経済教室NO.19基準地価下げ止まり強まる
 
Q 地価が長期低迷から脱しつつあるというが、具体的にはどういうことか。

A 地価動向を見る指標の一つとして基準地価があります。基準地価とは、国土利用計画法に基づき、都道府県が不動産鑑定士の評価などを参考に毎年7月1日時点で算定する基準値の価格で、今年の基準地点数は2万6521地点です。
 国土交通省土地鑑定委員会が毎年1月1日時点で調べる公示地価と並び、土地取引の際の指標となります。公示地価が都市計画区域内を対象にしているのに対し、基準地価は同区域外の林地なども含みます。
 今年の基準地価によると、住宅地、商業地とも全国平均で14年連続のマイナスでしたが、下落幅は住宅地3.8%(昨年4.6%)、商業地5.0%(同6.5%)と2年連続で縮小しました。特に、東京23区の住宅地が0.5%、商業地が0.6%の上昇となり、ともに15年ぶりに反転したのは注目されます。また、都心部に集中していた上昇地点が近郊にも広がっています。
 さらに、東京や大阪、名古屋の3大都市圏でも地価が上昇した地点が増え、地方圏でも下げ止まり傾向が見え始めています。国交省は「地価動向の変化がより鮮明になった」(土地・水資源局)と分析しています。

Q その背景は何か。


A 都市部の地価が上昇している要因としては、規制緩和による都市再生の効果が大きく後押ししていると指摘されています。
 政府は2002年6月、公明党などの主張を踏まえて、「都市再生特別措置法」を施行しました。指定した地域では、容積率などの建築規制にとらわれずに開発できるようにし、金融や税制面からの支援も行うようにしました。改正建築基準法も03年から施行され、商業地の容積率の上限は1000%から1300%に引き上げられており、土地の流動化や民間投資を促しています。東京では、海外ブランド店が進出した銀座や再開発が進む丸の内などで上昇率が拡大傾向にあります。大規模な再開発が進むJR名古屋駅周辺では、中村区名駅3丁目が商業地で全国トップの30.6%と、バブル期並みの上昇を記録しています。
 さらに、東京圏ではビルなどの不動産を証券化し、多数の投資家から出資を募る不動産投資信託(REIT)の活況も影響し、地価上昇を加速させています。
 不動産を中心に拡大を続ける不動産投資ファンドは、超低金利下における投資家の需要も手伝って参入企業が増加しています。ただ、ファンド間で優良地の争奪戦が繰り広げられており、「バブルに近い状態」(業界関係者)と危惧する声も出ています。


Q 都市部の地価上昇が周辺に広がっている地域の特色は。

A 中心部の再開発とともに、鉄道新線など交通基盤の整備によって利便性が向上している地域に見られます。今年8月に開通した、東京・秋葉原と茨城県つくば市を結ぶ「つくばエクスプレス(TX)」沿線地域では、守谷駅、つくば駅周辺などの複数の地点が上昇に転じました。新幹線が開通した鹿児島市の商業地にも上昇地点が現れています。

Q 地価の下げ止まり基調は経済・金融政策にも影響しそうか。

A 株価の回復と合わせて、バブル崩壊後に日本経済を苦しめてきた資産デフレの解消に向けた期待も広がりつつあります。日本銀行は01年3月から、景気回復に向けて金融市場に供給する資金の量を増やす量的緩和政策を行っています。今後は、物価と資産価格の推移を見極めつつ、金融政策の目標を本来の金利に戻すための「出口」を探っていくことになりそうです。
 ただ、実際に量的緩和の解除に踏み切る時期について、日銀の福井俊彦総裁は「本当に経済がデフレに逆戻りしないか、より踏み込んだ判断が必要」としており、景気動向など経済全般を踏まえた総合判断が必要との認識です。


Q 一方で、地価の格差も広がっているようだが。


A 利便性・収益性に乏しく投資を呼び込む環境が整備されていない地方では下落が止まらず、引き続き地価の二極化の傾向も見られます。シャッターが閉まったままの商店街や空き地・空き家が増えている住宅地では、依然として下落率が2ケタ台の地点があります。
 今後は、地価上昇がさらに大きな地価上昇をもたらしたバブルの再燃を防ぎつつ、地価の格差をどう是正して安定化させるかがカギになります。
 公明党は、地域主体の都市再生を促進する観点から、来年の通常国会で「まちづくり三法」(大規模小売店舗立地法、改正都市計画法、中心市街地活性化法)を見直すよう提言しています。その中で、住まいから歩ける範囲に公共施設や商店街、病院など日常生活に必要な機能が集まる「コンパクトシティ」の形成を重点に据えています。
 国交省も「分散した都市機能のコンパクト化、低・未利用地の有効活用に向けた新たな仕組みが必要」と指摘しており、高齢化や人口減少時代に対応した土地政策を進めていくことが求められます。

公明新聞記事(H17. 10. 24)より転載