経済教室NO.14新会社法施行

Q まず、「会社法」とは何か?

A これまで「会社法」という名称の法律があったわけではなく、商法第2編や有限会社法、商法特例法などを総称し会社法と呼んでいました。今回、これらを統合して「会社法」という新しい法律にまとめました。
 会社の機関設計や運営のルールをはじめ、資金調達や利益配分といった関係者間の利害調整、設立や組織再編などを定めた法律で、いわば会社の基本法≠ナす。

Q 主な内容は?

A カタカナ表記の文語体を分かりやすい現代的な表記に改めたほか、有限会社を株式会社へ一本化したり、資本金1円での設立を制度化し起業を容易にするなど、改正点は多岐にわたっています。企業の買収・合併(M&A)を促進する一方、買収防衛策の整備なども盛り込まれました。
 経営のグローバル化など、最近の社会経済情勢の変化に対応するため、近年、商法の改正が重ねられてきましたが、会社法はその総仕上げと位置づけられます。

Q 企業経営には、どのような影響が考えられるか。

A 大きなポイントとなるのは、経営の自由度を拡大したことです。つまり、細かい点まで法律で縛ってしまうのではなく、それぞれの会社にふさわしい仕組みやルールを「定款」に定めることによって、自由で迅速な経営を行えるように配慮しています。こうした考え方は、「定款自治」と呼ばれます。

Q 具体的には?

A 会社が上げた利益の配分(配当)は従来、株主総会での決定事項でした。会社法の下では、取締役の任期を1年にするなどの条件を満たした会社は、定款に定めれば、配当の金額や回数を取締役会で自由に決められるようになりました。これまで配当は年2回までの制約がありましたが、欧米で一般的な四半期配当が普及する条件が整ったわけです。
 企業合併や分割など、組織の再編も容易になります。

Q というと?

A 小規模な会社と合併する場合、相手会社の資産規模が5%以下であれば総会決議は不要、というのが従来の規定でした。会社法は、この資産規模比率を20%まで引き上げました。
 このほか、会議を開かずに持ち回りの書面やメールによって、取締役会の決定をすることもできるようになりました。

Q これらは、どういう意味があるのか。

A 経営のスピードを上げ、会社の競争力を高めることが目的です。地球的な規模で企業間競争が激化している中、迅速な意思決定と素早い実行が、これまで以上に求められるようになっているからです。

Q しかし、あまり自由度が拡大すると、経営者はステークホルダー(企業を取り巻く関係者)の利害に反したり、法令や社会倫理を軽んじたりしないだろうか。

A そのために、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を図ったのが、会社法のもう一つのポイントです。
 これまで取締役の解任には、株主総会で特別決議(出席者の議決権の3分の2以上の賛成)が必要でしたが、会社法は普通決議(同2分の1以上の賛成)で可能にしています。
 また、株主代表訴訟では、株主からの提訴請求に会社が応じない場合には、会社はその理由を説明する義務を負うことになりましたし、会計監査人(監査法人)が株主代表訴訟の対象に加えられました。再三指摘されている、なれ合い体質の改善が期待されます。
 一方、取締役は不祥事を防ぐため、内部統制システムの構築と報告を義務づけられました。

Q どういうことか?

A 役員や社員が法令を守り、損失のリスクなどを管理する体制についての基本方針を、取締役会で決め、株主に開示・報告することが求められているのです。
 一方、社外取締役の兼務状況や、そことの取引関係なども公開することになっており、総じて、株主への情報開示が進むものと思われます。

Q 「日光は最良の消毒薬」というからね。

A ただし、企業統治は、単に不祥事防止という目的だけでなく、今日では企業の競争力強化に役立つという視点が鮮明になってきていることを強調しておきます。
 日本経団連の奥田碩会長は企業統治について「企業が競争力を失ったり、行動が正常でなくなったりする時に、これを感知して機動的に問題点の解消や企業行動の修正を行うこと」と述べています。
 国際的には、企業統治の確立は、企業の競争力、ひいては国の経済成長とも結びつけられて考えられています。このような意味で新しい会社法を十分に機能させていくかは、これからの大きな課題といえましょう。

公明新聞記事(H18. 5. 15)より転載