経済教室NO.3経済格差は広がっているのか

Q 最近、わが国の経済格差や所得格差が広がっている、という議論をよく聞くが。

A 人々や企業を「勝ち組」と「負け組」に分けたり、格差を論じた本が売れるなど、国民の間でもこの問題に対する関心が高まっています。

Q 実際に、経済格差は広がっているのか。

A 国民全体の不平等の度合いを示す指標として、「ジニ係数」があります。0から1までの値をとり、1に近づくほど不平等度が大きくなります。総務省が2002年に公表した調査によれば、わが国の可処分所得(当初所得から税金や社会保険料などを控除した所得)のジニ係数は1980年代半ば以降、緩やかながら増加を続けています【グラフ右】。他の政府統計や研究者による調査でも、数値のばらつきはありますが、同様の傾向が現れています。

Q それは不平等が年々、大きくなっているということか。

A ジニ係数増加だけで、わが国もすでに格差社会に突入したという主張をする人がいますが、そこまで言い切れるかは疑問です。所得格差が広がっている主な原因は、高齢化が進んでいるためという分析もあるからです。
 大半が年金収入に頼る高齢者は所得が少なく、世代内の経済格差は他の世代よりも大きくなっています。こうした高齢者の人口比率が高まることにより、格差が広がったというのです。一方、所得の少ない若者層の単身世帯の増加も、格差拡大の一因といわれています。
 これら見かけ上の格差≠除けば、わが国では全般的には、緩やかに格差は広がっているものの、急速に不平等化しているとまではいえないでしょう。先進諸外国と比べても、所得格差はほぼ中位にあります。

Q ただ、国民の間には、統計に表れているよりも、格差が拡大しているという感覚がある。

A 確かに、各種の意識調査には、そうした不安が示されていますね。
 それは、現実の緩やかな格差拡大に加えて、給与体系の年功賃金から成果主義給与への転換や、正規雇用を減らしてパートや派遣社員など非正規雇用を増やす企業の姿勢から、将来の格差拡大の動きを予測する側面もあるのでしょう。
 さらに、フリーターやニートの社会問題化も、そのような実感を強めているものと思われます。

Q これらをどのように見るべきか。

A 一般的に、ある程度の格差があっても、それが理にかなっており、努力や挑戦によって所得階層を上昇できる可能性が十分あれば、人は希望を持つことができます。問題は、どんな頑張りにもかかわらず格差が固定化されてしまうことや、最初から均等な機会を与えてもらえないことです。
 こうした不条理な問題は、現段階では若年層で顕著に現れており、見過ごせません。

Q それはどういうことか。

A フリーターなど非正規雇用の固定化が進んでいることです。内閣府の03年の調査によれば、学校卒業時にフリーターだった人が、調査時点においても半数以上おり、正社員になった者は3割でしかありません【グラフ右】。また、フリーターからの離脱は年々難しくなってきています。こうした傾向は他の調査でもほぼ同じで、今やフリーターの中高年化が新たな問題になっています。
 正社員とフリーターの賃金格差は大きく、ある民間調査機関の試算では、大卒者の生涯賃金は正社員2億3200万円に対し、フリーターは6300万円。経済的理由からフリーターの未婚率は高く、少子化の一要因になっているとの見方もあります。
 一方、親の世代からの資産相続の有無によって、若年層の格差が拡大しているという分析も、研究者によって示されているところです。

Q どのような対策が必要になるのか。

A 格差是正には、セーフティネット(安全網)づくりが課題ですが、フリーターなど非正規雇用の固定化は、若者層の二極分化だけでなく、いずれは社会階層の固定化へと発展していく懸念があります。
 学校卒業時の就業状況だけで将来が決まってしまうのではなく、再挑戦できる機会をつくっていくことが何よりも求められます。そのためには、正規雇用へのチャンスを与えるトライアル雇用の拡充や、非正規雇用の拡大にインセンティブ(誘因)を与えていける現行の労働法制の見直しなどが必要でしょう。
 また、資産相続の有無によって人生のスタート地点から大きな差がつくことも、機会均等を図る上で好ましくありません。税制による資産格差の是正も検討すべきでしょう。さらに、不平等は階層や教育によって再生産される側面もありますので、さらに、これらの観点から幅広い研究が望まれます。

公明新聞記事(H18. 2. 6)より転載