経済教室NO.18団塊世代 大量退職のインパクト

Q 最近「2007年問題」という言葉をよく耳にするが。

A 第2次世界大戦後のベビーブーム世代、いわゆる団塊の世代が60歳の定年に達し始めるのが07年で、数年間、大量の退職が続くことになります。
 この世代は、人口全体に占める割合が大きいだけでなく、これまでも消費・貯蓄活動や豊富な労働力供給などを通じて、わが国の経済、社会を形づくってきました。大量退職によって、労働市場はじめ企業経営、マクロ経済、金融・財政などさまざまな方面に大きな影響が出ると予想されています。
 これが「2007年問題」と呼ばれており、政府は今年の経済財政白書と労働経済白書で、その影響を分析しています。

Q 団塊の世代は、どれほどの規模か。

A まず、団塊の世代とは、1947年から49年までの3年間に生まれた世代を指します。堺屋太一氏の著書「団塊の世代」で命名されたことはあまりにも有名です。
 総務省統計によれば、約683万人いるとされ、他の世代に比べると2〜5割も多くなっています。これから定年退職を迎えるのは、そのうち4割を占める約284万人といわれています。

Q 大量退職の影響で、プラス面としてどのようなことが考えられるか。

A 家計と企業に分け、それぞれの影響を考えてみましょう。
 まず家計ですが、プラス面としては、すでに相当額を保有している金融資産が、退職一時金によってさらに大きく膨らむことです。これによって、株式などリスクのある金融商品への投資が増える一方、健康や介護といったシルバー向け市場が拡大するものと予測されています。旅行や趣味、老後の生活を見据えた住宅リフォームなどにも旺盛な消費意欲が見られます。
 また、団塊の世代の子どもの世代(団塊ジュニア世代)が今後、住宅を購入する年代に入ることも考慮すれば、これらは、いく分、内需拡大の方向に作用するでしょう。

Q 家計のマイナス面は?


A 年金財政の負担が増えるほか、医療費や介護費用の増加は避けられないところです。現役世代の負担増は必至ですので、経済の活力を損なうことになります。
 また、団塊世代が貯蓄を取り崩して生活するようになれば、近年、下がり続けているわが国の貯蓄率は一層、低下していきます。今後、マイナスに転じるという予測もあり、企業だけでなく国債の資金調達も、国内だけでまかなうのは難しくなる可能性があります。国債の長期金利上昇を引き起こせば、財政運営は非常に厳しくなります。 ただ、これらはすぐに表れる問題ではないので、今後の政策対応次第といえるでしょう。

Q 企業にはどのような影響が出るのか。

A まず、プラス面ですが、給与の高い層の大量退職によって人件費が軽減されることです。労働経済白書では、10年間で88兆円の剰余が生まれると試算しています。04年には約216兆円だった資金総額が、16年には約201兆円まで減少し、04年を基準に計算すれば、累計で88兆円にも及ぶという内容です【グラフ】。
 これによって、これまで抑制気味だった若者の雇用が改善されたり、ポスト不足で停滞した後続世代の昇進が容易になることが期待されます。一部企業ではすでに、大量退職を見越して正社員の雇用を増やす動きがあり、勤労統計の数字にも表れています。

Q マイナス面はどうか。

A 退職一時金や企業年金の支払い負担がかさみ、経営を圧迫することが考えられます。将来の退職給付支払いに見合った積立金をしていない企業は多く、少なからぬ影響がありそうです。
 製造業を中心に、熟練した技能・知識を持つ社員が減り、技術力低下の懸念も指摘されています。これは日本の国際競争力にかかわる問題ですので、少なからぬ企業が危機感を募らせています。
 労働力人口の減少による経済全体への影響も大きな問題です。財務総合政策研究所の「団塊世代の退職と日本経済に関する研究会」報告書は、団塊世代の引退効果として、10年度には実質国内総生産(GDP)を約16兆円引き下げると試算しています。

Q マイナスの影響に対応するためには、さまざまな政策が必要と考えられるが。

A 07年は日本の人口が戦後、初めて減少に転じる年でもあり、団塊世代の大量退職は、少子高齢化や人口減少がもたらす問題をむしろ、加速させる働きをします。従って対策には、日本の経済、社会の活力をどのように維持するのかという視点が重要です。
 イノベーション(技術革新)を通じて生産性の向上を図ることや、意欲と能力のある高齢者の継続雇用を通じて技術継承を図る一方、財政についても健全化のピッチを上げることが求められるでしょう。

公明新聞記事(H17. 8. 1)より転載