経済教室NO.17WTO の新ラウンド

Q WTOとは、どのようなものか。

A 世界貿易機関のことで、1995年1月に関税・貿易一般協定(GATT=ガット)を発展させる形で発足しました。本部はスイスのジュネーブにあり、今年3月末現在で148の国と地域が加盟しています。
 各国・地域が自由にモノ、サービスなどの貿易ができるようにするためのルールを決める国際機関としての機能を果たしています。分野ごとに交渉や協議を実施する場が設けられており、その意思決定は加盟国への拘束力を持ちます。
 ガットの時代は、先進国を中心にモノの貿易が対象で、関税の削減などに関するルールを決めてきました。WTOでは、サービスや知的財産権などに対象を拡大し、途上国を含めて世界貿易を活発化させる環境を整備しようとしています。

Q ニュースで「新ラウンド」と報道されているが、今は何が話し合われているのか。

A 今回の貿易交渉は、2001年11月にカタール・ドーハで行われた第4回閣僚会議で開始が決まったため、「ドーハ・開発ラウンド」とも呼ばれています。
 その呼称からも分かるように、農産品や非農産品(鉱工業品や林水産品)の関税率引き下げとともに、途上国の開発問題が大きなウエートを占めており、途上国も納得する形での合意を目指す方針です。 
 さらに、途上国からの「ヒトの移動」を焦点としたサービスや知的財産権の保護ルールづくり、04年7月の枠組み合意で交渉化が決まった、輸出入手続き簡素化に関する原則の確立に向けた貿易の円滑化についても交渉が進められています。

Q 交渉のポイントと流れは。

A 今年12月に香港で行われる第6回閣僚会議で、農産品や非農産品について、関税率の引き下げ幅や方法などに関する取り決めを基本合意できるよう交渉が行われています。
 中国・大連で今月12、13日に開かれた非公式閣僚会議では、交渉を加速させることが確認されました。非農産品では一定の進展が見られ、農産品でも妥協点を模索する動きが進み、月末までに合意案の骨格となる第1次原案の作成を目指して、事務レベルでの協議が大詰めを迎えています。
 非農産品については、高関税率品ほど大幅に関税率を引き下げる「スイス方式」を先進国が主張していますが、途上国へ配慮することを前提に広範な支持が集まり、議長総括に明記されました。
 焦点となっている農産品の関税率引き下げについては、米国など輸出国が求めた高関税品ほど大幅な関税削減となる「スイス方式」と、日本など輸入国が主張した関税率の引き下げ幅を品目ごとに柔軟に決められる「ウルグアイ・ラウンド方式」との中間案を探る動きが出てきました。
 ブラジル、インドなど途上国グループ(G20)が新たに提案したもので、関税率で区分された階層内の品目を定率で削減する「リニア・カット方式」と呼ばれています。議長総括では、同方式を出発点に位置付け、今後も中間案を模索することが確認されました。
 ただ、日本などが反対する先進国の農産物輸入関税率を最高100%までに制限する「上限関税」の導入については表記を見送りました。日本はコメなど高関税の「重要品目」について柔軟な配慮を求めています。

Q 交渉が妥結した場合のメリット(利点)はどうか。


A 関税率が下がれば、加盟国・地域同士の輸出入が拡大し、世界経済の活性化につながります。世界有数の貿易立国である日本にとっては、自動車などの鉱工業品の輸出拡大が見込まれる一方、農産品などの輸入品が安くなることが期待できます。消費者から見れば、商品の選択の幅が広がります。
 また、WTOには紛争解決の機能があります。これは、特定の国に対する外国からの一方的な措置を予防するだけでなく、公正でルールに則った判断が行われることで自由貿易に対する信頼性が増し、世界経済の発展を促します。

Q 自由貿易といえば、FTAを結ぶ動きが進んでいるようだが。

A WTOの意思決定には全加盟国がかかわるため、交渉が複雑化し、合意するまでに時間がかかるという問題点があります。これを補う一つの方法として、近年、FTAという特定の国・地域同士の締結が活発になっています。関係の密接な国や地域による交渉では利害の一致が得られやすく、短期間で交渉が進展する利点があるからです。
 ただ、国内の補助金の問題など、各国が同様の制度を持っている場合には、多国間協議であるWTOでの交渉によって改善するのが根本的な方法で、FTAのような2国間協議で解決することは困難です。
 FTAについて日本政府は、WTOによる多国間交渉を補完・先取りする役割と位置付けており、双方の特長を生かした形で推進し、自由貿易体制の基盤を強化していく方針です。

公明新聞記事(H17. 7. 25)より転載