経済教室NO.23景気回復足取り確かに

Q 消費者物価の上昇が続いているようだが。


A 総務省が8月25日に発表した7月の全国の消費者物価指数(2005年=100)は、価格変動の大きい生鮮食品を除いた値が100.1となり、前年同月よりも0.2%上昇しました。
 今回は指数算出に用いる対象品目の見直しが行われ、薄型テレビやDVDなど価格下落の激しい品目が新たに対象に加わったため上昇率が押し下げられましたが、旧基準では前年同月比0.6%のプラスとなり、9カ月連続で上昇。新基準でも2カ月続けて上昇しました。
 また、実際のGDP(国内総生産)と、労働力や設備を平均的に使った場合に生み出せる潜在的なGDPとの差から割り出される需給ギャップも、内閣府が8月28日に公表した4―6月期の試算値ではプラス0.2%で、3四半期連続のプラスとなりました。需給ギャップは、その名の通り需要と供給の差を示すもので、プラスは需要超過を表しています。需給ギャップの値が3四半期続けてプラスとなったのは1992年以来、14年ぶりのことです。
 こうした状況を踏まえて、政府は7月の月例経済報告で、それまで続けていた「デフレ状況にある」との表現を削除。さらに、早ければ今月中旬に公表する9月の報告の中で、デフレ脱却を宣言する見通しとなっています。日本経済は98年からデフレ状況に陥っており、デフレからの脱却は8年ぶりとなります。

Q
GDPの増加が続き、失業率もかなり改善されたようだが。

A
日本の景気は2002年2月から55カ月連続で拡大を続けており、期間の長さでは既にバブル期を上回り、戦後最長の「いざなぎ景気」(1965年―70年、57カ月)をも超える勢いとなっています。
 GDPも8月11日に内閣府が発表した今年4―6月期の速報値では、好調な企業の設備投資や個人消費に支えられて物価変動を除いた実質で前期比0.2%増、年率換算では0.8増となり、6四半期連続のプラス成長を記録しました。特に4―6月期は、物価変動を反映した名目GDPが前期比0.3%増と実質GDPを3年ぶりに上回り、デフレ脱却が近いことがここでも裏付けられています。
 失業率はバブル崩壊後の長い景気低迷の中で、2003年1月には5.5%まで悪化、有効求人倍率も一時は0.5倍程度まで低下し、国民に大きな不安を与えました。
 しかし、景気が回復に向かい、企業業績が改善するにつれて雇用も拡大し、8月29日に総務省が発表した今年7月の失業率(季節調整値)は4.1%まで改善、完全失業者数は268万人に減少しました。有効求人倍率も今年2月には13年ぶりに1倍を超え、7月は1.09倍まで回復しました。
 このように日本経済は、景気回復の足取りが日増しに確かなものとなり、バブル崩壊から始まった長く暗いトンネルから、抜け出そうとしています。その要因として、リストラなどによる企業の再生への取り組みとともに、政府・与党による不良債権処理の断行や大幅な規制緩和をはじめとする改革、さまざまな政策の実施が実を結んだことが挙げられます。

Q
景気の先行きを考えると、原油高など不安材料もあるのでは。

A
原油価格の高騰は運輸、石油化学など直接的に影響を受ける産業のみでなく、多くの企業にコスト増大による収益悪化をもたらします。さらに、これまで好調が続いていた米国経済が減速期に入ったことも大きなポイントで、4―6月期のGDPでも項目別に見ると米国向けの減速による輸出の伸び悩みが明確に表れています。こうした世界的な経済状況の変化は、日本経済の今後にとって大きな不安定要因であることは間違いありません。
 一方、国内の構造的な問題として、今回の景気回復の流れの中では、企業の収益が大幅に改善しているのに比べ、家計の所得が伸び悩んでいるという状況があります。これは企業が依然として賃金の引き上げに消極的であったり、正規雇用を増やさないことなどによるもので、激しい国際競争を勝ち抜くため、人件費のコストを極力抑えたいという意識が企業に強く働いていることが原因です。

Q
家計部門の所得の伸び悩みは、景気の回復感が国民の間に浸透する妨げにもなっているね。

A
家計の所得増加による個人消費の拡大こそが息の長い景気を支える大きな柱となるだけに、企業部門の好業績を確実に家計部門に波及させていくことが重要な課題です。また、日本経済が再生への道を歩む中で、国民の間に所得の格差が広がり続けていることも見過ごせません。
 景気の先行きを考えると、ほかにも内外にわたってさまざまな課題や懸念材料があります。今後も長期にわたって景気の拡大を持続し、その恩恵を国民全てに行き渡らせるためにも、政府・与党が協力して不断に的確な経済運営を実施していくことが重要です。また、それを可能とする安定した政治的基盤が維持されることも大切だといえます。


公明新聞記事(H18. 9. 4)より転載