経済教室NO.9注目される長期金利の動向

Q 新聞などで長期金利の動きがよく話題に上るが、長期金利とはどういうものか。

A 金利は貸し借りなどをする期間によって長期と短期に大きく分けられており、期間が1年未満の金利を短期金利、1年以上の金利を長期金利といいます。
 長期金利は通常、10年物国債(満期までの期間が10年の国債)の流通利回りが最も代表的であり、長期金利の基準になるものです。住宅ローンの金利や銀行が企業に融資する際の金利を決める目安になっています。
 国債は、国が資金を調達する時に、借り入れ証書として発行する有価証券のことです。通常、額面100円で発行され、券面に表示されている利率で利子が支払われますが、発行された後は流通市場で売買され、株式と同様に需給関係で価格が決まります。国債の需要が高まり、国債の価格が上昇すると金利は下落します。反対に国債の買い手が減り、価格が下落すると金利が上昇します。

Q 国債の価格と利回りは、なぜ逆の動きになるのか。

A 10年物国債(額面価格100円、表面利率2.0%)を例にとり、大まかに見てみます。仮に、国債相場が100円であれば、毎年2円の利息を手にするとともに、満期には100円の元本が戻ります。運用利回りは100円投資して1年で2円の収益なので、2.0%になります。
 その国債相場が95円に値下がりしている時に購入すると、毎年2円の利息のほか、満期時には100円で戻るため、購入価格との差額5円の値上がり益を得ることができます。利息2円とともに、値上がり益5円を10年で割った0.5円を加え、年間2.5円の収益になります。運用利回りは95円を投資して1年で2.5円の収益なので、2.5円を95円で割ると、2.6%になります。
 逆に、国債相場が105円に値上がりしている時点で購入すると、毎年2円の利息は前の二つの例と同様ですが、満期時には100円しか戻らないため、購入価格105円との差額5円の値下がり損を被ります。年間2円の利息がありますが、値下がり損5円を10年で割った0.5円が引かれ、1.5円に。運用利回りは105円を投資して1年で1.5円に収益なので、1.5円を105円で割ると1.4%になるという具合です。
 さらに、長期金利は物価変動や短期金利の推移に関する予想に大きく左右されます。物価安定予想が支配的な時の方が、国債などの債権がよく売れて高い値段が付き、長期金利は低くなります。逆に、物価が継続的に上昇しインフレ予想がある時は、債券が売れないので値が低く、長期金利は高くなります。


Q 長期金利はなぜ注目されるのか。

A 長期金利は株価同様に、景気回復のバロメーターとなっており、経済活動が低調なら低くなり、活発なら高くなる傾向があるからです。
 実際、日本は1990年代初頭にバブル崩壊して以降、長期金利は下降局面をたどり、90年の7%前後から03年6月には一時0.430%まで低下しました。
 一方で、景気の先行きに対する懸念から、安全資産として国債の人気が高まり、国債が買われるので市場の価格は上がり、さらに長期金利を低迷させる状況が続いてきた経緯があります。

Q 最近、長期金利が上昇傾向にあるというが。

A 今日の景気回復を受けて、日本銀行の量的緩和政策の解除(3月9日)に債券市場が反応していると指摘されています。
 量的緩和とは、金利ではなく金融機関の資金の「量」を目標にする金融政策で、日銀が2001年3月から導入。市場への大量の資金供給を通じて企業などへの貸し出しを促し、経済の活性化を下支えしてきました。ただ、量的緩和は異例の政策であり、物価プラス基調が鮮明になるなどの解除条件を踏まえ、日銀は政策の変更を判断したわけです。
 市場では解除前後から、長期金利は上昇傾向にあります。これを受け、銀行では3月下旬から、1年物以上の定期預金の金利を引き上げる動きが広がりつつあります。

Q 長期金利の上昇によるマイナス面は。

A 個人にとっては、住宅ローンなどの借り入れがしにくくなり、消費が減退する恐れがあります。企業では、銀行の借出金利が高くなるので、資金の調達が難しくなり、設備投資などが鈍ります。「長期金利が1%上昇すれば、企業の経常利益を3.7%押し下げる」(第一生命経済研究所)との試算もあります。過度の上昇は景気回復に水を差すことにもなりかねません。
 さらに、国債は国の借金なので、金利が上昇するとそれだけ支払う利息が多くなり、財政赤字が膨らむことになります。

Q 長期金利の推移が気になるね。

A 日銀の政策運営は金利に軸足が戻りましたが、当面はゼロ金利政策を継続する方針です。併せて、中長期的に見た物価上昇率(物価の目安)として、消費者物価指数の前年比伸び率で「0―2%程度」という範囲を示しています。今後、インフレに先んじて金利だけが急騰するような局面を防ぐには、金融政策における慎重なカジ取りが求められます。

公明新聞記事(H18. 4. 3)より転載