経済教室NO.8量的緩和解除と日銀金融政策

Q 日銀の金融政策の目的は、どのようなところにあるのか。

A 一言でいうと、経済の健全な発展を目指す上で欠かせない物価の安定化を図ることです。日銀は日々、民間金融機関との間で国債などの売買い(公開市場操作=オペレーション)を行い、市中に出回る資金量や、民間金融機関同士の融資における短期金利を調整しています。
 例えば、物価が上昇傾向(インフレーション)にある場合、消費者の多くが物を買うことを控えるので、日銀は物価の下落を目的に「売り」(売りオペ)を実施し、資金量の減少や、それに伴う金利の上昇を促します。
 一方、物価が下落し続ける局面(デフレーション)では、企業収益が悪化し、景気が後退する恐れがあります。
 そこで日銀は、物価の下落を抑えようと「買い」(買いオペ)を活発化させ、大量の資金供給を行います。「買いオペ」により、民間金融機関の手元資金が増え金利も下がることから、企業への融資が実施しやすくなり、経済の活性化につながる効果が期待できます。

Q これまでは、どのような金融政策が講じられてきたのか。

A 1990年代初頭のバブル崩壊以後、日本経済では長期間、デフレが続いていたため、日銀は99年2月、金利を0%に据え置く「ゼロ金利政策」を導入。その後、2000年8月にゼロ金利政策を解除しましたが、景気が失速し、金融不安が高まりました。このため、01年3月には、金融危機を回避し、デフレを緩和するための“非常手段”として、ゼロ金利よりさらに異例の「量的緩和政策」の実施に踏み切った経緯があります。
 これは、「金利」ではなく、民間金融機関の手元の「資金量」を示す日銀の当座預金(民間金融機関が日銀に開く当座預金口座)の残高を調節対象とする金融政策に変更したものです。
 量的緩和導入以前の資金量の目安は、所要準備額(民間金融機関が日銀に預けなくてはならない最低預金額)である6兆円前後でしたが、量的緩和政策では、最終的に30兆〜35兆円までに引き上げられました。この政策目標の達成に向け、日銀は民間金融機関に必要以上の資金を供給し、企業融資の円滑化などを促してきました。
 しかし、量的緩和は世界に例を見ない金融政策で「異例の枠組み」(福井俊彦日銀総裁)といわれており、物価の上昇とともに解除の時期が注視されていました。


Q 先日、量的緩和政策がついに解除されたが。

A 日銀が量的緩和政策を解除する際の条件としていた消費者物価指数(生鮮食品を除く)の安定的プラスが実現したと判断したためです。
 物価は、消費者の需要の高まりによって押し上げられるので、指数の上昇は、そのまま上向きな景気の状態を表し、指数の低下は、需要の冷え込みによる景気の悪化を意味します。
 3日に発表された1月の指数は、前年同月比で0.5%の上昇となり、これで前年比プラスが3ヵ月連続、0%以上も4ヶ月連続となるなど、最近は物価の上昇傾向が顕著になりつつあります。
 
Q 今後の金融政策の方向性は。

A 日銀は、量的緩和政策の解除を決定すると同時に、今後の金融政策の方針を提示しました。
 ここでは、政策運営の基準を平常の「金利」に戻すものの、金融政策の転換による経済の混乱を避けるため、当面は金利を「概ね0%で推移するよう促す」と、ゼロ金利政策の継続を表明。また、市場動向の指針として焦点となっていた今後の物価水準の目安については、「消費者物価の前年比で0〜2%程度、中心値は、大勢として、概ね1%の前後」との見方を示しています。
 今回の措置により日銀は、当座預金残高を数ヵ月間で6兆円程度にまで削減していく方針ですが、解除による金融市場の不安定化を考慮して、現在実施している長期国債の買いは当面維持し、急激な金利の上昇を抑えることとしています。

Q 政府・与党の反応はどうか。

A 日銀の量的緩和政策の解除を受け、小泉純一郎首相は、「十分に議論した上での結論だから尊重する」と表明。また、公明党の冬柴鉄三幹事長も、「(デフレ脱却について)専門家の政策委員が結論を出したのであるから、その判断を尊重したい」と述べています。

Q 今後の課題は。

A 回復基調にある日本経済ですが、デフレから脱却したとはまだ、いえない状況です。再び深刻なデフレに戻らないよう、政府・日銀が一体となって、経済運営に取り組むことが求められています。
 また、いまだ景気回復の恩恵を十分に受けていない中小企業にとって、量的緩和の解除による金利の上昇は、融資の円滑化を阻む大きな障害となります。この観点から、公明党の井上義久政務調査会長は13日の政府・与党連絡会議の席上、「中小零細企業にお金が回ってこないとの不安を与えないように、きちんとしたメッセージを出すべきだ」と訴えています。
 一方、市場では早くもゼロ金利の解除を見据えて、住宅ローンなどの金利が上昇傾向にあります。このため、日銀は国民生活への影響を念頭に置いた慎重な金融政策を講じる必要があります。

公明新聞記事(H18. 3. 20)より転載