経済教室NO.20若年層の格差拡大問題

Q 経済的格差問題が、経済財政白書でも取り上げられていたが。


A そうですね。同白書によると、格差を示す代表的な指標であるジニ係数(0は格差がない状態、1に近づくほど格差が拡大)は、1980年代以降、緩やかに上昇し、所得格差が広がっています。その主な要因については「高齢者世帯比率の上昇という高齢化」として、“見かけ上の格差拡大”と分析しています。

Q
高齢化が進むと、なぜ格差が拡大するのか。

A
高齢者の所得には、若年時代から積み重ねてきた実績などが反映されるので、所得格差が大きい傾向があります。高齢者層自体のジニ係数は低下傾向にありますが、ほかの年齢層に比べて格差が大きいため、高齢者世帯比率が上昇すると全体のジニ係数を押し上げるのです。さらに、所得の少ない単身世帯の増加など家族形態の変化も格差を拡大させます。

Q
若年層がなぜ問題か。

A
所得の年齢階層別のジニ係数の動きを見ると、99年から2004年にかけて25歳未満でジニ係数の上昇が目立ちます<グラフ上参照>。また、年齢別の労働所得で見たジニ係数でも、20代、30代で格差拡大の度合いが大きくなっています。この点については高齢化では説明できず、90年代後半以降の“就職氷河期”と呼ばれた雇用情勢の悪化が反映している可能性が指摘されています。

Q
具体的には。

A
その時期に企業のリストラが加速しました。その影響でフリーター(15〜34歳の男性卒業者と未婚の女性卒業者でパート・アルバイトに従事している者、その希望者)やニート(非労働力人口のうち15〜34歳で家事・通学をしていない者)が急増しました。05年でフリーターは前年比13万人減りましたが、それでも200万人台の高水準です。
 フリーターを年齢別に見ると15〜24歳は97年以降、100万人強で推移していますが、25〜34歳は97年の49万人から02年には91万人へとほぼ倍増し、高止まりしています<グラフ下参照>。35歳以上の“中高年フリーター”も多くいると思われます。また、ニートは、93年の40万人から05年には64万人になり、やはり高止まり状態です。

Q 格差拡大の背景には、雇用形態の多様化があるということか。

A
そうです。パート・バイト、派遣社員、契約社員などの非正規雇用者は正規雇用者に比べ低賃金です。例えば厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、一般労働者の時間当たり賃金を100とすると、パート労働者の男性は50、女性は70程度の低水準の賃金で推移しています。
 05年の同調査では、初めてフルタイム一般労働者の賃金比較も行なっていますが、正社員(平均40.4歳)の平均賃金が月額31万8500円だったのに対し、短時間パートを除く契約、派遣、嘱託などの非正社員(同42.9歳)は19万1400円と約6割の水準でしかありません。こうした非正社員の場合、勤続年数を重ねても、ほとんど賃金に反映されないのが実態です。

Q
フリーターを長くやっていると、低所得層として定着する?

A
そういう恐れがあります。大卒男性の標準的な生涯賃金が約3億円であるのに対し、フリーターの生涯賃金は6000万〜7000万円程度とする試算もあります。放置すれば、将来的には固定的な富裕層と貧困層に二極化しかねません。
 少子高齢化、人口減少社会の下で、若年労働力は貴重です。フリーターでは職業能力を開発することが困難です。結果的に経済全体の生産性を低下させるだけではなく、年金などの社会保障制度も不安定になりかねません。

Q
親と同居したまま自立していない若者も増えているようだが。

A
国立社会保障・人口問題研究所が先月、発表した04年の世帯動態調査では、親との同居率の急上昇ぶりが浮き彫りにされました。特に際立っているのが30〜34歳の層で、5年前の前回調査より女性は10.2ポイントも増加し33.1%、男性は6.4ポイント増え45.4%になりました。親と同居し、その生活支援に依存している「パラサイト・シングル」が増加しているのではないかと見られています。

Q
努力すれば正社員になれるのでは。

A
内閣府の06年版国民生活白書によると、パート・アルバイトで働いている20代男性の85%、女性の52%が、10年後に正社員として働きたいと考えています。しかし、実際に正社員への転職を果たすことができる若者の割合は、4〜5%程度にすぎません。転職の“壁”になっているのは、新卒一括採用という慣行に加え、フリーター経験をマイナスに評価する企業側の課題が指摘されています。
 一方、若者側には、仕事を通じて自己実現を図ろうとする“自分探し”の面もあります。こうした多様なニーズに対応できる、きめ細かな施策が求められています。

Q
公明党の取り組みは。

A
本格的な若者の自立支援策の突破口を開いたのは公明党です。03年5月、当時の坂口力厚労相(公明党)が私案として「若年者自立支援プラン」を発表。それが政府の「若者自立・挑戦プラン」に反映され、支援策が次々に実施されてきました。
 若者の就職相談から能力開発、職業あっせんまでを一カ所で行う「ジョブカフェ」、企業実習と教育訓練を並行して実施する「日本版デュアルシステム」などにより、フリーター22.5万人の常用雇用化を実現(目標20万人)するなど成果を挙げています。合宿形式でニートの生活・職業訓練を行う「若者自立塾」の拡充も進んでいます。


公明新聞記事(H18. 8. 7)より転載