経済教室NO.24成果主義に見直し機運

Q まず、成果主義とは何か聞きたい。


A わが国の企業は長年にわたって、勤務期間や年齢、職務能力など年功によって賃金支給額が増加する年齢給や職能給を採用してきました。 
 しかし近年は、これらを採用している企業が減り、仕事の成果を賃金により多く反映させたり、昇進の基準とする企業が増えてきました。これが成果主義と呼ばれているものです。

Q
こうした動きはいつから始まったのか。

A
1993年に大手IT企業が導入したのがわが国では初めてといわれており、それ以降、成果主義を人事労務政策の中心に位置づける企業が増えていきました。
 2004年度の厚生労働省調査によれば、半数を超える企業が、「個人業績を賃金に反映させる」と答えており、成果主義の導入が進んでいることがうかがわれます。特に企業規模が大きくなるにつれてこの傾向が強まっており、従業員1000人以上の企業では、8割以上が採用しています【グラフ参照】。

Q
成果主義を導入する背景には何があったのか。

A
毎年支給額がアップしていく年功的賃金制度では、社員間で大きな差が出ないため、意欲を引き出すのが難しいことが、これまで指摘されていました。こうしたモラルハザード(倫理の喪失)を解決することが、成果主義に本来、期待されていたことです。地球規模で激化する競争に生き残っていくため、働く人のモチベーション(動機付け)を高めるなど、企業を活性化させる必要もあったからです。
 しかしわが国の場合、年功的な賃金によるコストを圧縮するために、成果主義が導入されたというのが実情です。多くの企業で急速に導入が進んだのも、バブル崩壊後の業績悪化を乗り切る緊急避難的な手段として注目されたからです。

Q
成果主義が導入されてすでに十数年経つということだが、どのように評価されているのか。

A
あまりいい評価は聞かれませんし、むしろ失敗事例の報告などが目立ちます。安易な導入による弊害が現れているといえるでしょう。
 そもそも、賃金を圧縮することを目的に導入した企業が多いわけですから、働く人からの強い反発を受けています。各種の調査・研究でも、成果主義が必ずしも意欲向上につながっていないようです。
 成果主義が機能するためには、働く人の成果や実績を正しく把握し、公正な人事考課が行われることが前提となります。しかし実際には、評価の基準が明確でなかったり、そもそも数量的に把握できない職務もあり、その公正性をどう確保するかは難題だからです。
 また、個人の成果といっても、企業業績は景気や経営のあり方にも左右されるため、これらの経営リスクまで社員に負担させるのはどうか、という問題もあります。

Q 短期的な成果ばかり追い求めるようになったという声もある。

A
手っ取り早く成果の上がる仕事にばかり飛びつき、時間はかかるが長い目で見て大きな業績につながる仕事に取り組むインセンティブ(誘因)が失われています。
 また、長期的な視野で社員を育成しようという風潮がなくなり、若い世代は能力開発を受ける機会をなくしています。企業の競争力の源泉が人材であることを考えれば、これは深刻なことです。
 経済産業省の「人材マネジメントに関する研究会」は8月に出した報告書で、これまでの成果主義的改革には、こうした能力開発が抜け落ちているという構造的欠陥があると指摘し、能力開発やチャンスを与えることでモチベーションを高めるような成果の前段階となる改革が必要と強調しています【図参照】。
 また、わが国の職能給制度構築の立役者である楠田丘・日本賃金研究センター代表幹事は、「人材が育つまでは能力主義、育った後は成果主義」とし、「20代の社員の定昇を止めるなんてとんでもない」と批判しています。

Q
現実に、成果主義の見直しは進んでいるか。

A
例えば総合商社では、若手社員を対象に、定昇に差をつけないなど年功的制度を復活させる動きがあります。長期的な視点でじっくり育成しようというわけです。
 また全般的には、これまであらわになった弊害をどう修正していくのかは今後の課題であり、当面は模索が続くでしょう。


公明新聞記事(H18. 9. 18)より転載