経済教室NO.21資源獲得競争の時代に

Q 原油価格の上昇が続いているね。わが国でもガソリンなど石油製品の値段が引き上げられ、経済活動や生活にも影響が出始めている。


A 原油価格は2002年以降、上昇を続けてきました。国際的な指標である米国産ウエスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)の近物価格は、最近では1バレル当たり70j台と、史上最高圏で推移しており、下がる気配はありません。
 しかし、国債商品市況を見ると、値上がりしているのは原油だけではありません。


Q
と言うと?

A
鉄鉱石や、銅、レアメタル(希少金属)などの非鉄金属、さらには穀物など、様々な商品の価格が高騰しています。
 代表的な国際商品指数であるCRB先物指数(1967年=100)は、01年末以来、ほぼ一貫して上昇を続けており、最近では、350台を突破。1980年の第2次オイルショックで記録した最高値を、26年ぶりに塗り替えることになりました【グラフ上】。
 国際銅価格は、1998年には1d当たり1500〜2000jだったものが、直近では同8000j台に跳ね上がっています。

Q
これら天然資源の価格高騰は、何によって引き起こされたのか。

A
表面的には市場に投機マネーが流入しているためと分析されています。しかし、その背景には、国際的な需給構造が大きく変化し、需給が逼迫していることを見逃せません。
 そこで、まず需要面ですが、いわゆるBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の急速な経済発展とおう盛な消費があります。
 エネルギーに関していえば、インドや中国などのアジア諸国が今世紀に入ってから需要を急増させています。今後も、その傾向は変わらず、国際エネルギー機関(IEA)は、30年には02年に比べて世界全体でエネルギー消費量が1.6倍になる中で、中国では2倍に増えると予測しています【グラフ下】。
 また、非鉄金属の主要産出国であった中国は、今や世界最大級の消費国となり、鉛、亜鉛、ニッケルなどは輸出から輸入へと転じています。

Q
では供給面の要因は何か。

A
過去約20年間にわたり価格の低迷が続いたため、供給側では減産をはじめ、新たな資源の開発や設備投資の手控えなどが行われました。
 原油に関しては、石油メジャー(国際石油資本)は、製品増産に必要な精油所建設にいまだ、積極的ではありません。資源については、資源メジャーの寡占化が進行し、価格支配力を強めることになっています。
 一方、イランの核開発問題やナイジェリアの反政府武装テロなどの“地政学リスク”が高まっていることも重要です。

Q つまり、エネルギーや資源の高価格は一時的現象ではなく、今後も続くとみるべきだね。

A
そうですね。こうした事態を指し「資源インフレ」の時代が到来したという識者もいます。
 ここで、見逃せないのは、国際経済に占めるエネルギーや資源の重要性を安全保障と絡ませて、国による資源獲得競争が激化していることです。
 特に供給国側で、資源を外交のカードとして使おうとしているのが、ロシアやベネズエラ、ボリビアといった南米の左派政権国。資源産業の国家管理強化を進め、影響力の拡大を図ろうとしています。
 一方、需要国側では、中国の動きが目立ちます。原油や天然ガス、鉄鉱石などの資源確保を目指して、積極的なトップ外交を展開しています。

Q
わが国の対応は?

A
日本はエネルギーだけでなく、非鉄金属も海外の資源に全面的に依存しています。その中には、液晶パネル用透明電極に使用するインジウムや、燃料電池の触媒として欠かせないプラチナなど、わが国の産業の将来にとって重要な物質が多く含まれます。従って、これらの安定的確保を図ることは重要課題です。
 エネルギーについて、政府は5月に「新・国家エネルギー戦略」をまとめました。特に、自主開発原油を現在の2.5倍に増やす目標を掲げ、資源獲得競争に乗り出すことを決めています。
 また、非鉄金属に関しても、6月に安定確保に向けた戦略をまとめ、探鉱開発や資源国との関係強化など、多面的な取り組みを進める考えを示しています。


公明新聞記事(H18. 8. 21)より転載