経済教室NO.2ライブドア急成長戦略に捜査のメス

Q 買収の発表が、なぜ偽計取引に当たるのか。

A 実はバリュー社がマネー社買収の発表を行う以前の同年6月、ライブドアが別の関連会社を通して実質的に支配している投資事業組合が、既にマネー社の全株式を取得していたことが明らかになっています。バリュー社はその事実を隠して、新たにマネー社を買収したかのように装い、自社の株価をつり上げようとしたと見られているのです。
 さらに、バリュー社は買収を発表した直後の同年11月に、1株を100株に分割する株式分割を実施すると発表。虚偽の買収発表で値上がりしていたバリュー社の株式はさらに急騰し、12月には買収発表前の株価の45倍以上にも値上がりしました。
 株式交換による買収で、バリュー社は増資した新株1600株をマネー社に提供しましたが、その株式はマネー社の100%株主である投資事業組合が売却、7億円ほどの利益はライブドア本体に還流しています。またライブドア自身も05年1月から2月にかけて保有していたバリュー社株の一部を売却し、47億円の収入を上げています。ライブドアは投資事業組合を利用した買収と、虚偽の買収発表、さらに株式分割という手法によって、巨額の利益を得ていました。
 ライブドア本体についても、04年9月期決算で複数の関連会社の利益を付け替えて赤字を黒字に粉飾したり、企業買収に絡んで偽計取引を行ったなどの疑惑が浮上しています。

Q 株式分割は、どうして株価高騰につながるのか。

A 株式分割は1株を何株かに分割することで、1株当たりの価格が高くなりすぎた場合に、投資家に株を買いやすくするため実施するのが一般的です。理論的には、1株を100株に分割すれば、1株当たりの株価は100分の1になります。
 しかし、分割を決定しても実際に新株が発行されるまでには株券の印刷などで50日程度かかります。この間は発行済み株式総数に対して流通する株数が極端に少ない品薄状態となるため、株価が大幅に値上がりする傾向があります。
 ライブドアは03年8月から大幅な株式分割を繰り返し、1株が3万株まで増加、株価も高騰し発行済み株数に株価を掛け合わせた時価総額は大幅に膨れ上がりました。
 また、同じくライブドアが多用してきた金融テクニックに株式交換があります。これは企業を買収する際に、相手側の企業に現金の代わりに自社の株式を交付するもので、資金がなくても企業の買収が可能になります。
 ライブドアは株式分割で自社の株価を高騰させ、これを背景に株式交換などで企業買収を繰り返し、40社以上の企業を傘下に収めるとともに、自社株の時価総額を急激に膨張させてきました。


Q 今回の事件では、投資事業組合の存在も注目されているが。

A 投資事業組合は個人や企業などの投資家が集まり資産投資を行うための組織で、民法に規定されている「任意組合」の一種です。登記の必要がなく、情報の開示義務もないため、出資者や運用の実態は不透明です。
 今回の事件ではライブドアが実質的に支配している投資事業組合を通してマネー社を既に買収していたにもかかわらず、その事実を公表せずにバリュー社が新たに買収すると発表したことが法律に違反するとされています。これに対してライブドア側は、同社系の投資事業組合がマネー社に直接投資していたわけではなく、マネー社を連結決算の対象に含めるのは妥当ではないと判断したと説明。投資家への情報開示はしなくてよいと主張しています。

Q 今回の事件は証券市場に大きな影響をもたらしましたが。

A 「ホリエモンの錬金術」などといわれてきたライブドアの経営手法は、もともと法律の抜け穴を巧みに突くという要素の大きいものです。その是非をめぐっては議論がありましたが、違法行為があったとすれば当然、許されることではありません。また、ライブドアに限らず、利益が上がりさえすればよいとマネーゲームを繰り広げる企業の姿勢、倫理の問題も問われるべきでしょう。
 また、今回の事件に関連して、株式の売り注文が殺到した18日に処理能力の限界に達し、全銘柄の取引停止に追い込まれた東証システムの信頼性にも改めて疑問が投げ掛けられています。今後、投資事業組合に何らかの情報開示を義務付けるなど、不正行為の防止に向けた新たなルールづくりとともに、東証のシステムの近代化や能力向上も急ぐ必要があります。
 景気の回復傾向とともに、着実に活性化してきた証券市場に冷や水を差すことがないよう、個人投資家も安心して参加し続けられる公正で信頼性の高い証券市場を構築していくことが大きな課題といえます。

公明新聞記事(H18. 1. 23)より転載