経済教室NO.20「指定管理者制度」の経済効果
 
Q まず、「指定管理者制度」とは。

A 図書館や公民館、保育所、公園など、自治体が住民にさまざまなサービスを提供する身近な施設を「公の施設」といいます【表1参照】。これらの管理運営は、以前は自治体が直営するか、外郭団体などの公的団体しか行うことができませんでした。
 しかし、2003年施行の改正地方自治法で指定管理者制度が導入され、純粋な民間企業やNPO(民間非営利団体)にも管理・運営を委託することができるようになりました。

Q 最近、全国の自治体で指定管理者制度の選定が決まったと伝える報道が相次いでいるが…。

A 各自治体は、現行の管理委託を行っている施設については、直営にするか、指定管理者制度のもとで新たな管理者を選ぶのかを、来年9月までに決めなければなりません。今、その手続きが大詰めを迎えているのです。

Q 指定管理者制度を導入した狙いは。

A 多様化する住民のニーズに適切にこたえるため、民間のノウハウや能力を活用し、質の高いサービスを提供するのが目的です。また、コストの削減を図るという狙いもあります。これまで行政に欠けていた税金の払い甲斐のあるサービス≠フ実現を目指しているということです。

Q それで、効果は挙がっているのか。

A 内閣府が今年7月に発表した論文(「指定管理者制度における受託団体のサービスの質と経営効率性」)は、アンケート調査をもとに、制度が効果を挙げていることを示しました。
 それによれば、@指定管理者制度の導入後には、それ以前と比べてサービスの質が高まったA株式会社などの民間営利事業者は、公的団体に比べてサービスの質が高いB事業主体の違いにかかわらず、指定管理者制度導入後、コストは低く抑えられている ― ことが分かりました。

Q 各自治体での具体的な取り組みはどうか。

A 全国で初めて公共図書館に指定管理者制度を採用した山梨県山中湖村の「山中湖情報創造館」では、NPO法人(特定非営利活動法人)が運営。午後9時までの開館や、24時間の貸し出し、返却を実施しています。カウンター業務から解放された職員は、利用者の相談に時間がとれ、質の高いサービスが評価されています。同村の試算によれば、年間経費は直営に比べて、700万円節約できたそうです。

Q 自治体が運営する保養施設などには経営状態の悪いものが多いが、民間委託で成果を挙げている施設はあるか。

A 毎年3億円もの赤字を出していた、山梨県のレジャー施設「丘の公園」(北杜市)がよく知られています。昨年4月、県の公社から運営を引き継いだ民間企業が、新たなサービスや企画を実施し、職員の意識改革にも取り組んだ結果、初年度から黒字を計上することができました。このような成功事例は、他でも生まれています。
 一方、北九州市では、小倉城などの運営を受託した地元の百貨店が、ノウハウを生かした物品販売による収入増を目指しています。同市は指定管理者制度の活用に積極的で、今年度は委託した施設で、年間3億円を超える節減効果を見込んでいるといいます。

Q 事業の対象はかなり広そうだね。

A これまで、公共サービスの民間解放の手法として活用されてきた民営化やPFIなどは、対象が限られていました【表2参照】。これに対して、指定管理者制度の対象となる公共施設は30万を超えるといわれ、すべてが民間に開放されれば、13兆円の市場規模との推計もあります。
 すぐに民間への移行が可能な6万施設に限っても、支払われる管理運営費は2兆円と試算され、各地域で公共サービスを担う新たなビジネスの成長が期待されます。

Q なぜ開放されない施設も多いのか。

A 例えば、民間開放効果の大きいのが保育所ですが、全国の過半数を占める1万2000の保育所は自治体直営のため、指定管理者制度の対象ではありません。
 しかし、直営保育所は時間延長や休日保育など利用者サービスが遅れているのが現状。民間企業に委託している東京都三鷹市などでは、コストが安くなる一方、保育時間も長く保護者からの評判は上々ですので、いずれ直営の見直しは避けられないでしょう。

Q 制度の趣旨を生かすうえで課題は?

A 自治体によっては、選定に当たり過去の実績を条件にするなど、民間企業が参入しにくい仕組みがあり、選定の公正さの確保が重要です。そのため、横浜市が行っているような、選定過程や結果の情報公開が不可欠でしょう。
 一方、サービスの質がコスト削減の犠牲にならないよう、住民の監視ももちろん大切です。

公明新聞記事(H17. 10. 31)より転載