経済教室NO.17農業の構造改革めざす

Q 農政改革関連法の成立で何が変わったのか。

A
2007年産から新たに「品目横断的経営安定対策」が実施されることになりました。これに併せてコメの生産調整支援策も見直されます。また、来年度から「農地・水・環境保全向上対策」(仮称)が導入されます。関連した3つの政策の軸になるのが経営安定対策です。

Q
なぜ、経営安定対策が必要になったのか。

A
従来、農作物の品目別に全農家に対し一律的に補助金が交付されてきましたが、農地・農家の減少、耕作放棄地の増大、農業従事者の高齢化といった構造的な問題が解消されていません。農業・農村の“総崩れ”が懸念される一方で、食料自給率はカロリーベースで40%と欧米諸国に比べ極端に低い水準で推移しています。

Q 国際的にも品目別の支援が難しくなった・・・・。

A
世界貿易機関(WTO)のウルグアイ・ラウンドにおける農業合意では、各国の国内支持(国内農業に支払われる補助金や価格支持政策)について@貿易や生産に影響がないか最小限と認められる「緑」の政策A生産調整を伴う直接支払いのうち特定の要件を満たす「青」の政策Bそれ以外のすべての国内支持政策で貿易に影響を及ぼす「黄」の政策―に分類し、「黄」が削減の対象とされました。日本の品目別支援策は「黄」に該当することから、国際規律の厳格化に対応できる、「緑」の政策を軸にした農政への転換が求められていました。

Q
経営安定対策のポイントは。

A
「バラマキ」との批判が強かった品目別の価格支持から、担い手に限定した品目横断的な経営安定対策に転換します。担い手と位置付けられたのは、市町村が認定した認定農業者と一定の条件を備えた集落営農です。

Q 認定農業者とは。

A
認定農業者とは、市町村がそれぞれの基本構想に照らして農業者が作成した農業経営改善計画を認定する制度です。経営改善計画には、作付面積など経営規模の拡大や機械・施設の導入など生産方式の合理化等の目標を盛り込みます。認定を受けると、低利融資制度、農地流動化対策などの支援施策の対象になります。06年3月末現在で法人を含め約20万1000の経営改善計画が認定されています。認定農業者のうち担い手となる要件は、営農規模が北海道で10f以上、都道府県で4f以上です。中山間地域などの実情に配慮して、規模要件の特例も設けました。

Q
集落営農とは。

A
地縁的にまとまった一定の地域内の農家が共同で行なう営農活動のことです。全国に1万63(05年)の集落営農があります。地域の農用地の3分の2以上の利用集積を目標とし、組織の規約作成や経理の一元化などの要件を満たせば、担い手になることができます。

Q 経営安定のための支援措置の内容は。

A
2つあります。1つは、国民へのカロリー供給で重要な役割を果たし、ほかの農産物と組み合わせた生産が行なわれている麦、大豆、テン菜、でん粉用バレイショの4品目を対象に、諸外国との生産条件の格差(生産コストのうち販売収入では賄えない部分)を補正するための交付金です。コメは関税などの国境措置で諸外国との生産条件格差が是正されているので除外されています。担い手の収入にゲタをはかせることから「ゲタ対策」と呼ばれています。農業経営体の過去の生産実績と毎年の生産量・品質を基に格差を補います。

Q
もう1つは。

A
収入減少による影響を緩和するための交付金です。これは先の4品目とコメが対象になります。天候不良などで作物が収穫できなかった場合に、その年の減収額の9割を補てんする支援措置で、農家収入の変動幅を抑えることから「ナラシ対策」と呼ばれています。
 対象にならない野菜、果樹、畜産については、引き続き品目別に対策が講じられます。

Q 「農地・水・環境保全向上対策」の意義は。

A
これは、農業者だけでなく地域住民らが参画した活動を支援する地域振興政策と位置付けられ、経営安定対策と“車の両輪”をなすものです。具体的には、農地・農業用水など環境の保全や向上に取り組む共同活動への基礎的支援を行ないます。その上に、基礎的支援が実施されている地域で、化学肥料や農薬の使用量を大幅に減らした先進的な営農活動も別途、支援の対象になります。これらの活動をより高度な取り組みへ誘導する促進費も交付される方向です。

Q
今後の課題は。

A
まずは、競争力のある担い手の育成に全力を挙げますが、日本農業の現状は楽観を許しません。支援対象にならない小規模農家の動向や食料自給率の変化などを注視しなければならないでしょう。中川昭一農水相は「政策効果をしっかり検証し、必要に応じて適切な見直しを検討していく」と表明しています。


公明新聞記事(H18. 7. 3)より転載