経済教室NO.26三位一体改革が決着

3兆円の税源移譲が実現

 地方向け補助金の削減、国から地方への税源移譲、地方交付税の見直しを同時に行なう三位一体の改革は、「基本方針2002」(2002年6月閣議決定)で打ち出された。それを受け、03年度予算で改革の芽だしが行われ、04、05年度予算で取り組まれてきたが、06年度予算でひとまず決着することになる。
 02年度予算で地方向け補助金の総額は、一般会計、特別会計合わせて20兆4193億円だった。これに対して03年度予算から06年度予算で取り組まれた補助金改革の総額は、現在までで5兆700億円程度。そのうち税源移譲に結びつく改革は3兆1170億円程度、事業廃止などスリム化の改革は1兆2200億円程度、地方の自由度を高めるとされる交付金化の改革は7300億円程度だった。スリム化と交付金化の改革は、公共事業関係や奨励的補助金に対する改革だ。
 税源移譲に結びつく改革が3兆1170億円程度となった結果、税源移譲額は3兆90億円程度と政府・与党が目標とした3兆円を突破した【図1参照】。
 税源移譲は、06年度税制改正において、所得税(国税)から個人住民税(地方税)へ恒久措置として行うことが決まった。3兆円という大規模な税源移譲の基幹税での実施が決まったことについて、全国知事会など地方6団体は声明で「これまでにない画期的な改革であり、今後の地方分権を進めるうえにおいて大きな前進」と高く評価した。

地方の自由度拡大は不十分
税源移譲に結びつく補助金の削減では、義務教育関係の額が大きく、共済長期負担金(年金)などで2344億円、退職手当、児童手当で2309億円、給与費の国の負担率引き下げで8467億円を積み上げた。次いで、国民健康保険の国負担の一部を都道府県負担へ切り替える措置6862億円も額が大きかった。
 さらに、児童手当、児童扶養手当、介護給付費に関する国の負担率引き下げも、合わせて4683億円に上った。このほか、公立保育所運営費1661億円、公営住宅家賃対策等補助1260億円も、税源移譲に向けて削減された【図2参照】。国の負担率引き下げの手法が多用されたことについては、「地方の自由度を高めることにならない」との批判が強い。
 補助金改革では、政府の要請で、地方6団体が3兆円の税源移譲に向けた改革案を取りまとめた。しかし、地方の改革案3兆2284億円のうち政府に取り入れられたのは1兆2393億円で38.4%。地方が制度廃止を提案したのが国の負担率引き下げで決着した義務教育費(給与費)分を除くと、地方案2兆3784億円のうち政府に取り入れられたのは3893億円で、わずか12.1%だった。
 その一方で、地方案が税源移譲対象から除外すべきとしていた生活保護費の削減が、今年も厚生労働省から提案された。これに対して地方は、「高齢化による将来の負担増を単に地方に転嫁するものだ」と、強く反発した。
 国と地方の協力関係が崩れかねない事態に公明党は、「地方団体の納得が得られないならやるべきでない」(冬柴幹事長)と主張、最終的に生活保護費の削減は見送られることになった。

施設整備費に゛風穴゙
三位一体改革の中身について地方案からの乖離が見られる中、公立学校施設整備、地域介護・福祉空間整備など施設整備に関する四つの補助金を削減し、その5割を税源移譲することになった。施設整備費については地方側が「地方の判断で計画的に整備することが効率的」と税源移譲を求めていた。
 しかし財務省が「(国の借金である)建設国債が財源である施設整備費は税源移譲できない」と反対していたが、公明党が「税源移譲の対象として議論すべき」と主張し、最終段階で移譲が決まった。一部の施設整備費の税源移譲が実現したことについては、「分権を進める上で大きな前進」(中田横浜市長)などと、評価する声が広がっている。21世紀臨調「知事・市町村長連合会議」座長の増田岩手県知事らは、「財務省の主張に風穴を開けた意義は大きく、補助金改革の本丸ともいうべき公共事業関係補助負担金の地方移譲への足がかりとなった」とする声明を発表している。
 地方の自由度拡大の視点から見れば不十分さが否めない三位一体改革の決着だが、国が地方に改革案の取りまとめを要請したこと、その過程で「国と地方の協議の場」の設置が実現したことは、地方分権の上では大いに意義ある足跡だった。この「協議の場」の継続を今月1日に地方側が求めたのに対して、安倍官房長官は「これからも続けていきたい」と応じた。地方側としては「協議の場」の実績を積み重ねて、その制度化をめざす考えだ。
 今後の改革について政府・与党合意は、「地方分権に向けた改革に終わりはない」「今後とも、真に地方の自立と責任を確立するための取り組みを行なっていく」と宣言した。06年度以降の改革について、公明党のマニフェストは「最終的な国と地方の税源比率を1対1とすることをめざす」と公約しているが、その道のりは険しい。地方分権の取り組みは、今、一つの周回を終え、次の展開に入れるかどうかが課題となる地点に差し掛かっている。

公明新聞記事(H17. 12. 14)より転載