経済教室NO.5消費者物価が上昇傾向に

Q 消費者物価指数が、昨年末に3ヵ月連続して0%以上になったようだが。

A 総務省が1月27日に発表した昨年12月の全国の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は2000年を100として98.1となり、前年同月比で0.1%上昇しました。
 原油価格の高騰や寒さの影響で灯油が前年同月比で21.1%と大幅に値上がりしたほか、レギュラーガソリンも7.9%上昇。さらに、介護サービス料金やバッグ、腕時計などの身の回り品、衣類なども価格が上昇しました。
 消費者物価指数は1998年度に前年度比でマイナスになって以来7年連続で下落が続いてきましたが、昨年10月に前年同月比が0%になったのに続き、11、12の両月はいずれも0.1%の上昇を記録し、3ヵ月連続で0%以上が続いています。
 3月3日に発表される1月の指数は0.4―0.5%とさらに上昇幅が拡大するとの予想が支配的です。日銀は2005年度全体を通しても0.1%、06年度は0.5%の上昇を予測しており、06年度中にデフレからの脱却が実現すると見ています。

Q 消費者物価指数というのは、どのように算出されているのか。

A 消費者物価指数は、全国の世帯が購入する商品やサービスの価格の動向を示すもので、総務省が毎月発表しています。物価は景気が上向きになると需要が高まるため上昇し、景気が冷え込むと下降する傾向があります。このため、消費者物価指数は経済の実態を表す物差しとされ、経済政策を決定、運営する上で重要な役割を果たしています。
 実際の調査は、代表的な商品やサービス598品目を選んで行われていますが、消費動向の変化を反映するために、原則として5年に1度、対象品目の入れ替えが行われています。総務省は「総合指数」と「生鮮食品を除いた総合指数」の2種類の数値を発表していますが、生鮮食品は天候などによる価格変動が大きいため、生鮮食品を除いた総合指数が活用されるのが一般的です。
 また、消費者物価指数とは別に、日銀が企業間の取引商品の価格動向を示す企業物価指数を毎月発表していますが、同指数はすでに04年度から前年度比プラスとなっています。


Q なぜ物価が上がることが、景気にとって好ましい現象とされるのか。

A 日本経済は長期にわたって物価が下降するデフレ状態が続いてきました。物価が下がることは消費者には都合がいいように見えますが、企業にとっては利益が上がらない上に、デフレになっても以前からの借入金の利息は下がらないので、借金の負担が重くのしかかることになります。
 こうしてデフレの状態では経済活動が停滞し、勤労者の賃金も低下することになり、消費者の購買力が落ちて、物価をさらに押し下げるという悪循環に陥りがちです。したがって、物価は安定して緩やかに上昇していくことが、経済にとって望ましいというわけです。
 
Q 消費者物価の上昇にともなって、金融政策の変更が取りざたされているが。

A 日銀は深刻なデフレに歯止めをかけるため、01年3月から金融調節の指標をそれまでの「金利」から「資金量」に変更し、市場に豊富な資金供給を行う量的緩和政策を実施してきました。
 量的緩和政策を解除する条件として日銀は、消費者物価の上昇率が安定的に0%以上になることなどを挙げていますが、すでに3ヵ月連続して上昇率が0%以上を記録していることから、日銀などでは、1月の指数も見た上で、今春にも量的緩和政策を解除すべきとの考え方が高まっています。
 しかし、最近の消費者物価指数の上昇は原油価格の高騰によるところが大きい上に、4月からは電力料金や診療費の引き下げが予定されています。
 さらに、8月に実施される消費者物価指数の調査対象品目の入れ替えで、指数が押し下げられるとの予想もあり、今後も安定的に上昇が続くのか、疑問だとする見方も少なくありません。
 また、総合的な物価の動向を示す指標とされているGDP(国内総生産)デフレーターは、今月17日に発表された昨年10―12月期で前期比マイナス1.6%と逆に下げ幅を拡大していることもあり、政府・与党内には、依然としてデフレ傾向が続いているとの認識があります。
 このように物価といっても、用いる指標によって動向判断がかなり異なります。量的緩和政策の解除のような重要な政策変更は、タイミングを間違えると経済に大きな打撃を与えかねません。決定に当たっては、これらの指標を総合的に勘案し、デフレに後戻りする懸念が完全に払拭されたことを確認した上で、慎重に判断を下すことが求められています。

公明新聞記事(H18. 2. 27)より転載