経済教室NO.6進む地方債制度の改革

Q 4月より地方債の起債の仕組みが変わるそうだが。

A 地方債は本来、地方自治体の自主性と責任によって発行すべきものです。しかしこれまでは、地方債の発行には、総務相(都道府県の場合)や都道府県知事(市町村の場合)の同意が必要でした。
 2000年4月施行の地方分権一括法は、この「地方債許可制度」を廃止して「協議制度」に移行することを定めており、それが06年度より実施されるのです。これによって地方自治体は、国などの許可がなくても、自治体議会へ報告の上で、地方債の起債を行うことが原則として自由になります【図参照】。
 ただ例外的措置として、赤字比率や実質公債比率が一定水準を超える、財務内容の悪い地方自治体が地方債を発行する場合は、従来通り許可を受けなければなりません。

Q 協議制度は、地方自治体にとってどんな利点があるのか。

A 従来の制度に比べて、地方自治体が事業の資金調達を国などの関与を受けずにできるなど、より自主性を発揮する財政運営が可能となります。その一方で、地方自治体の事業の妥当性や財務内容の健全性が、市場の評価にさらされることになり、より責任のある行財政運営が求められるでしょう。

Q こうした制度見直しの背景にあるものは?

A まず、許可制度そのものの問題です。国などの同意という制約がある一方、国は地方財政計画の中で地方債の引き受け手を決め、さらに地方交付税の配布によって将来の元利償還まで面倒を見ています。「暗黙の政府保証」を行っているのも同然です。
 このため、地方自治体側には財源を効果的に使うとか、放漫な財政運営に歯止めをかけるという財政規律が働きません。このような仕組みの中で、バブル崩壊後の景気対策を、地方に担わせてきたこともあり、地方債残高は1990年代以降急増し、2004年度末で142兆円にも及んでいます【グラフ参照】。
 吉川洋・東大大学院教授は、「地方債とは名ばかり。国が最終的に面倒を見てくれるから国債のようなものだ」と問題点を指摘しています。
 また、国の財政状況が深刻化していることも背景にあります。自らの財政再建のために、もはや地方のしりぬぐい≠している余裕がなくなってきたということです。
 その観点からみれば、地方債だけでなく、「三位一体の改革」で議題になっている地方交付税なども含めた、地方財政制度そのものの見直しが迫られているといえるでしょう。
 
Q これまでも地方債制度をめぐっては、新たな取り組みが進められてきたが。

A まず、地方債の引き受け主体ですが、財政投融資改革によって公的資金への依存が低下する一方で、民間資金、なかでも市場公募の占める比重が高まっています。
 01年度には公的資金による引き受けが59%、民間資金が41%(うち市場公募10%)でしたが、06年度は公的資金38%、民間資金62%(同25%)。市場公募債を発行する地方自治体は、投資家向け広報(IR活動)を活発に展開しています。
 また、「シンフォニーホール建設」「健康福祉施設の整備」など、使途を明示して資金を募る「住民参加型ミニ市場公募債」も02年の導入以降、多くの地方自治体によって発行されています。さらに、各地方自治体の信用力を地方債の利率に反映させたり、共同で地方債を発行する試みも行われています。
 これらは、地方債に市場メカニズムを反映させる取り組みとして評価できます。

Q 協議制度導入後の地方債制度の課題は?

A 協議制度への移行は、財政規律強化へ向けた一歩前進ですが、同意(許可)のある地方債には公的資金が充当されるなど、「暗黙の政府保証」は残っています。
 例えば、財務内容の改善に努力した地方自治体が自己責任で資金調達する一方、努力を怠った不健全な地方自治体に、政府が保証を与える矛盾をどう解消していくか問われます。引き続き財政規律を向上させる取り組みが実施されるべきです。
 その一方で、財政力の弱い地方自治体の資金調達を支援する信用補完などの仕組みの構築も大切です。
 さらに、民間、なかでも市民の引き受け手を増やすことも重要で、そのためには財務情報の開示内容の充実が課題です。
 現在、総務省の懇談会で、地方自治体の破たん法制整備とともに地方債制度の見直しも検討されており注目されます。


公明新聞記事(H18. 3. 13)より転載