したのです。その結果、負債額は630億円を超え、標準財政規模である45億円の約14倍に達しました。本来、1年を超える資金調達の場合、都道府県の許可(現在は同意)を得て地方債を発行しなければなりません。

Q
従来の制度に不備があったのでは。

A
そういう指摘が相次ぎました。現在の地方財政再建促進特別措置法は1954年度末時点の経営難の自治体に適用する目的で、55年に制定され、それ以降も準用されてきました。しかし、自治体の財政悪化を早期に発見し立て直す仕組みにはなっていません。そうした制度にするためには、自治体財政の健全度を測る指標を厳格化することが必要です。
 さらに、普通会計や公営事業会計、第三セクターなどの財政状況を総合的に把握できるガラス張りの公会計制度を構築し、住民への情報開示を徹底することが不可欠です。

Q 財政の健全度を測る指標について、政府の取り組みは。

A
総務省は今年度から地方債発行を許可制から協議制に移行した際に、自治体の財政健全度を測る新しい指標として、「実質公債費比率」を導入しました。これは、自治体の収入に占める借金返済の割合を示すもので、これまでの「起債制限比率」では反映されなかった一般会計から特別会計への繰り出し金なども債務に含め、公営企業などの借金も算入されます。
 実質公債費比率が「18%未満」なら国の同意なしで地方債を発行でき、健全性が確保されているとみなされます。「18%以上25%未満」で条件付きの起債許可、「25%以上」なら単独事業の起債が制限されます。

Q
早期健全化については。

A
「骨太の方針(経済財政運営と構造改革に関する基本方針)2006」や総務相の私的懇談会「地方分権21世紀ビジョン懇談会」の報告書で自治体財政の再建法制の見直しが盛り込まれました。これらを踏まえ、総務省の「新しい地方財政再生制度研究会」(座長・宮脇淳北海道大学教授)が先月下旬に中間整理を出しました。

Q どんな内容か。

A
地方財政の再生手続きについて、破たんに至る前に健全化を促す「早期是正スキーム(枠組み)」と、自主的な健全化が困難と思われるほど悪化した自治体を対象にした「再生スキーム」の2段階を提唱しています。財政の健全度を厳格に測るため、公営企業や第三セクターなどを含めたストック(債務)に着目した新しい指標を整備し、フロー(資金繰り)と合わせた徹底的な情報開示を前提としています。
 財政指標が一定の値を下回った自治体は早期是正段階に入り、財政健全化計画を策定、住民に公表するとともに国・都道府県への報告を義務付けられます。再生段階では、国の関与が必要だとしています。

Q 自治体が抱えている債務やその金利の減免については。

A
そうした債務調整は最大の論点になっていましたが、導入された場合、財政力の弱い自治体に対し金融機関の貸し渋りが起きる可能性があります。また、裁判所の関与が必要になり、司法権による行政権の侵害になると指摘されています。このため、今回の中間整理では結論を先送りしています。


公明新聞記事(H18. 10. 16)より転載