経済教室NO.24抜本改革が求められる特別会計

財政ゆがめる省庁の聖域

 国の予算といえば、今年度約82兆円が計上された一般会計予算を思い浮かべるのが普通だ。しかし国の予算には、一般会計予算のほかに、約412兆円(重複計上分を除くと約205兆円)に上る特別会計予算がある。一般会計歳出も、その6割近くは、特別会計(特会)経由で支出されているのが現実の姿だ。
 特会の数は現在31。国が事業を営んだり、資金を運用するなどで、区分経理を行う必要がある場合に設置されている。
 特会というと何か縁遠い感じがするが、厚生年金や政府管掌健康保険のための厚生保険特会をはじめ、国民生活に密着したものが多い。児童手当も、厚生保険特会で一般会計から国庫負担金と事業主の拠出金などが合算され、養育者に給付されている。
 特会には一般会計からの繰り入れのほか、目的税(使途が特定された税)や保険料などの独自財源がある。特会を一般会計と別に設置することで、受益と負担の関係や事業ごとの収支が明確になるメリットがあった。
 しかしその一方で、各特会が所管省庁の縄張りのようになり、一般会計と比べて、財務省の査定が十分に行われない状況が生まれた。
 また、特会が多数設置されたことで、予算全体が複雑で分かりにくくなり、財政の一覧性が損なわれた。そのことは国民や国会が財政をコントロールする上で障害となる。実際、国会でも、特会はほとんど審議されてこなかった。
 こうして聖域と化した特会は、所管省庁の既得権益の温床となり、「固有の財源で不要不急の事業を行っている」「多額の剰余金を放置している」「歳出削減の努力を怠っている」といった批判を受けるようになった。
 2003年2月、塩川財務相(当時)が「母屋(一般会計)でおかゆをすすっているときに、離れ(特会)ですき焼きを食べている」と批判し、財務省が特会見直しの検討に着手した。
 同年11月には、財務相の諮問機関・財政制度等審議会(財政審)が7特会の廃止検討などを提言したが、具体化には至らなかった。
 衆院選後の経済財政諮問会議で民間議員は、「撤退、民間委託以外の特会は原則として廃止し一般会計に吸収する」などの原則を示し、財務相に国民の納得する改革案をまとめるよう求めた。

審議会が半減の方向示す

 今月21日、財制審は特会見直しについての報告を財務相に提出した。
 財制審報告は特会見直しの視点として、@特会の事業を国として行う必要があるかA特会として区分経理する必要はあるかB特会の現行の区分は妥当かC特定財源(使途が特定された財源)に弊害はないかD剰余金・積立金に明確な必要性があるかーの5点を提示。
 特会の予算内容の精査についても、純計約205兆円から国債償還・社会保障給付などを除いた約17兆円を対象に、事務事業の効率化を図るとともに、@人件費・事務費の精査A予算と執行実績の乖離の是正B特殊法人等への補助金等の縮減―を行って、一般会計からの繰り入れや借入金を圧縮するとの考え方を示した。
 財政審報告が、特会の廃止・統合に向けて「国として行う必要性」を検討すべき対象に挙げたのは、国有林野事業など11特会。そのうち自動車検査登録、森林保険などの特会については、民営化や独立行政法人化の検討を求めた。
 また、国として行う必要性があっても「特会として区分する必要性」を検討する対象として6特会を指摘。そのうち登記特会については、一般会計に統合して廃止することを検討すべきとした。
 さらに、特会は必要でも「現行の区分経理は妥当か」を検討すべきとしたのが16特会。厚生保険と国民年金、公共事業関係の5特会、エネルギー関係の2特会など多くについて、統合を検討するよう求めた。
 一方、「特定財源の弊害」に関しては、道路整備、空港整備、電源開発促進対策の3特会の特定財源について一般財源化を検討するよう提示。
 「剰余金・積立金の必要性」に関しては、外国為替資金など4特会について一般会計への繰り入れなどを検討するよう求めた。
 財制審報告は全体として、31ある特会をほぼ半減させる方向を打ち出したが、実施時期は明示せず、検討を促すにとどまっている。
 廃止後についても「国以外の主体」などあいまいな表現が多く、民営化を明確に打ち出した特会はない。17兆円を対象とする予算精査も、圧縮の数値目標の明示は見送っている。
 改革の具体化は政治に委ねられた形だ。

改革は政治に委ねられた

 自民、公明両党の政策責任者は10日、与党財政等改革協議会の下に「財政改革・事業仕分けに関するプロジェクトチーム」を設置し、特別会計見直しの検討を開始している。
 一方、経済財政諮問会議では22日、谷垣財務相が財制審報告について説明するとともに、与党の議論と密接に連携して年内に改革工程表を作成・決定する方針を示した。

 これに対して民間議員は、財制審報告について「さらなる切り込みが必要」と指摘。改革の手法などについて提案を行った。
 特に、特会の民営化と独立行政法人化の可能性を徹底して追及していくことを主張。すべての特会の事業を市場化テスト(官民競争入札)の対象とすることを求めた。
 また、一般会計からの繰り入れが多く区分経理の意味が薄れている国有林野事業、道路整備、空港整備について、一般会計への吸収の検討を求めた。17兆円を対象とする予算圧縮についても、年次報告書で数値目標を設定して取り組むべきだと主張した。
 諮問会議は、こうした民間議員の指摘を踏まえて、財務相が関係大臣と協議して早い段階で改革工程表を作成することで合意している。

公明新聞記事(H17. 11. 28)より転載