経済教室NO.18日銀ゼロ金利政策を解除

Q 今回の変更で、新たな金融政策はどのようになったのか?

A
まず、これまで実質ゼロ%に抑えられていた市場の短期金利の誘導目標を0.25%に引き上げました。これは、銀行間で担保無しに融通し合い、当日借りて翌日返す場合の金利で「無担保コール翌日物金利」と呼ばれています。この金利を動かすことで、中長期の市場金利や預金、貸し出しなどの金利も上下するため、日銀が金融調節の手段として使っています。
 日銀は、この短期金利を2001年3月から、実質ゼロに抑える「ゼロ金利政策」を取り続けてきました。これはデフレで日本経済が極めて厳しい状況に陥る中、資金調達を容易にして企業活動の活発化を図り、景気を下支えする必要から行われたもので、金融政策上は極めて異例ともいえる措置でした。今回、ゼロ金利の解除によって、約5年4カ月ぶりに、金利の上げ下げによって景気などの調節を図る通常の金融政策が復活することになります。
 また、今回の変更では、銀行などが補完的に日銀から資金の融資を受ける際の金利である「公定歩合」も0.1%から0.4%に引き上げられました。


Q
この時期にゼロ金利を解除した理由は?

A
景気の回復が続く中で、日銀は今年3月に5年間にわたって続けてきた金融の量的緩和政策を解除、金融調節の手段を資金量から金利に戻した上で、ゼロ金利解除のタイミングを計ってきました。
 今回、解除を決定したのは、5月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)が7カ月連続でプラスを記録し、深刻なデフレに逆戻りする危険がほぼ解消したと見られることや、景気の先行きも息の長い成長が見込まれると判断されたことによります。
 景気の減速やインフレ懸念が伝えられる米国経済の状況、北朝鮮のミサイル発射問題、国内の株価の動向など、さまざまな要因についても併せて検討が行なわれ、決定が下されました。
 また、景気の回復が続く中で、このままゼロ金利を続ければ、景気が過熱して逆に経済に混乱を招くというリスクもゼロ金利解除の判断材料になりました。

Q 金利引き上げは、これから繰り返し実施されるのか。

A 日銀の福井俊彦総裁は決定後の記者会見で「極めて低い金利水準による緩和環境が続く可能性が高い。連続利上げは意図していない」と述べ、追加利上げを否定。当面は、現状の超低金利政策を継続する考えを示しています。
 これは金利の上昇によって、景気に悪影響を与えることを避けるためで、先行きの金利水準の調整についても、「経済物価情勢を丹念に点検しながら、徐々に水準を調整する」と慎重な姿勢を示しました。
 日銀は00年8月、政府・与党の反対を押し切ってゼロ金利を解除したことがありますが、同年秋以降、IT(情報技術)バブルの崩壊で景気が急速に減速し、わずか7カ月で再びゼロ金利に戻しました。この時、日銀の判断は拙速だったとの強い批判を浴びましたが、こうした事態をまた繰り返すことは許されません。
 景気が順調に回復し、消費者物価も上昇傾向を見せているとはいえ、日本の経済は数多くの不安定要因も抱えています。政府・与党と日銀の連携のもと、より一層、的確な運営が求められるところです。

Q
ゼロ金利解除は、国民生活にどのような影響を与えるのか。

A
日銀の決定を受けて、市中のさまざまな金利が引き上げへ動き出しています。このうち三菱東京UFJ、みずほ、三井住友の大手3行はこれまで0.001%だった普通預金の金利を0.1%に引き上げました。ゼロ金利のもとでは、100万円を1年間預けても、税引き前でわずか10円にすぎなかった利息が、100倍の1000円になるわけで、預金者にはちょっぴり朗報だといえます。
 同様に定期預金の金利も3カ月物で0.04―0.08%程度上昇。生命保険なども今後、予定利率が引き上げられたり、保険料が引き下げられられる可能性があります。
 一方、銀行から借り入れをする際の利率も上昇します。すでに上昇傾向にある住宅ローン金利は8月以降も引き上げられる可能性が高く、最近では固定金利型のローンを選択する人が増えています。お金を預ける場合も、借りる場合も小まめに金利を確認し、必要に応じてローンの切り替えなども考える必要がありそうです。


公明新聞記事(H18. 7. 24)より転載